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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
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124/151

124 学年末テスト(2)

 今日から始まる学年末テスト。

 少し早めに家を出て、足元に気を付けながら学校へと歩む。

 今朝は珍しく予報通りに雪が降っている。

 夜に降りはじめた雪は今朝には止んでいたのに、またほんの少し降りだしてきた。


 この地方では年に1~2度ほどしか降らない雪が、よりによって試験の日に降るなんて。

 積雪3センチ。2本の轍《わだち》の跡。雲間からさす光。太陽に照らされ溶けかかった雪がシャーベット状になり、滑りやすくなっている。所々にできた水たまりをよけながら、いつもなら早歩きで進む道も、今日は転ばないように気をつけて歩かないといけないので、普段より時間がかかる。


 雪さえ降っていなければ、最後のあがきに学校までの道中、単語のひとつでも覚えながら歩くのに。足元を気にしながらだと全く頭に入らない。

 

 ふうとため息交じりに息を吐いたとき、後ろから声をかけられた。


「なんだなんだ? ため息なんかついちゃって」


 聞き覚えのある声に振り向くと、悟が「おはよう」と手を上げる。


「おはようございます」


 ニヤけた笑いの悟の後ろから、ひょっこり顔を出したのは倉井だった。


「おはよ。てか今日の試験、キミたちは余裕そうだね?」


 オレが言うと、倉井は“当然”とでも言いたげに、眼鏡の端を左手の中指でクイッと上げ、ポーズを決めている。流石学年トップだけはある。


「俺は悪あがきはしないタイプなんで」


 悟は開き直ったように言い放った。


「オレは最後まで足掻きたいよ~」


 そう言って、少しでも良い点をとりたいから、と続けようとしたとき、「まあ頑張りたまえ」と悟が肩を組んでにやにや顔で言ってくる。


「はなせっ」


 オレは悟の腕を振りほどき、大げさに単語帳をめくる素振《そぶ》りで思いつく単語を唱えていった。


 じゃあ、とばかりに倉井まで小難しい公式や年表なんかを、お得意の早口で言いだしたもんだから、オレと悟は顔を見合わせて大笑いした。


「え、どこか間違っていましたか?」


 オレ達の冗談に対して真面目な面持ちで聞いてくる倉井に、オレと悟は「いや、完璧だ」と言いながらも、笑いが止まらない。

 倉井って本当に良いヤツだなと再認識した瞬間だった。



 そうこうしているうちに学校に到着した。オレは結局最後のあがきもできぬままに、教室に向かった。

 まあ、悟の言うように今頃足掻いてるようじゃダメだよな、と思いながらも、自分の席に着きノートを取り出した。


 とそこへ愛優ちゃんがやってきて、「今日、放課後残って勉強する?」と聞いてきた。

 オレが「どうして?」と聞き返すと、「私、少し残って勉強するつもりなんだけど、空くんも一緒にどうかなと思って」と言うではないか。

 心の中では“はいはい! 放課後一緒に勉強したいです!”と即答しているのだが、なぜかこう答えた。


「べつにいーけど」


 そう言ったのは照れくさかったから。


「じゃ、今日のテスト頑張ろうね」


「おう」


 ぶっきらぼうに言ったのは、嬉しい気持ちを悟られたくなかったから。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 眼鏡キャラが好きというのもありますが、本当に倉井くんの好感度が上がっています。 単語帳とか懐かしすぎて、妙に感動した回でした。
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