ギルドと実技研修⑤
すんなりと1階層を踏破した僕たちは難なく2階層も踏破した。
正直──モンスターの強さは1階と2階も変わらないし、これだと3階層も同じ強さのモンスターがいるだろう。
3階層に到着した僕たちは、ひたすらと前に進み、いつの間にかボスが居る部屋にたどり着いた。
予定よりだいぶ早く着いた為、妙に実感がない。
「ここがボス部屋ですね」
「そうだね、ここをクリアしたら地上に戻ろうか」
「えぇ〜やっぱ下の階層にも行ってみない?時間ならたくさんあるっしょ」
「シノ、言っているだろう。俺たちは研修中の身だ。許可されてない階層に行くのは、評価を落とす行為だって何度も言ってるだろう」
シノさんは物足りないんだよね。
分かるよ。
正直──僕も物足りなさは感じていたし、まだ戦いたいって気持ちはあるけど、学院の研修中に勝手はできない。
もし──僕たちに何かあれば先生たちの責任になるからね。
迷惑はかけちゃいけない。
「シノちゃん、今日は3階層で諦めよ?私たちハンターなんだし、またダンジョンに来ることあるだろうから、その時がんばろ?」
「ちぇ〜。アリスがそこまで言うなら仕方ないなぁ。今日は諦める」
僕たちはホッと胸を撫で下ろした。
このままゴネて勝手に4階層まで行ってしまったら取り返しのつかないことになってたからね。
シノさん、根はいい子なんです、根は。
僕たちはボス部屋に入ると──大きな空間が広がっていた。
いや──何かがおかしい。
ボスらしいボスは居ないし、しかも──踏破後に開く4階層への階段の扉が開いていたのだ。
「ボスモンスター居ないですね」
「そうだな。誰か他のハンターが倒してしまったんじゃないか?」
いや──そんなことは有り得ない。
ボス部屋のモンスターは倒したら一定時間ボス部屋に入れないギミックになっている。
本来ボスが復活するまで入れない僕たちなのに、何かの間違いなのか、ボス部屋に入れてしまっている。
しかも扉も開いたままだし、可笑しすぎる点が多すぎる。
「肩透かしくらったなぁ〜、ボスが居ないんじゃ仕方ないし、帰るかぁ〜」
シノがそう言い、踵を返して入ってきた扉に向かおうとする。
だが──やっぱりこれは罠だった。
シノが歩き出すと、いきなり地面が光りだしたのだ。
「え!? なに!?これ!!」
「これは──まさか、トラップマジック?」
「みんな!僕から離れないで!」
地面には大きな魔法陣が描かれていた。
これはなんの魔法陣なんだ?
ダメだ──魔法陣の展開が早くて解析できない。
なにか衝撃に備えられるよう、バリアを展開しておこう。
どんどん視界が白んで行く。
「ウィル様!」
「大丈夫アリス、僕が守るよ!」
「こんな時にイチャイチャしやがって!是非ともアタシも守って欲しいね!」
「なら、俺がシノを守るよ」
「あらぁ〜白馬の王子様気取り? アンタに守ってもらいましょうか〜」
視界が完全に光で遮られ、僕たちはボス部屋から消息を絶った──
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視界が晴れると──3階層フロアと同じ造りの部屋に立っていた。
だが──明らかにここは3階層ではない。
3階層と違って、明らかに魔素濃度が高かった。
「みんな──大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「大丈夫だけど、アタシたちに何が起こったんだ?」
「おそらく転移魔法のトラップが仕掛けられて飛ばされたんだ」
ケインの言う通りだ。
あれは転移魔法の魔法陣だった。
しかし──いきなり光り輝くものだから、あれが魔法陣だって気づくのは、飛ばされる直前のことだ。
けど何のためにあんな高等技術の魔法を仕掛ける必要があるんだ。
