世界が切り離した物
「どうです?
この世界の真実の一部を知った気分は?」
「正直に言えば今でも『戯言だ』っと否定してやりたい気持ち半分、戯言だと否定しきれない気持ち半分の、微妙な心境だな」
「私も始めてこの話を聞かされた時は、あなたと同じように半信半疑でした。
ですが、私の話は紛れもない事実だという事は、このイノセントワールドの歴史1000年の歴史の中で、大陸が時間をかけて削られている事実を顧みれば、否が応でも信じるしかありません」
その口調は穏やかだけど声に力があるので、コイツの言う事に偽り可能性は高いが、やはり僕はまだコイツの言う事全てを信じる気にはなれない。
だがコイツの言う通りこの世界は1000年と言う長い時の中で、徐々に削られ続けているのは事実だ。
そう考えたらコイツの言う事も蔑ろには出来ない部分が多すぎる以上、コイツからこの世界に関する話を聞いて、コイツの言う事が何処まで真実なのか見極めるためにも、話を進める。
「仮にこの世界がお前の言うように破滅に向かっているとしよう。
だとしたらお前達は本当にこの世界を救う方法を知っているのか?」
「ええ、それはもちろん」
「その方法は?」
「八体の精霊神の力を使い、次こそ破滅の力が及ぶことがない新たな世界を創造するのです」
「次こそ?」
「そうです。
この世界は、世界を構築する八つのマナの化身とも言える八体の精霊神の力を使って作り上げた世界。
いえ、我々が今住んでいる空間そのものが、精霊神の力を使って破滅から逃れるために作り上げたノアの箱舟とも言える世界なのです」
「この世界が精霊神の力で作られたにしても、肝心の精霊神は既にこの世界には存在しない。
それなのにどうやって精霊神の力を使うつもりだ?」
このイノセントワールドに住む者なら誰でも知っている事だが、このイノセントワールドに精霊神は存在しない。
この事は僕が神遺物と接触した際に、神遺物に宿っていたシェイドの意思も「この世界から去った」とという言葉を残していた事から間違いない事実だ。
神遺物は、精霊神が残した力の欠片であるため、精霊神の意思が神遺物に僅かに宿っている以上、その言葉に偽りはないだろう。
つまりこの世界で、精霊神の力を使うには神遺物が必要だが、あくまで神遺物を通して使える力は精霊神の力の残滓のような物で、精霊神本体の力を直接使えるている訳ではない。
「確かに精霊神はイノセントワールドには存在しません。
しかし元の世界、いえ、正確には「元の世界から切り離した世界」に精霊神はまだ存在しています。
つまり切り離した世界から精霊神を呼び出す。
もしくは、切り離した世界から精霊神の力を引き出せれば、精霊神の力を私達が再び使う事ができるようになるのですよ」
なるほど、どうして伝承やシェイドの意思が「この世界から去った」っという言葉を使うのか、ようやく理解した。
このイノセントワールドは正確に言いえば、破滅の危機に晒されていない部分だけを切り取り、残った部分を別の世界として区切ったようなものなんだ。
そう考えると、ある疑問が浮上する。
「仮に精霊神の力をイノセントワールドで使えるようになったとしても、そうした場合この世界から切り離している力を失った側の世界はどうなる?」
「そうなれば、切り離した世界は、再びこのイノセントワールドと『同じ世界』に戻り、この世界と切り離した世界は一つの世界に戻る事になるでしょうね」
「やはりそうか。
なら既に破滅の力に晒されている世界がこの世界に戻ってくれば、世界の破滅は今より更に加速的に侵攻するの事になるのでは?」
「確かにそうでしょうね」
「だったら結局お前の望む世界なんて、決して作る事など出来ないじゃないか」
「そこは安心してください。
先人達は世界を切り離した際に、そうならない為にも、精霊神達の力の一部を、この世界に”ある物”として残し、再びこの世界で精霊神の力を使う為の手段を残してくれています」
「”ある物”に力を残した……だと?」
「ええ、そして”ソレ”が何かは、貴男だってご存じのハズです。
何故なら貴男は、八つの精霊神の力の残滓の一つとも言える物。
そう、神遺物の一つである『憎悪する闇』に選ばれた者なのですから」
(…やはりか)
コイツは僕が神遺物を持っているだけの存在じゃなく「神遺物に選ばれた者」だという事を理解している。
そしてコイツが、僕この場にを呼び寄せる事が出来たという事は…
「僕が神遺物に選ばれた所有者と認識しているという事は、お前も僕と『同じ』なのか?」
「その通りです。
私も貴男と同じく神遺物に選ばれ、所有するに至った者なのです」
「だろうね。
神遺物は所有していれば使える物じゃない。選ばれないと使えない物だ。
そうじゃないとお前と面識もなければ、連絡手段も持たない僕だけを、この場にピンポイント呼び寄せるなんて不可能だからね」
まさに僕の予想通りの答えをコイツは言ってきたが、こうも僕の予想通りの事を言ってくれると言う事は、これから僕がコイツに質問する返答は、恐らく僕の予想通りの答えになるだろう。
「さて、お前達がこの世界を救う為に動ているとして、僕がソレに協力するか否かの判断を下す為に、どうしても聞いておきたい事がある。
お前達の組織の名は?」
「イルミナーテンです」
やはり予想通りの言葉が出て来た。
そしてその名を聞いた瞬間、僕の中の宿る憎悪が激しく燃え上がるのが否でも分かる。
最後まで読んで頂きありがとうございます。




