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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
82/148

 82 となり町のとある交差点で  

今話から第6章『転機』に入ります。

 愛優ちゃんと隣の駅まで蕎麦を食べに行くことになり、ちょっとしたデート気分を味わってご満悦なオレ。

 愛優ちゃんが連れてきてくれたお店の蕎麦は美味しかったし。

 なんていうか、喉ごしが……て、通みたいなこと言えないけど。

 やっぱり、食事は何を食べるかじゃなくて、誰と食べるかってのが重要なんだと再確認した。


 だって。正直味なんて覚えてない!


 まあ、仕方ないよ。愛優ちゃんのおちょぼ口で、ちゅるちゅると可愛らしい音を立てて食べられている蕎麦。

 そっちの方が気になって、オレは機械的に箸を口に運ぶ作業しかしてなかったんだから。


 楽しい時間はあっという間に過ぎ、そろそろ帰ろうかと店を出た。

 駅前まで歩く途中、横断歩道の信号にひっかかり、オレ達は一番前で信号が赤から青に変わるのを待っている。


 真夏だけど人の多い少し大きめの交差点。

 交通量も多いので、待ち時間もそれなりに長い。

 ひとりだと、時間を持て余してイライラしながら待っているかもしれないこのちょっとした時間も、愛優ちゃんとなら永遠に続いてほしいと思うぐらいに楽しい時間だ。


 もうそろそろ信号が変わる頃だと思ったその時、愛優ちゃんがバランス崩し、車道の方に飛び出しそうになった。

 驚いたオレは何も考えず、彼女の手首を掴み、思いっきり力を込めて歩道へと引っ張った。

 刹那。オレの力が強すぎたのか、勢いがつきすぎた彼女の身体が地面の方に倒れ込もうとしているのが目に入った。


 オレは咄嗟とっさに身をていして彼女と地面の間に、仰向けに滑り込む。

 すると彼女はオレの上に覆い被さるように倒れ込んできた。

 不思議なもので、その間の様子はまるでスローモーションのようにゆっくりと進んでいくように感じた。


「きゃ」


「大丈夫か?」


 彼女にケガがないか、それだけが気になった。


「うん。平気」


「そっか」


 オレは安堵あんどのあまり全身の力が抜けていくのを感じた。

 ふうと息を吐いてしばらく。


 ん?


 彼女の顔がこんなにも近くにあるなんて。

 そして彼女がこんなにも近くに……というかボディータッチどころではないということに気づいた。


 彼女もこの状態に顔中真っ赤にして固まっている。

 オレの方も今までどうってことなかったのに、状況を把握してから急に頭の天辺てっぺんからつま先まで一気に温度が上昇していくのが感じられる。

 鼓動は忙しそうだし。


 お互い暫く見つめ合い、まるでストップウォッチのように一瞬固まって、ハッと気づき離れる。

 ふたりとも照れ笑いを浮かべ、というかオレは「あははは」と漫画の棒読みのような声で笑ってしまい、それを聞いた愛優ちゃんが横で大笑いをしている。


 見たところ愛優ちゃんにケガもなさそうだし、ホッと胸をなで下ろしたのも束の間、オレはある違和感を憶えた。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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