124 学年末テスト(2)
今日から始まる学年末テスト。
少し早めに家を出て、足元に気を付けながら学校へと歩む。
今朝は珍しく予報通りに雪が降っている。
夜に降りはじめた雪は今朝には止んでいたのに、またほんの少し降りだしてきた。
この地方では年に1~2度ほどしか降らない雪が、よりによって試験の日に降るなんて。
積雪3センチ。2本の轍の跡。雲間からさす光。太陽に照らされ溶けかかった雪がシャーベット状になり、滑りやすくなっている。所々にできた水たまりをよけながら、いつもなら早歩きで進む道も、今日は転ばないように気をつけて歩かないといけないので、普段より時間がかかる。
雪さえ降っていなければ、最後のあがきに学校までの道中、単語のひとつでも覚えながら歩くのに。足元を気にしながらだと全く頭に入らない。
ふうとため息交じりに息を吐いたとき、後ろから声をかけられた。
「なんだなんだ? ため息なんかついちゃって」
聞き覚えのある声に振り向くと、悟が「おはよう」と手を上げる。
「おはようございます」
ニヤけた笑いの悟の後ろから、ひょっこり顔を出したのは倉井だった。
「おはよ。てか今日の試験、キミたちは余裕そうだね?」
オレが言うと、倉井は“当然”とでも言いたげに、眼鏡の端を左手の中指でクイッと上げ、ポーズを決めている。流石学年トップだけはある。
「俺は悪あがきはしないタイプなんで」
悟は開き直ったように言い放った。
「オレは最後まで足掻きたいよ~」
そう言って、少しでも良い点をとりたいから、と続けようとしたとき、「まあ頑張りたまえ」と悟が肩を組んでにやにや顔で言ってくる。
「はなせっ」
オレは悟の腕を振りほどき、大げさに単語帳をめくる素振りで思いつく単語を唱えていった。
じゃあ、とばかりに倉井まで小難しい公式や年表なんかを、お得意の早口で言いだしたもんだから、オレと悟は顔を見合わせて大笑いした。
「え、どこか間違っていましたか?」
オレ達の冗談に対して真面目な面持ちで聞いてくる倉井に、オレと悟は「いや、完璧だ」と言いながらも、笑いが止まらない。
倉井って本当に良いヤツだなと再認識した瞬間だった。
そうこうしているうちに学校に到着した。オレは結局最後のあがきもできぬままに、教室に向かった。
まあ、悟の言うように今頃足掻いてるようじゃダメだよな、と思いながらも、自分の席に着きノートを取り出した。
とそこへ愛優ちゃんがやってきて、「今日、放課後残って勉強する?」と聞いてきた。
オレが「どうして?」と聞き返すと、「私、少し残って勉強するつもりなんだけど、空くんも一緒にどうかなと思って」と言うではないか。
心の中では“はいはい! 放課後一緒に勉強したいです!”と即答しているのだが、なぜかこう答えた。
「べつにいーけど」
そう言ったのは照れくさかったから。
「じゃ、今日のテスト頑張ろうね」
「おう」
ぶっきらぼうに言ったのは、嬉しい気持ちを悟られたくなかったから。
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