憎悪と悲観
目の前の存在する奴を”容赦なく倒すべき敵”だと定めた僕は、一瞬で決着を付けるべく高速で敵に接近する。
ソレに対して奴は未だに僕が「イルミナーテンとは相成れない」と宣言された事に嘆いている様子を見せているが、こちらからすれば奴は隙だらけの状態を晒しているのと同じなので、僕はこの状況を逃すほど馬鹿ではない。
隙を未だに晒す奴との距離を瞬く間に詰めた僕は、チェーンアックスを奴全力で目掛けて投擲し、僕が全力で投げたチェーンアックスは敵に命中すると、奴は真っ二つとなった……後、スゥーと消え去る。
「……やはりそう簡単には仕留められないか」
相手が僕と同じ神遺物を扱える者である以上、この攻撃は何らかの形で「防がれる」か「反撃される」と思ってはいたからあえてチェーンアックスを投擲したが、まさか僕が気付かない内に身代わりを配置し、回避されるのは予想外だった。
もっとも奴が分身して使った媒体を見るに、奴の神遺物の属性は十中八九”あの属性”だろう。
全く分からない相手の手の内が、多少なりにとも見えて来たので、僕は自分の予想が当たっている事を確認するためにヤツの姿を探せば、奴は平然としつつダムの上に浮かぶ姿が目に入った。
「……髑髏の闇騎士様、私達と「共に歩ない」と言った事を、今一度考え直すつもりはありませんか?」
なんと奴は再度僕をイルミナーテンに入る様に訪ねてきた。
まさかあんなにハッキリ断ったのに、再び勧誘してくるとなると、奴等はただ単に神遺物が欲しいだけではないのだろうか?
だからと言って僕の答えは変わる事はないのだが。
「何度も言わせるなよ。
僕は絶対に、お前達と共に歩むつもりはない!」
僕は己の内に湧き上がる怒りと、憎しみを言葉に込めてハッキリそう答えた。
「そうですか…ならば仕方ありませんね。
イルミナーテンと共に歩まぬイネーブラーには………死を!」
奴はそう告げた直後に、奴は両手を掲げれる。
するとヤツの周辺いに無数の水球が現れた!
「やはりお前が扱う神遺物は『水属性』だったか!」
「その通りです。
私の扱う神遺物『悲観の水』は、水の精霊神ウンディーヌの残滓が残る神遺物です。
そして貴男は、これから己の選択に後悔すると同時に、更なる絶望と悲しみに暮れる事になるでしょう」
「何もやっていないのに一方的に決めつけるのは、三流の思考だな!」
そう言い返してやった後、僕はその場で斧を振り、闇の魔力で作った黒い斬撃を、敵目掛けて投げ飛ばした。
「決めつけではありませんよ」
奴はそう言った後、ヤツは周囲に浮かべる水球を広げてシールドを展開し、いとも簡単に己に襲い掛かる黒い斬撃をかき消した。
「先程お伝えした事をもうお忘れでしょうか?
貴女と私では、神遺物に関する造詣に大きな差があり、その差が大きければ神遺物から引き出せる力の差は、大きく違うのです。
だから私は、今から貴男が『私に決して私に勝てる事がない!』という事を、自覚して頂きましょうか」
奴はそう宣言した直後、左右に広げていた手を僕に向かって振り下ろすと、無数の水球が僕に向かって飛んでくる!
正直水属性の魔法を使える人間が、このような水魔法で攻撃すること自体は至って普通だ。
だがヤツの放った水魔法は一味違った!
何故なら、水球がこちらに飛んでくるスピードが異常な速さだったからだ。
そのスピードは弾丸の如き速さだと言うのに、それでいて大きさは直径30センチを超える大きさの水球だ。
そんな物が当たれば、いくら神遺物を身に纏っていようが、当たれば只で済むわけがない。
だから僕は全力で横に飛び、奴の飛ばし水球を何とか回避するが、その直後僕の真横を逸れた水球は、ダムの壁面にぶつかると同時に”パーン”と激し音を立てて、炸裂する。
「まだまだですね!」
ヤツがそう言った直後に、先程弾けて出来た小さな無数の雫が、僕目掛けて先程の水球以上のスピードで飛んで来る!
