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大好きな人と、大好きな街を守る為に

 ウィルが突然私の元にやってきて、私に病院で婚約破棄の話を切り出した事を謝ってきたのだけど、その事に対して何も答える事が出来ない意気地なしの私は、未だに自室に籠ってだんまりを続けいるけど、それでもウィルは一生懸命ドア越しに語り掛けてくる。


「それとね、もう一つ伝えたい事があるんだ。

 どうして僕は、この前エレンに『今の僕じゃエレンを支えることが出来ないって』言ったのかというと、病院でエレンに逢った時、エレンが僕に対して、とても強い『罪の意識』を持ってしまっている気がしたんだ。

 だから、このまま僕とエレンが一緒になっても『お互いにとって良くない』って思ったから、思わず婚約破棄の話を一方的に切り出しちゃったんだけど、どうしてこのまま「今僕たちが一緒なると、お互いに良くないって思ったのか」

 その理由が、僕の中でもハッキリ分かんなくて、どうしてそう思ってしまったのか、何度も考えてみたんだけど、ある日、あの時の出来事が急に思い浮かんでね。

 ほら、エレンって僕と婚約する前からずっと言ってた事があるよね?」

(私は……ウィルに何をずっと言ってたんだっけ?)

 ウィルの言葉に対して、思い当る節が全くないので、再び私はだんまり状態のまま、ウィルが話の続きを始めるのを待つ。


 『私はパラディンになって、大好きなこの街を、私が守るんだ!』って」


 ウィルのその言葉を聞いて”ハッ”となった。

(私の……夢?)

 そうだ! 私は小さい時ウィルに会う度、馬鹿の一つ覚えのように「パラディンになってこの街を守る」って、確かにウィルに毎日のように言ってたかも!!

 私は騎士の家系に生まれた事を今でも誇り思っている。

 そして小さい頃は、どうせ騎士になるなら、騎士の最高峰である”パラディン”になる事を、ずっと夢見ていた。


「正直に言うとさ、僕は師匠に「お前は将来立派な騎士所か、最高のパラディンに成れる」って言われたって、『僕は何時か領主を継ぐんだから、別に騎士なんてなれなくてもいい』って、他人事のようにずっと思ってたんだ。

 だけどエレンが、騎士の話をする時って、毎回もの凄く目が輝いていて、毎度熱心に騎士の話しをするのを見てたら、なんだか言って僕も、「エレン達と一緒に騎士になってみたい」て、思うようになってきてね。

 それからなんだ、『僕も騎士になってみたい!』って思うようになったのって!

 それに、自分の意思で『何かをやりたい』って心の底から思ったのも、コレが初めてだったんだ!」


 ウィルと婚約する前から、当たり前のように二人で


『一緒に騎士になって、この街を守ろう』


 なんて口癖のように言っていたから、てっきりウィルが私と一緒に騎士を目指す事は、当たり前の事だと思っていたけど、まさかその切っ掛けが、私が一人で勝手に得意げに語っていた自分の夢だったなんて思ってもいなかったな……

(まさかそんな何気ない私の行動をそんな風に言ってくれるなんて、嬉しいような、ちょっと恥ずかしいような……)

 久しぶりにこそばゆい感情を感じたからかな? 本の少しだけど、さっきまで真っ暗だった私の心に小さな光が灯った気がする。


「あの時病院でエレンと顔合わせた時、エレンが僕を見て、僕に怯える様子を見せた瞬間、僕は『絶対このままエレンと一緒になっては行けない』って強く思ったよ。

 だって、このままじゃ僕の所為で『僕に新しい事を与えてくれたエレンの素晴らしい夢が、潰えるかもしれな』って

 そんな素晴らし夢を持ってるエレンが、今の状態で僕と一緒なっても、エレンの夢は絶対に叶う気がしないかったし、何より僕はエレンの夢の足かせ何かなりたくなんかなかったんだ!」

「……そんな事ない!」

「……エレン!?」

「そんな事ない! ウィルは私の足かせなんかになったりしない!!」

 私はウィルの言った事を否定する為に、ついさっきまであれだけ『顔を合わせるのが嫌』だと思っていた、ウィルの前に思わず飛び出し、私にウィルに面と向かって


「ウィルは……ウィルは私の足かせなんかじゃないよ!」


 思わず大声で叫んでしまっていた。


「……そう言ってくれてありがとう。

 そして色々ごめんね」

「ううん、いいの……それより私の方こそ……ごめんな…ざ……い

 私の……わだしぜいで……ウィルのひだりでど、おどうざまとおがあざまがぁ……」

「それは違うよ、エレン!

