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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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トゥルメリア王家の過去②

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トゥルメリア王国暦984年──




ジェフリー・トゥルメリア国王とその王妃、マーサ・トゥルメリアの間に生まれた長女、それが私、アリス・トゥルメリアです。

王家ながらひとりっ子だった私は、常に兄弟が欲しいと思っていました。

兄弟が欲しいとお父上や母上にせがんだりしましたが、いざ──兄弟が出来るって考えた時は、当時5歳ながらにして、しっかりとしたお姉ちゃんにならなきゃと思ったのが懐かしい記憶です。


「ねぇ、アリス。もし──男の子が産まれたら、名前は何にしましょうね」


「えぇー!!アリス、妹が欲しい!」


「ふふっ、なら──女の子だったらどんな名前がいい?」


「んーとねぇ、じゃあ、花言葉のウィルケンシーから取ってウィルかな!」


「あら、ウィルは男の子の名前よ?でもいいわね、希望って意味があるのは」


「でしょ!例え男の子が生まれてもウィルにするんだ!」


父上と母上の間には、世継ぎが居ませんでした。

2人とも中々子供を授からず、いたずらに月日が流れ、やっとの思いで子を産んだと思ったのもつかの間、生まれたのは女の子の私でした。

ただ──そこで落胆などせず、両親は最大限の愛情を注いでくれました。

このまま世継ぎが居ない場合、父上がこの世を去ってしまうと、誰が次期国王になるのかの論争になり、仕舞いには内乱にまで発展する懸念がありました。

けどそんな不安を払拭するかのように──母上は、新しい子を宿しました。

その時の父上の顔は嬉しさに満ち溢れたそんな表情を今でも覚えています。


「いやいや──マーサ王妃のご懐妊おめでとうございます、ジェフリー王。これでお世継ぎの心配は要らなくなりましたね」


「世辞は要らん、ザガルトス。まだ男の子と決まったわけではない」


白髪混じりの金髪長髪で身長が高く、人を見下しているような、このいかにも胡散臭いおじさん──ザガルトス・スミス。

王家後見の公爵家であり、所謂──宰相の位にある家です。

7つある公爵家の中でもトップに君臨していて、他の6家に対し政治、経済、軍事──あらゆる部門に権限を発動できる、いわば事実上の国家運営をになっている一族の当主です。

そんなザガルトスと父上は──昔から仲が悪く、よく衝突を繰り返してました。

しかし──長年、トゥルメリア王家の後見を務めている公爵家でもあってか、宰相としての手腕は本物です。


そんな国内でも絶大的な権力を誇っているザガルトスですが、母上の臨月のとある夜──私は、ザガルトスとその取り巻き一派の会話を聞いてしまいました。


あれは──夜中に目覚めてしまって、王宮内の御手洗に向かっている途中でした。

御手洗に続く通路に宰相用の部屋があるのですが、少しドアがほんの少し空いていて、ザガルトスと誰かが話している声が聞こえました。

私はひっとりと会話を盗み聞きすることにしました。


「マーサの出産が近いが、手筈は整ってんだろうなぁ?」


「ええ、偉大なる御方が復活するまであと15年──王家の人間どもから器が産まれることに関して、神託は降りてます」


「5年前は女が産まれて、オレの評判は一時的に下がったが、てめえがそこまで言うなら今回は確実だ」


「左様でございます。出産が終わり次第、赤子を確認し、あなた様の元にトゥルメリアのガキを献上しましょう」


「あぁ。器が手に入ったあかつきには──てめえはこの国の王だ。欲深い人間はどこまでも貪欲じゃねえと、本当に欲しいもんは手に入らねえ」


「仰る通りでございます」


どうしよう──そう私は心の中で叫び続けました。

偉大なる御方……器……クーデター……。

古い文献で読んだことがある。

100年前の文献に、悪魔を捕まえて拷問した時、悪魔は口を揃えて、偉大なる御方の復活は近い。あと100年後に人類が住む場所は無くなり、全てが滅びると言っていた記載がある。

もしかして──ザガルトスと話しているのは悪魔?

