1.トゥルメリア王国
トゥルメリア王国暦984年
どうやら僕は、異世界に転生したようです。
その状況を理解したのは、僕が赤子だと認識したすぐ、メイドさんが魔法という非科学的な手段を用いて、僕のおしめを代えたからだ。
ウィルという名は僕が与えられた新しい名前である。
僕の名前はウィル・グレイシー。
グレイシー公爵家の嫡男で跡取り息子。
うん、割と名門貴族っぽい。
グレイシー公爵家が忠誠を誓うこの国、トゥルメリア王国は7家の公爵家が存在する。
王家直属で後見人を務める公爵家と、自治領を収める6家の公爵家。
ちなみにグレイシー公爵家は6家に位置する為、グレイシー自治領がある。
トゥルメリア王国の国面積は地球でいうロシア連邦くらいの大きさだ。
トゥルメリア王国の首都セリカから遠く離れた国境沿いに位置していて、そのせいかグレイシー公爵家は国境警備や行商の警護任務、そして1番大事な国防を任されている。
所謂、超武闘派ってことになる。
前世の時は平凡な社会人だったので、さすがに貴族ってことに面を食らった感じではあるが、今はそんなのも気にならない。
なぜなら、この世界には魔法があるからだ!
元いた世界には魔法なんて概念、ゲームやおとぎ話でしかなかったけど、ここには無限の可能性が広がってる。
そう、僕は退屈の連続だった人生から、退屈しない人生にクラスチェンジしたのだ。
そして8歳になった僕は、屋敷内をある程度自由に行動できるようになり、図書室に籠った。
読み漁るのは決まって魔法に関する文献。
ここの図書室は大量に本が収納されており、ざっと数えただけでも1万冊。
一生に読み切れるかどうかの量だ。
図書室に通い始めて、分かったことがいくつかある。
まずは、魔法というのは大気中に含まれる魔素というものがあり、それを体内で媒介させて発動していること。
魔法にはそれぞれ五大元素おおもとのがあり、火、水、土、風、雷がある。
それに加え神聖魔法といわれる光属性があり、この光は王族はもちろん、一部の限られた人間も取り扱える。
光があれば闇もある訳で、心が悪に染まりきった人間、そして魔族と呼ばれる種族が使う魔法もある。
まあ、こんなのは異世界に転生したらテンプレ中のテンプレ。
いちいち魔族とか闇魔法とかで驚いていたらやってられないよ。
でもさ、ひとつだけ言わせて?
「なんで僕、神聖魔法使えるの?」
なんでだろうね、おかしいよね、やってること辺境伯と変わらない公爵家の跡取りが、王家やその一部の人間が扱える神聖魔法扱えるんだよ?
グレイシー公爵家だよ?
周り見渡したら己の筋肉自慢してる脳筋バカしか居ないのに、よりによってグレイシー公爵家の跡取りが神聖魔法ですか!
天は二物どころか余計なモン付けやがったな!
とりあえず、来る時(その時は来ない)までに神聖魔法が扱えることは隠しておこう。
あと大事なのは10歳になると魔力量の成長が止まるらしいのだ。
このロジックの解明は謎のままならしいのだが、5歳になった辺りからメイドさんに連れられて大浴場に大量の水で満杯にしてくださいと毎日言われてたっけ。
その訓練は今でも続いてるのだが、8歳で図書室に行くようになり文献を読み漁っていたらこのことにたどり着いたんだよな。
なんでこんなことしなきゃいけないんだって嫌々やってたけど、今後に左右される大事なことだから、そういうの前もって言ってくれればいいんだけどね。
あとは他の人とは違う僕だけの特殊能力的なやつも教えようかな。
まあ俗に言うユニークスキルってものがあって、一定の魔力を保持してると取得できるらしい。
僕の場合は生成スキルだ。
一見地味だと思うだろ?
なんだよウィル、お前家具職人?鍛治職人?になるのか?って言われると思うじゃん?
