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アルティロイド―究極の生命体―  作者: ユウ
城国~深緑の王と光闇の騎士~
34/97

33,火は業火となりて

今回の話は、超低クオリティ。

「――ぐっ、あっ……!?」

 風が通り過ぎたと同時に、胸元から真っ赤な鮮血を滴らせる。何が起きたのかが、わからないわけではないのだ。これはジュークの斬撃により生まれた傷なのだ。だが――見えない、反応できないのだ。

「どうだい? 変なトリックがあるわけでもなく、不意打ちをされたわけでもない。わかっているのに攻略できない気分だろう」

 あの瞬間、ジュークは風になった。残像を残せる速度を越え、全てが残らない速度である。

「何故だ……」

「何故、とは?」

「俺は今の瞬間、反応どころか姿すら見えなかった。お前がその気になれば、俺の首を飛ばすなり、心臓を突き殺すなりできたはずだ」

「……そんな事、そんな事にすら気づかないとは、僕はティーダを買いかぶりすぎていたらしいね。何が最強のアルティロイドだ、笑わせるっ。……もしも、もしもお前が、真に強ければ……デュアリスのような悲劇すら起きなかった事を、思いしれ!」

 冷静なジュークにしてはめずらしく、明らかな怒気と殺気を混じらせながらの攻撃である。風になり、既に姿そのものが見えないジュークの攻撃を、ティーダはただ当てずっぽうに剣で防御、あるいは回避行動をとるしかない。

(姿は確かに見えない程に速い。だがそんな怒気と殺気を表しては、攻撃の瞬間を先読みする事はできる)

 ティーダは、ジュークのいる方向を向き、剣による防御を試みる。偶然か必然か、ジュークの斬撃はヴェルデフレインに当たり、この攻撃を防ぐ事に成功する。

「……くぅっ!」

「本当にその程度なのか、火の騎士ティーダ! それでは王を倒すどころか……大切な人すら守れないじゃないか!」

 再び攻撃を開始するジューク。風そのものになる攻撃「鎌鼬」による、見えない剣線。その斬撃は、攻撃を仕掛ける度に、ティーダの体に無数の傷をつけていった。

 ――そして、いよいよ立っているだけの体力すら奪われてしまう。呼吸を荒げ、剣を支えにする事で、かろうじて姿勢を維持している。対するジュークは、先ほどの怒気と殺気が嘘のような冷徹な表情で見つめている。

「仮に僕を倒したとしても、そんな状態では後ろに控える王を殺す事もできないかもしれないね。ティーダは知らないだろうけど……後ろには新しいアルティロイドの存在もあるというのに……」

「新しい……アルティロイドだと!?」

「そうアルティロイドナンバーズの五号機と六号機。光闇の騎士リオと、闇光の騎士クリッパーだ。……まぁ、その程度の腕で終わるならば、この二人にたどり着く前に、僕がティーダを殺す」

 ジュークという男は、誰にでも優しかったのだ。義兄弟とはいえ、ティーダとラティオには実の弟のように、デュアリスには実の妹のように。だが今はそんな兄弟に「殺す」と投げかけるジュークがいる。仲間を守る為に振るってきた深緑の剣が、ティーダの首を飛ばす為に向けられる。

「最強、とはいえ……所詮現状に満足している騎士には、どんな事をしてでも守りたいという感情が芽生える事はない。――そんな存在がいるならば、どんな事をしてでも守る為に更なる力を求める……この僕のようにな!」

 ジュークは正に首を刈る勢いで向かってくる。その速さは、やはり目にも止まらない速さである。

(……ジュークの速さが、見える?)

 ティーダは咄嗟に剣を構え、首刈りの剣線を止めてみせる。超金属音と共に、一瞬の火花が飛び散る。

(――むっ、止められたか!?)