この無数の球は弾丸に匹敵する威力を持っている可能性が高い!
しかし影で転移して躱そうにも、今の僕は攻撃を避けた際に、地面を思いっきり蹴った事で、まだ地に足が付いておらず、影に触れていないと使えない影から影に転移する魔法を使う事ができないので、シールドを展開して、無数の水の弾丸を防ごうとする。
”ドドドドドドドド”
「っく、うぅうぅぅ!」
しかし咄嗟に作った闇のシールドは、全ての攻撃範囲を防ぐ範囲を展開出来なかった為、僕は何発か水 の弾丸の直撃を受ける。
憎悪する闇を鎧として纏っているので、ダメージは鎧が軽減してくれたとはいえ、攻撃を受けた部分は傷が付いていた。
これまで一度も傷を付けられた事がない鎧に傷を付けた時点で、相手の攻撃の威力の高さを物語っていると同時に、まだ相手は全力を出していない。
そう感じてしまうぐのは、奴の動きにはまだまだ余裕があるからだ。
(…これはかなり厳しい状況だと認めるしかないか)
「これでお分かりいただきましたか?
私と貴男では、神遺物を扱える能力に決定的な差があるという事を。
そして今ならまだ間に合います。
命を粗末にせず、この世界を救う為にも、我らと共に歩む事をもう一度考えてください」
「…さっき言ったハズだ。
『そのつもりは一切ない!』と」
力の差を見せつけてきた奴から、再度イルミナーテンに加入するように催促されるが、例えどのような状況であっても僕の答えはこの命が潰える時まで変わらない。
イルミーナーテンと徹底抗戦する意思を示すように、僕は一気に駆け出して奴に急接近し、奴目掛けて斧を全力で振り下ろすが、僕の攻撃はヤツに届く前に、宙で”バシャ!”という音を立てて静止した。
「……水のシールドか」
「無駄です。
そんな攻撃が私に届くとでも?」
「…さっき言っただろ。
何事も一方的に決めつけるのは、三流の考えだって!」
そう、この流れは僕の狙い通りだった。
どうやら奴は僕をイルミナーテンに何としてでも加入させたいようなので、痛めつけるたり命を奪う前に”僕の心を折る為の行動を取る”予測はしていたが、こうも予想通りの行動を取ってくれたなら、きっと奴は僕の次の攻撃に驚くハズだ。
”シュ”
僕は斧の刃に仕込んでおいた魔法を発動させると、葉から黒い槍が奴目掛けて飛び出す!
「っ!」
そう、僕は最初から斧で敵を仕留めるつもりはなかった。
僕の本命は、最初から斧の下に生まれた影で形成した闇魔法の槍だったのだ。
奴は僕が仕込んでおいた黒い槍を見て、僅かとは言え驚きの様子見せた事で、僅かな隙を晒せば当然防御は遅れ、奴目掛けて伸びる黒い槍がヤツの顔面に突き刺ささった!
”バシャ!”
かに見えたが、奴は頭に槍が到達する寸での所で防御シールドを展開し、黒い槍は頭から逸れた事で、ヤツの頭の真横を通過すると、黒い槍はヤツの顔を覆い隠すローブを突き破る。
ローブを突き破った槍の衝撃は、奴の素顔を隠すローブを払い除け、奴の素顔顕にしたため、僕はヤツの隠された素顔を拝む事となる。
「っな!」
奴の素顔を拝んだ際に、僕は驚きを隠せなかった……そう、驚きのあまり声が思わず漏れ出てしまうほどに。
「なぜ…なぜ貴女が……ルーサ様?」
最後まで読んで頂きありがとうございました。




