125 学年末テスト(3)
学年末テスト初日も無事終え、放課後を迎えた。
今朝愛優ちゃんと約束した通り、一緒に勉強すべく教室に残る。
オレは1学期末のテスト初日のことを思い出した。放課後、はじめはみんな残って勉強していたのに、最終的には愛優ちゃんとふたりきりになった時のことを。
そう。オレとクラスの男子憧れの的、涼風愛優ちゃんのふたりきりになってしまって、内心ラッキーと思いながらも、硬派なオレは特に話しかけることもなく、ただ淡々と問題集を解いていたっけ。
それが今では約束して一緒に勉強することになるなんて。
季節の流れを感じる。
あの頃は妙に緊張していたなぁ。
いや。今でも愛優ちゃんと話すのは緊張するけど、いろんな出来事があって少しは近くなれたというか、ふたりで話しても、あの頃のように無愛想な感じではなくなったかな。
それは凄い進歩だ。
頑張ってるよ。頑張ってるよ、オレ。
さあ、今日は勉強もはかどりそうだ。なんたって愛優ちゃんと一緒だからな。
と、教室を見渡すと、愛優ちゃんがオレの方に向かって歩いてきた。
「お疲れさま」
「おお。お疲れ」
「今日の試験どうだった?」
「まあまあかな」
あれ? オレ、なに緊張してんだろう。
いつものように言葉がでてこないぞ。ぶっきらぼうなオレが顔を出した。
「隣に座ってもいい?」
「え?」
「隣の方が解らないところとか教え合いっこできるし」
おお! なんと気の利く。というか、テンションが上がってきたぞ。
そうだな。どうぞどうぞ、隣で仲良く勉強しようぜ! と言いたいところだが。
「そうだな」
なんだなんだ空! 思ったよりも緊張しているみたいだ。
まあ、勉強するんだからヘラヘラしてる方がおかしいけど。
「お。もうはじめてるのか?」
そこへ悟がやってきた。
「は? なにを?」
なんのことを言っているのやら。
「おじゃまします」
眼鏡の端を左手の中指でクイッと上げ、礼儀正しく倉井が言う。
そんなふたりを見て、愛優ちゃんが言ったんだ。
「全員揃ったわね」
は? なんですと!?
「倉井たちも一緒だったんだな」
「あ、お邪魔でしたか?」
いやいや倉井。そう言われると返す言葉に困るじゃないか。
「ま、まさか」
苦笑とともに返した。
オレ達ふたりじゃなかったのか。
なんという勘違い。
そう思うと恥ずかしさで耳が熱くなっていくのを感じる。
「さ、はじめましょう。4人で勉強した方がはかどると思って。学年トップの倉井くんがいれば百人力。江崎くんは賑やかし? みたいな」
そう言ってふふふと笑う彼女をオレはお慕い申し上げています。
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