 近寄ってきたジュークを、偶然とはいえ止める事に成功した。この機を逃さずに、ティーダは一気に接近戦をしかける。激しく交差する深紅と深緑の剣。

「このまま押し切るぞ、ジューク!」

「やらせはしないよ、ティーダ!」

 速度は圧倒的にジュークが勝るが、力においてはティーダの独占上である。

 斬撃を力で押し付けるように与える事で、ジュークの得意な距離にしないよう立ち回る。

「やはりか。お前の速さはさっきよりも明らかに落ちている、現にあれほどの速度が出せるなら、こんな力押しなんて、軽く回避できるはずだ!」

(気づいたか……。確かにこの能力アップは一定時間しか効力を及ぼさず、その後に再び魔力チャージによる時間が必要になる)

 風の騎士と火の騎士では、単純な戦闘力で勝るティーダに、完全に戦いの流れは傾く。

「戦闘能力のコントロール……凄い技術だが、今はそんな事をしてる暇は無い。このまま早々に倒させてもらうぞ!」

「くっ……! っこの、馬鹿野郎!」

 滅多に口にしないジュークの言葉。そしてそれと共に拳が飛び、ティーダの右頬に直撃する。殴られたティーダは、たたらを踏んで後退する。

「ジューク……!?」

「今のお前では、勝てないんだ。時代という大きな敵の前には……! お前は地上で出会った大切な人達を守る為にここにいるはずだ。絶対に負けられない戦いなんだ!」

「俺は負けない! 負けるつもりもない!」

「それで負けたら……お前はどうするつもりなんだ! 負けて死んでしまったお前には、後の世界の事などどうでも良い事なのだろうな!」

「……ジューク?」

 息を荒げてまで、大声で叫ぶ。ただの叫びではなく、どこかジュークの感情が籠っていた。そんなジュークの姿をティーダは知っていた。

(いつの頃だったか……まだ子供の頃か、ジュークは前にもこんな風に怒った)

 それは遠い昔の記憶だった。ヒューマンからアルティロイドへと改造され、己の力の開放すら間もない頃の事。

『――ティーダ、ちゃんと聖獣の魔力コントロールをしないといけないぞ』

『大丈夫さ、兄さん。俺達をこんな体にした科学者は言ってた。俺はアルティロイド計画の中でも最強の戦闘力を誇っているんだって! その戦闘力と、このヴェルデフレインの攻撃力があれば、俺を倒せる奴なんていないさ!』

『馬鹿、それで負けたらどうするつもりなんだ?』

『俺は負けないって、負けるはずがないだろ!?』

『自分自身の成長を考えぬ奴に、勝利はない! 現に今の僕がティーダを殺そうと思えば、いつでもその首を飛ばす事ができるのを忘れるなっ!』

『う……うぅ、何だよ、そんな事……言わなくたって……』

『それが僕達が必要とされる戦争という名の戦場だ。そこでは弱い者は散る運命だ。ではどうすれば戦いに勝てると思う?』

『……どうすれば、良いのさ?』

『今言った通り。常に強さを追い求めろ、自分の現状に甘んじるな』

『強さを、追う……』

『僕は常に追い求めている……みんなを、守りたいから――』

 今も昔も変わらず、シュークはティーダに教えていた。それをティーダは覚えていた、いや思い出したのだ。

「――強さを追い求める」

 それはティーダにとって、考えた事も無かったのだ。物心ついた時より、既に最強だったティーダは、自分よりも強い者に打ち勝とうという、心持ちがなかったのだ。それがジュークが幼き日より注意していた、ティーダの弱点だったのだ。

「さぁ……ティーダ。もう茶番はおしまいにしよう。魔力チャージも完了した、再び疾風の騎士となりて、お前の首をもらい受ける」

 ジュークの纏う、風のオーラが明らかに変わる。より強く鋭さを増したのだ。

(どうする、次のジュークの攻撃は間違いなく避けられない。――今よりも強くなるんだ。だがどうする、どうすれば強くなれる?)

「行くぞ! ……防いでみせろよ、それができなければ時代という波に殺されるだけだ」

 聞き取れないぐらいの小さな声で、ジュークは言った。ティーダの表情を見る限り、何かに感づいたのかあと一歩のところまで来ているのが見て取れる。

 だがジュークは風となる攻撃――鎌鼬になり、ティーダに襲いかかる。体が風となり姿を消す。

「くっ……!」

「臆するかっ、ならばそのまま死ぬが良い! 大切な人すら、守る事すらできずに!」

 ティーダは初めて敵を前に、恐怖で後ずさった。最強という実力を備え、今までは相手を畏怖させてきた騎士が、正に初めて他の畏怖によって後ずさったのだ。

(――大切な人。――強さを求める。――大切な人を、守れる強さを求める?)

