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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第8章 境目
122/148

122 新年を迎えて

 それから年末までオレ達4人は順番にみんなの家を巡りながら、一緒に宿題をした。

 やはり愛優ちゃんと一緒だと嬉しい反面緊張もするが、4人でワイワイ過ごすのは楽しい。

 冗談を言ったりしながらも宿題ははかどり、全員年末までには宿題を終えることができた。


 大晦日は家で年末恒例のテレビを観たり、家族で楽しく過ごし、元旦は毎年正月らしく世間一般でするようにおせちを食べたり正月の行事を楽しんだ。


 そしていよいよ。

 今日、1月2日は初詣に出かける。

 愛優ちゃんとふたりで……と言いたいが、なぜかまたいつもの4人だ。


 まあ、倉井とさとしも交えて愛優ちゃんとオレの4人で出かけるのは、また楽しいというもの。

 近所の神社へお参りをし、その後昼食を軽く食べて帰る予定だ。


 明日は親戚が集まる日。毎年1月3日は本家に親戚が集まることになっている。

 本家は父の兄の家で、オレの家からは車で40分程度の場所にあり、朝一番に父の運転で伯父の家まで出かける。

 久しぶりに従兄弟たちに会えるのが楽しみだ。

 お年玉は、もう高校生だし期待せずに……いや、少しは期待してしまう。

 いったいいつまで期待してもいいのかな? なんて。


 母は父方の親戚の家に行くのは気を使うから、あまり嬉しくはなさそう。

 日頃から仲良く行き来をしてはいるが、そこは、ほら。

 やっぱりね、いろいろとあるのだろう。オレには解らないなにかが。

 



* * *

 

 楽しかった三が日が過ぎ、今日からまた部活が始まる。

 3月の『選抜高等学校野球大会』に出場するチーム32校に選抜されている。

 オレ達の通う姿薔薇紫すばらし高校野球部は、今度こそ優勝を目指して練習に励む。

 夏の甲子園では悔しい思いをしたので、それをバネに頑張るつもりだ。


 オレは思うんだ。

 ひとは自分の思い描く未来に向かって進んで行く。

 一生懸命頑張っているときは、失敗のない素晴らしい明日を想像しながら生きている。

 しかし人間は失敗や挫折から学ぶことも多い。


 そりゃ順風満帆に人生を進んで行ければ、それに越したことはない。

 でも、悔しい思いや哀しい思い、辛い気持ちを乗り越えてこそ見える未来もある。

 そしてそんな思いをした人間の方が、強くなれる分、きっと優しくなれる。

 相手の気持ちを思いやれる、って。


 失敗や挫折を経験しないまま進んで行ってしまうと、年齢を重ねたときに、もし大きな挫折を味わうと、立ち直る術を知らないままなんじゃないかな。

 だから余計にもがいてしまう気がする。


 オレはまだ高校2年生だから、それほど多くの経験をしているわけじゃない。

 だけど、高校生活を通して、部活を通して多くを学べた気がする。

 

 この生活がいつまで続くか解らないし、明日はなにが起こるか解らない。

 今と全く違う道を歩む決断に迫られるかもしれない。

 だけど、その時その時によく考えて、自分が納得できる道を選んでいきたい。

 まあ、それは明日かもしれないが、ずっと先かもしれない。

 それまで、1日1日を、一瞬一瞬を、大切なひと達との時間を大事にしていきたい。


 新年を迎えて初日の部活のために学校への道を歩きながら、そんなことを考えていた。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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