だとしたらザガルトスはこの国を裏切っていることになる。

早くここを離れないと──見つかったら殺される。

この事を父上に報告しなきゃ。

私は物音を立てずその場を後にしました。

その翌日──夜中見たことを父上に話しましたが、悪い夢でも見たのだろうとまともに取り合ってくれません。

夢じゃないのに──

本当に命が危ないのに、産まれてくる子どもが連れ去られる。

そして悪魔たちが言う、偉大なる御方が復活し──この世界は滅亡する。

当時の私は何もできないことに絶望しました。


そして──母上は、元気な男の子を出産しました。

10時間以上に及ぶ難産。父上は男の子が産まれた事に歓喜していました。

出産に立ち会っていた、ダグラス、ガルド、アンジェラ、じぃやも大手を振って喜んでいます。

でも──私は、心から喜べませんでした。


「おめでとうジェフ!!」


「あぁ……あぁ!!ありがとう、ありがとう……」


「おめでとうございます、陛下」


「陛下、私はお世継ぎが産まれたことに大変喜ばしく思います。本当におめでとうございます」


「今日は祝いの酒を持ってきたんだ、みんなで飲もう!」


「おいガルド、お前そういう時だけは用意早いよな」


「うるせぇなダグ!まぁ、次はお前の世継ぎ問題だけどな!公爵家で世継ぎが居ないのはおめえだけだぞ!」


「てめぇ!俺が一番頭悩ましてるこというんじゃねえ!!」


「私も新しい男が欲しいわ。そろそろ子供のひとりくらい産もうかしら」


「アンジェラ──お前は男を取っかえ引っ変えしすぎだ。500年生きてりゃお前の恋愛なんて刹那の一時かもしれねえが、悪いことは言わねえ、人間の男は諦めろ」


「あんた!ペラペラと酷いこと言うわね!そんなこと平気で言うから世継ぎが生まれないのよ。あんたのとこに嫁いだヘレンさんが気の毒だわ」


「てめえまで俺が一番気にしてること言うんじゃねえ!」


「あら、あなたが仕掛けたバトルよ?言い返されて返せないって逞しいのは筋肉だけかしら」


「ぐぬぬ……コイツ、マジでムカつくッ!!」


すると──いきなりドアが空きました。

入ってきたのはザガルトス。

みんなの冷ややかな視線がザガルトスに集中しますが、ザガルトスは気にもせず──わざとらしい大きな拍手をしながら父上に近寄ります。


「これはこれは陛下、此度の出産誠におめでとうございます」


「あぁ、ありがとう」


「ほほう、外から声は聞こえてましたが、男の子が生まれたのは真のことだったのですね。これで世継ぎ問題は解決しました」


「父上──」


私は父上の手をギュッと握りました。

父上は眉間にしわを寄せながら、ザガルトスを睨みつけます。

そうか──父上は全て知っているんだ。

私に変な心配をさせないよう、あえて悪い夢と表現したのか。

幼いながらに父上の計らいを理解しました。


「ですが陛下──」


──パチンッ


と指を鳴らしたザガルトス。

彼の背後にいきなり──禍々しい存在が現れました。

紫色の長い髪の毛に、長い爪。キリッとした眉にに筋肉質の細身の身体。爬虫類のような目。

そう──悪魔だったのです。


「なぁザガルトス、あのガキでいいのか?」


「はい、この赤子が──偉大なる御方の器でございます」


「近寄るなザガルトス!貴様!悪魔と手を組んでいたなど、王家──いや、この国に対する反逆だぞ!」


「反逆? まさか──これは立派な世に正すための賊軍討伐ですよ。もちろん賊軍は貴方ですよ陛下──いや、ジェフリー」


その言葉を聞くと、ダグラス、ガルド、ノーマンは抜剣し身を構えました。

ザガルトスひとりなら何とかなるかもしれませんが、そのザガルトスの後ろには悪魔が控えてます。


「なあジェフ、あのアホンダラひとりならどうにか出来るが、悪魔に対してはどうもできねえ」


「大丈夫よガルド、陛下と私が神聖魔法で何とかします。その間に、ガルドとノーマンはザガルトスを押さえて」


「俺はどうしたらいい、アンジェ」


