117 大事な局面(2)
オレは今、少々居心地の悪い空間にいる。
今日はクリスマス・イヴ。愛優ちゃんとケーキを食べる約束で、今一緒にいるわけだが。
愛優ちゃんが行きたいと言ってオレを連れてきたところ。
ピンクや水色をメインに可愛く彩られた店内。
いや、あの。オレ、こう見えても高校球児だから。
シャイで奥手で硬派で……こんな可愛らしい空間に女子とふたりでいるなんて、人生ではじめてのことだし。
ワイワイきゃあきゃあと高い声が飛び交う中、きっとオレは浮いている。
周りを見渡しても女子ばかり。今、この店内で男子はオレだけなんだけど。
心なしか、チラリチラリと視線を感じる気がする。
「ここのスイーツビュッフェ、一度来てみたかったんだぁ」
愛優ちゃんの瞳がきらきらと光る。
「へ、へえ」
嬉しそうな彼女に、オレは場違いな気がするとはとても言えない。
「ねえねえ、何から食べよっか」
スイーツが並べられた場所まで引っ張って行かれたオレ。
見るとそこには色とりどりのケーキやカップケーキ、プリンにクッキー、チョコレートにゼリー、アイスクリームや他にも見たことのないような美味しそうなスイーツが並んでいる。
「そうだなぁ」
オレは目移りしてしまったが、無難なイチゴのショートケーキにした。
愛優ちゃんはチョコレートが好きなようで、チョコレートケーキの三種盛りを嬉しそうに選んでいた。
ここのお店はビュッフェといっても、自分達で並べられているスイーツを直接手に取るわけではなく、食べたいものを決めて注文するスタイルだ。
飲み物もそこでオーダーする。
すると後ほど係のひとが席まで持ってきてくれるというシステム。
カウンター越しに注文したオレ達は、席に戻ってスイーツと飲み物の到着を待った。
少しして、可愛いお皿に載せられたケーキとホットコーヒー2つが運ばれてくる。
「お待たせしました。ご注文はお席でも承りますので、お声かけ下さいね」
係のひとはそう言って微笑んだ。
「はーい」
少々テンション高めの愛優ちゃんが返事をする。
オレは軽く会釈をした。
気づけば周りには男子の姿も見られるようになっていた。
オレだけじゃなかった、と安堵する。
「空くん、メリークリスマス!」
愛優ちゃんが満面の笑みでオレに言う。
「メリークリスマス!」
オレは照れ笑いをしながらも答えた。
お読み下さりありがとうございました。
次話「118 大事な局面(3)」もよろしくお願いします\(^O^)/