残念。この世界に無い物、それは、フルオート銃だ。
この世界は中世っぽい造りをしているので、もちろんマスケット銃はある。しかし、マスケット銃は1回1回コッキングをしなければならないし、次点発射までラグが生まれる。
その点、フルオート銃を生成してみろ?戦いの在り方なんて覆されるぞ。
あとは、乗り物が荷馬車くらいしかないのと、通信機器も無い。そりゃ、中世の世界みたいなもんだから無いのは当たり前だけど、これでも元平成生まれ令和社会人の僕からすると、不便極まりないのよね。
便利な世の中に生まれ、便利な物に染まりきった成れの果て、カルマだよ。
しかし残念なことに、通信機器は諦めなければならない。
なぜなら、この世界には魔法がある。即ち思念伝達ということができるのだ。
一定の範囲なら特定の人物に対して思念伝達を行えるのだが、これも一定の魔力量を保持してる人間にしか扱えない。
なら、国民の為に作ればいいのではないか?そう思う人もいるかもしれないが、何かを流行らせるにはインフルエンサー的な人が必要になる。
しかし、一定の魔力量を保持していれば、わざわざそんな機具に頼らなくても意思疎通など容易だし、宣伝効果も期待できない。
宣伝する人が居なければニーズも発生しないってことなのだ。
広告代理店さん、インフルエンサーさん、いつもありがとう。
とりあえず、僕が今保持している魔力量で作れるのはグロック程度だ。
グロックを作れるだけでも大手柄なのだが、最終的にはスナイパーライフルやアサルトライフルも作ってみたいよね。
エクスペンダブルズみたいな世界線生まれたらオモロいやん?
あ、ちなみに日本刀は簡単に作れたよ。
さて、色々と文献を読み漁ったり、魔力量の増加訓練を日々行い、7年の月日が流れた。
15歳になった僕は、成人となり晴れて大人の仲間入りだ。
15歳になった日、僕は父さんの執務室に呼ばれた。
ダグラス・グレイシー。
グレイシー公爵家の当主でグレイシー自治領の領主、そしてトゥルメリア王国軍の総帥でもある。
国王軍の全指揮を任されてる人物であるから、父さんが指揮を振るえば、国中の軍人達が戦いに赴くことになる。
まあ、ひと言で纏めると凄い人ってことだ。
僕は書斎の扉を2回コンコンとノックした。
「入れ」
「失礼します」
父さんの声が聞こえたので僕は執務室に入ると、椅子に座り書類を整理して、絶賛仕事中の父さんが居た。
「父上、お呼びでしょうか」
「あぁ、ウィル。成人おめでとう」
「はい、ありがとうございます」
「ウィル、今年から学校に通いなさい」
この王国は、一部の富裕層と貴族の子息は15歳の成人になると、トゥルメリア王国が運営するトゥルメリア魔法学院に入学することが決まっている。
もちろん入試は存在するのだが、貴族諸侯は形だけの試験になる。
しかし、この魔法学院は入試の成績が反映され、グレードに応じたAからEのクラス分けがなされる。
成績次第によっては貴族であろうと下のグレードに編成されることもあるので入学が確約されても、気は一切抜けない。
テキトーにやって下のグレードに編成されたら、父さん怒るだろうな。
「ウィル、お前のレベルなら学ぶことはないかもしれないがな」
僕は父さんにだけ神聖魔法が使えることを教えた。
父さん曰く、神聖魔法の使い手は何も王家とその一部の人間だけに限られることでは無いらしい。
神聖魔法を扱える為には、あらゆる魔法に精通し、全ての魔法において極めしものが最後の終着点で神聖魔法が使えるんだとか。
ちょっと何言ってるか分からないけど、要するに僕は魔法においてエキスパートな人間って事らしい。
「父上、そんなことは無いですよ。学び舎において勉学だけが全てでは無いです。人との繋がり、協調調和、コミュニケーションを学ぶ場でもあるのです。むしろ僕は、学院に通えることをワクワクしますよ」
「お前の言う通りだ、ウィル。たくさん友達を作って来い。本来ならばその歳ならば友達と遊んでるのが1番楽しいからな」
僕は父さん国防の席を担ってる為、たまにしか社交場に赴かなかった。
そのため、今までこのグレイシー自治領からほとんど外に出たことは無いし、友達も居ない。
でも、友達が居なかったのは前世でもそうだったし慣れたことではあるけど、父さんはその事で少し負い目に感じてるのかもね。
ふーん、良いお父さんじゃん。
無愛想だけど。
「父上、少しの間グレイシー公爵家を離れますが、グレイシー公爵家の変わらずのご健勝、心よりお祈り申し上げます」
「あぁ、行ってらっしゃい」
「失礼します」
そうしてあっという間にグレイシー公爵家から離れ首都に向かう日がやってきた。
荷馬車に荷物を積み終え、父さんに最後の挨拶を済ませた僕は、この地を発った。
ちなみに母さんは身体が弱いため、お屋敷にて挨拶を済ませた。
トゥルメリア王国暦999年。
僕は魔法学院に入学するべく、首都セリカを目指した──
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