「ダグ、あなたは悪魔と交戦していてほしい。その間に私と陛下がオールピュリフィケーションの詠唱をするわ」


「──了解!」


そして、戦いが始まりました。

ガルドとじぃやがザガルトスと交戦している間、ダグラスは悪魔と交戦します。


「なぁ人間、お前──オレとの実力差わかってんのか?さっきから猫が引っ掻く程度の攻撃しかしねえじゃねえか」


「なら──にゃーって鳴いた方がいいか? 悪いが初めて悪魔と実戦なんでね。勢い余って殺しちまったらつまんねえじゃねえか。本気出してやって欲しいならそうしてやるよ」


「ふッ──人間のくせに傲慢だな。なら、オレを楽しませてみろ、戦鬼、ダグラス・グレイシー!!」


「悪魔が俺を知ってるなんて地獄でも有名人らしいな。なら──本気でいくぜ!!」


悪魔の鉤爪とダグラスの剣が轟音をたて交わる。

凄まじい力と力の応酬だが、互いに一歩も引かない。

しかし──目一杯の攻撃を仕掛けるダグラスに対して、悪魔は軽々と斬撃を受け流す。


「力の割には余裕な表情してんじゃねえか。もしかしてポーカーフェイスだったりする?」


「あ?だから余裕なんだよ、お前の攻撃は。それで本気だって言わないよな?」


「ったりめえだろ!せいぜい余裕ぶっこいてろ!後で後悔しても知らねえからな!ラピッドファイヤ!」


ダグラスはゼロ距離で上位魔法ラピッドファイヤを繰り出す。

だが──悪魔はそれをひらりと躱してしまった。

ダグラスは一旦間合いを取る。


「んだよ!ラピッドファイヤも簡単に避けるんかよ! ──おい!アンジェ!まだか!!」


「──っるさいわねぇ!今詠唱の最中なんだからあんたも集中して戦って!!」


「アンジェ!ザガルトスは取り押さえた。ノーマンはマーサ様と子供たちの側に付いて守ってる!ザガルトスの拘束が終わり次第、そっちに加勢する!」


「わかったわ!らしいわよ!脳筋!!筋肉しか取り柄がないんだから黙って耐えなさい!」


「てめえはいつもひと言多いんだよ!!言われなくても分かってるわい!!」


しかし──悪魔はダメージを負うどころか、疲弊すらしてなかった。

しかも退屈そうなのか──あくびまでしてる始末だ。


「あくびしてんじゃねえ!クソ悪魔!!」


「あぁ〜あ、なんか飽きてきたな。さて──そろそろ目的を達成させるか」


「そうはさせない!!オールピュリフィケーション!!!」


悪魔の足元に魔法陣が出現する。

光の柱が悪魔を包み込み──悪魔は驚いた表情をする。


「おいおいおい、マジでやってくれたなぁ!!クソどもがよぉ!!」


「これで撃退できるわ!──えっ!?」


光の柱が収まるが、そこには悪魔が何事も無かったかのように立っていた。

オールピュリフィケーションは魔獣や悪魔に致命傷を与える神聖魔法だ。

それなのに悪魔は消滅していない。

私は咄嗟に母上の服を握った。


「貴様──元天使だな」


「ご名答国王さん、てめえらのオールピュリフィケーションが効かなかったのは、俺が──元天使のベリアル様だからだよ。残念だったな、エルフの嬢ちゃん」


天使──

この世を創造されたと言われている、神の使いで守護者でもある存在。

一部の天使はその神に逆らい現世に堕天しやがて悪魔となったのだが、まさかその悪魔が今対峙してるなんて、この時私たちはどうしていいかわかりませんでした。


「もう適わねえってことがわかったんだからいいだろ、さっさとそのガキよこせ」


「──ならん!!我が子を貴様の道楽で渡すものか!!」


「道楽。嫌な言い方してくれるねぇ。でもさ──」


ベリアルの手には産まれたばかりの赤子、ウィルが収まってました。


「やめて!!!」


「貴様ぁ!!!」


「おっと、無駄な抵抗はすんなよ?なにも──てめえらの命を取る気はねえんだ。興味ないからな」


「──くッ!!」


私が恐怖に怯えてると、すっと母上が立ち上がりました。


「──母上……?」


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