71 とある日曜日(4)
『言わずもがな』
だけど、オレは敢えて言いたい。
兄貴に優希さんの気持ちを伝えたいと思った。
お節介だと言われるかもしれない。
だけど。
もしオレが兄貴の立場だったら、きっと優希さんの本心を知りたいと思うはずだ。
引き留めてほしいとほんの少しでも思う気持ちがあるのなら知りたいと。
実際に引き留めるかどうかは別としても、お互いの気持ちを知ったうえで話ができるはずだ。
後に知ることになるよりも、その時に知りたいと思うに違いない。
だから。
でも。
兄貴は「知ってたさ」と笑いながら言うかもしれない。
知らなかったと言うかもしれない。
どちらにしても後悔のないようにしてほしいんだ。
別にふたりが別れるというわけではないけれど、離ればなれになるのは明白。
国内ならまだしも、外国となれば時差もあるし、今どきの便利なツールを使っても、それぞれ日々の生活を送る中、連絡は今よりとりにくくなるかもしれない。
そんな中で、不安な日々を送るかもしれない。
お互いの夢を追うことに追われて、だんだんと言葉を交わす頻度が減って、疎遠になってしまうかもしれない。
それらは全て想像にしかすぎない。実際に国際カップルなんてのも存在するのだから。
だけどオレは、オレの大好きなふたりだからこそ、そんな哀しい未来を考えたくはないんだ。
オレは恋愛には奥手だし、自分の気持ちだって上手く伝えられない。
どんな言葉でどのように表現すれば、相手に理解してもらえるかも解らない。
でも、ひととして解ることがある。
「オレ、兄貴に言ってみるよ」
気づけば口からそんな言葉が漏れ出していた。
「それはいかがなものでしょう」
倉井は眼鏡の端を左手でクイッと上げる。
「姉は言ってほしいと思うかしら」
愛優ちゃんは腕組みをする。
ふたりとも言わない方がいいというのか?
「それは解らないよ。お節介かもしれないけど承知のうえだ。それに兄貴も優希さんもお互いの気持ちを知っているのかもしれない。でも知らないかもしれない」
「まあね」と相づちを打ってくれる愛優ちゃんの方を向いて、オレは続けた。
「だから愛優ちゃんにも協力してほしいんだ」
* * *
それからオレたち――――オレと倉井と愛優ちゃんは、ああでもない、こうでもないと策を巡らせた。
だけど案外ベタな案を採用することにした。
色々と回りくどいことをするよりは、野球部エースらしく直球勝負で。
お読み下さりありがとうございました。
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