「んで、アタシたちは今何階層にいるんだ?」
「それがわからないんだ。でも──ここは3階層ではないのは確かだよ」
「そうですね。明らかに魔素濃度が高いですし、3階層よりも下の階に転移された可能性が高いです」
やはり──みんな、同じことを思っていたんだな。
とりあえずはここから脱出する方法を考えないと。
だが──僕は大きな物体を察知した。
何やら奥の方に何かが控えていた。
「みんな構えて。何か居る」
僕のひと声に皆構える。
雷魔法で奥の視界を照らすと、そこには──大きなドラゴンが居た。──が、
「……死んでんの?これ……」
「あぁ、死んでる」
喉元を裂かれて白目を向いて息絶えているドラゴンがそこには居た。でも何故だ。
トラップで転移させられて、下の階まで来てドラゴンが居たと思いきや、死んでるドラゴンが居て。
明らかに僕たちは何かに巻き込まれている。
脅威がなくなったと分かると、ケインは剣を握る手を緩めた。
だが僕は──確かに感じた。
まだ何か居る──
「構えを緩めたらダメだケイン!まだ何か居る!」
しかし遅かった。
何か高速で通り過ぎた物体が──ケインの右肩を貫いたのだ。
「───ッぐっ!!!」
ケインは剣を落とすと、その場で膝を着く。
「ケインくん!」
「──アリス!!動いたらダメだ!!」
だが──もう遅い。
アリスの右脚に高速の物体が突き刺さり貫通した。
「──いやぁぁぁあ!!!」
アリスもその場に崩れ落ちる。
「──アリス!!!」
わからない、何が起きてるんだ。
速すぎる物体は今も僕たちの周りを高速で駆け巡っている。
集中しろ。必ず次は僕かシノを狙ってくる。
呼吸を整え、落ち着きを取り戻すと──相手の動きがハッキリとわかった。
「そこだ──!!」
刀で叩き斬ると、物体はスパッと真っ二つに裂かれ動きを止めた。
それは──ペティナイフ程度の大きさのナイフだった。
こんなものが高速で駆け巡ったら、そりゃ貫かれても仕方ない。
今のうちにアリスとケインを避難させないと。
「シノ──!!今のうちに2人を下がらせて!」
「わ、わかった……」
シノは完全に気が動転している。
これでは戦力にならない。
ここは3人を一旦下がらせて、僕ひとりで戦うしかない。
「ウィル!! 俺は──俺は平気だ!戦える」
「何言ってんだケイン!!大人しく下がってろ!!その傷じゃ剣は振るえないだろ!」
ケインの肩からは大量に出血していた。
筋からバッサリ切られてて、右肩は動くのを忘れたかのようにダランとしていた。
「──だが!」
「あとは任せてくれ、ケイン」
「……あぁ、わかった……。すぐに戻る」
苦虫を噛んだような悔しさを滲ませるケインは奥に下がって行った。
アリスもシノに肩をかしてもらい、下がっていく。
あまりの痛みなのだろうか、アリスは言葉を発せなかった。
「それで──どこの誰なんだ。いい加減、姿を現してもいいんじゃないか?」
「ククク……」
奥から微かに笑い声が聞こえた。
目を凝らすと──死んだドラゴンの頭の上に、1人の人物が立っていた。
「不意打ちで傷を負わせておこうと思ったのに、一発で見切るとか、やっぱりキミは素晴らしい最高傑作だぜ」
「……誰だよ、あんた」
紫色の長い髪の毛に、長い爪。キリッとした眉にに筋肉質の細身の身体。爬虫類のような目は──
「あんた、悪魔だろ」
「ご明察。いやぁ素晴らしいねぇ、嫉妬しちゃうくらいに」
「全部お前の仕業か?」
「あぁ、そうだぜ?お前を頂戴するためにやって来た。感謝しろよ?お前は偉大なるお方の器になるんだ」
「……は?何言ってんだ?あんた」
そして男は不気味な笑いを止めた。
「オレの名前はベリアル。迎えに来たぜ?ウィル・グレイシーくん──」