(――ティーダ)

 突然、声がティーダの心の中に響いた。それはセレナと戦っていた際の声の感覚とは、少し違う感覚のものである。

(ティーダ。ちゃんと生きて帰ってきてよね? ちゃんと……生きて帰ってきたら、私……まだわからないんだけど、貴方に伝えたい事があるの)

(伝えたい事? 何だ、いますぐに言えば良いだろう?)

(い、今は無理っ! とてもじゃないけど、今は無理! ……だからちゃんと帰ってきてね?)

 これはティーダの思い出の記憶。決戦前にうっすらと、ティオから伝えられた事が出てきた。最も、口では相手こそしていたが、ティーダの心はそこに無かった。

(死を間際にして……変なものを見たか。俺は……生きて帰れない!)

(――愚かよね、火の騎士)

(……誰だ!?)

 女の声がする。その声はティオともデュアリスとも、セレナともつかない声だ。しかし全く知らない声ではなく、うっすらと声を知っている。

(名乗る必要もない事。そのまま死す貴方に、名乗っても仕方がない事)

(……そうか。お前は死神か? 俺を連れにきたのか)

(――命を開放しなさい。貴方の聖獣と、風の騎士の妖精の光を見なさい)

 促されるまま、自分とジュークの光を見る。すると自分の光は小さく光っているのに対し、ジュークの光は自ら放出するかの如く、大きく力強く輝いている。

(これは……?)

(それは命の輝き。最も定義は曖昧であり世界によりけり、霊力や魔力などと表現されるものもあります。火の騎士よ、貴方の聖獣の輝きは、まだ半分程度のものしか開放していないのです)

(命の輝き? 開放?)

(そう――命を開放しなさい。それが今の風の騎士に打ち勝つ方法です)

 その言葉を残し、声の主は消えていた。その残り香は、やはり全く知らない存在ではなかった。いや最も身近に感じる事さえできたのだ。

「俺に宿る……火の聖獣エンドラ。……お前に、お前にまだ力が出せるというのなら……その力を俺に貸してくれっ!」

 エンドラの命は、ティーダの声に呼応し更に光輝く。その光は今目の前に接近しつつある、ジュークの光以上の輝きがある。ティーダの体は業火のオーラに包まれていく。

「――!? ティーダの纏う火が、変わっていく……」

「ジューク! ……ありがとう」

「なっ……!?」

 ジュークはティーダに触れる事なく、後方へ吹き飛ばされる。ティーダの纏う業火のオーラが、他者の接近を許す事なく拒絶したのだ。

「業火の騎士……」

 その炎を纏いし騎士を見て、ジュークは思わず呟いていた。

「――まだ、馬鹿な俺にはちゃんとした答えのない覚醒だ。あまりに突然すぎる力の開放に……自分自身がわかっていないんだ」

「そうか……だが、そこまでくれば自分でゆっくりと見つけられるさ。これで立前はついた、更に奥に進むが良い、ティーダ。この先には闇光の騎士クリッパーと王が待っている。無事に死なないで終わる事さえできれば、次は真っ当な戦いをお前としてみたいな」

 魔力開放一発で風の騎士を倒す事に成功する。明らかに戦意喪失したジュークを見て、ティーダはヴェルデフレインを鞘に収めた。

「お前がいなければ……俺は負けていたのかな?」

「さぁ? 負けるとは言ってみせたけど……そんなものはやってみなければわからない。お前の力を試してみるが良いさ。……だが、クリッパーには注意するんだ。あいつはどうも毛並みが違う」

 ティーダは小さく頷くと、ジュークを残し王の間へと向かっていく。そんな姿を見送りながら、ジュークは小さく呟く。

「やれやれ……手間のかかる弟だ。――そして、ここからが計画開始だ」

 火の騎士ティーダ。王とそれを守護する闇光の騎士クリッパー。そして何かを企む風の騎士ジューク。それぞれの思惑が交差し、一つの渦を作ろうとしていた。

名前 ティーダ

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 16

階級 業火の騎士

戦闘 3300

装備

E深紅の剣ヴェルデフレイン

Eティーダ専用戦闘防護服

E火の聖獣エンドラ



名前 ジューク

種族 アルティロイド

性別 男

年齢 19

階級 疾風の騎士

戦闘 2900

装備

E深緑の剣フルーティア

E風の戦闘法衣(緑)

E風の妖精フーガ


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