 この左腕の傷はエレンの所為じゃないし、僕にとっては恐怖に負けないでエレンを守れた証さ!

 それに父さんと母さんが死んだのも、エレンの所為じゃない!

 そう、悪いのは全部……全部アイツ等さ!」

 そう言って泣きじゃくる私を、抱きしめつつ宥めてくれる元婚約者様。

 そして私はやっとウィルに対して己の罪を告白出来たからか、しばらくそのままウィルの胸元で泣きじゃくり続けてしまった。


・・・

・・


 私はウィルの胸を借りて散々泣きじゃくり続け、ようやく落ち着きを取り戻した後、しばらくウィルと二人で色々と話し込んだ。

 そしてウィルの意向としては、今のままだとウィルは自分が私の夢の足かせになるし、ウィルはもう既にオーウェン家の新たな当主となった事で、急遽当主としての務めを果たす責任が生じたし、この街の文化に乗ってっとオーウェン家の当主は領主として「この街を復興させる為の活動に集中する必要があるから、その事に専念したい」と私に申し訳なさそうにしつつも、ハッキリと伝えてきたし

 「今の状態が続いたら、一体いつになったらエレンを僕のお嫁さんとして迎え入れれるか、とても分からないし、その間に僕なんかよりもっといい人を、エレンが逃してしまうかもしれないんだよ?

 だから改めて言うよ…『僕たちの婚約は、破棄した方が良い』って

 そしてエレンは立派な騎士になる夢を叶えてね」

 そう言われても、やっぱりウィルの事が大好きな私としては、ウィルの意向に対して素直に頷けない部分が強かったけど、「このまま塞ぎこんでも、ウィルが悩んで決めた事を私の我儘で止めても、私仕出かした事に対して、何の罪滅ぼしにもならない」と思ったから、私はまた泣きそうになりながらも、必死に涙をこらえてウィルの意見を尊重する事にした。


 それに私だって、この街の復興を目指すウィルを助けたい、という気持ちは誰にも負ける気がしなかったし、何より今のままじゃ、きっと私はまた”同じことを繰り返してしまう”と思ったからに他ならない。


(私はもう、二度と恐怖に負けないし、騎士の夢を絶たれたウィルの分まで、私が騎士となってこの街を守って見せるの!)

 という新たな目標を己に掲げ、その目標を叶える為にも、私はやっと立ち上がれた。

 そしてその目標を達成する為、そしてこの街の平和を未だに脅かしてる悪党達の静止力となる為にも、騎士の最高峰とされるパラディンを私は目指す事にした。

 だから私は、お父様とお母様に「王都にある騎士養成学校に通わせてください!」と真剣に頼んだ。

 そして私の真剣な表情を見て、私が「色々と吹っ切ったと同時に、壁を乗り越えた」と感じてくれたようで、二つ返事で両親は、私を王都にある騎士養成学校に送り出してくれた。


 こうして新たな目標を掲げた私は、王都に移り住むと同時に、騎士養成学校に通い始める。

 王都の騎士学校は、この世界でもトップクラスの名門騎士養成所として知られ、騎士学校の生活は想像を絶するほどハードな生活だったけど、私は「もう二度とウィルの足手纏いになりたくない!」という気持ちを胸に、騎士学校におけるハードな生活を耐え抜いた。

 そして何とか優秀な成績を収めて騎士養成学校を卒業した私は、王国の騎士になった後、新人騎士としても優秀な結果を見せた事で、パラディンに昇格するに至って、登竜門であり、鬼門でもある”パラディン選抜試験”に一発で合格し、晴れてパラディンとなった。

 これでやっと「あの頃の弱い昔の自分と決別」と少しは思えて、自分に少し自信が持てるようになった私は、再びこの街に戻ってきた。


 だけど私がパラディンになったからと言って、未だ私の中に潜む「ウィルに対するとてつもなく強くて重い罪悪感」は無くなった訳じゃない。

 パラディンとなって、久しぶりにこの街に戻ってきた後、ウィルと七年ぶりに再会した時だって、ウィルは「もうあの事件の罪悪感に苛まれる必要はないんだ、だからお互いこれからの先の事を考えよう」と言って、私にいつまでも過去に囚われないようにと、忠告してくれた。

 つまりそれは、ウィルからすると私が「まだ七年前のあの事件に囚われている」様子が丸分かりだという事。


 それにいくらウィルがそう言ってくれも、ウィルの左腕がコップ一つまともに物を握れないどころか、持ち上げる事やっとである姿を目にする度に

(私があの時恐怖に屈しないで、暗殺者に立ち向う勇気があれば、こんな事には……)

 そう考えてしまえばしまうほど、私はウィルからあの頃の目標でもあった『共に騎士の道を進むという』と、彼にとっては初めて自分から目指した夢と、大切な家族を失う事はならなかった……その罪を思い知らされ、私は「どうすればこの罪を償えるの……」と、未でも心の何処かで感じてしまう。


 なんせ当時のウィルの剣の腕は相当の物だった。

 8階位ある魔法属性の中で、ウィルの属性は最下位属性であり、最も力の弱い属性とされる【闇属性】だった。

 それなのにも関わらずウィルは「剣の腕だけで最上位属性である【光】を扱う聖騎士にも匹敵する実力者になれる!」と、当時私達に剣を師事してくれた聖騎士から、太鼓判を押される程の剣の腕前だったの

だ。

 だけど、あの事件でウィルが私なんかを庇った所為で、今のウィルは昔のように剣を振る事さえ叶わない。

 それなのに、未だに私は「ウィルが剣を振れていたら、どんな騎士になっていたんだろう?」と考えてしまうという事は、私未だにあの事を引きずり続けているのだ。

 つまり私は、未だにウィルに対する様々な未練を捨てきれていないんだと思う。


 だけどあの事件で起きた事に関する後ろめたさや、ウィルと取り巻く現状を理解している所為か、私は婚約破棄されても、未だに捨て去る事が出来ないウィルへの思いを、ウィルに打ち明ける事が出来ないでいる。

 だけらと言って、ウィルとの関係は繋ぎ止めたいがために、ウィルが領主の仕事の傍ら経営しているこの街外れのバーに、私は通い詰めてしまっている。

 それに私が聖騎士となって、自分の隊を率いてこの街に戻ってきたのも、全ては未だに大好きだと思ているウィルと、この街を守る為だ。


 そんな私が、今日もウィルの前で好き勝手喚いているのは、こうしたらウィルは「私に寄り添って私の話を聞いてくれる」という、何とも自分勝手な理由であり、結局私はウィルに縋って構ってもらいたいだけ。

 そして、そんな優しいウィルに甘えている私は、未だに本心をウィルに伝える事ができないでいるのだけど、その事を伝えて、もしウィルから拒絶された事を考えると、とても立ち直れる自信がないのよね……つまり臆病な私は、今のこの状況を変えようとする勇気が出ないだけ。

(はぁ……こんな本当の私の姿を知ったら、きっとウィルは幻滅するだろうな)

 出来るだけ考えないようにしていたけど、ふと思い出して考てしまった過去の想いでのせいで、私の気分は再び落ち込む。

 せっかくウィルが愚痴を聞いてくれたお陰で、少しだけスッキリした気分が、再びどんよりとしてきたからか、思わず私は「ハァ~」っと深いため息を付いてしまう。


 そしてコレも全部、この街で好き勝手動きつつ、私の率いる聖騎士隊の面子を、「これでもか!」と言わんばかり潰してくれてるあの二人の所為で、ストレスが最高潮に溜まっているからよ!

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。


次回はエレンが、敵視している相手について、少しは語られると思います。


もし、この作品を読んで何か気になる事や、分からなかったことがあれば、遠慮なくどうぞ。

そして、この作品が面白いと思ったり、続きが気になったら、良いねや、ブクマ等で応援して頂けると幸いです。

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