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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第7章 岐路
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116/151

116 大事な局面(1)

 オレは今、大事な局面にいる。

 緊張で胸が張り裂けそうだ。


 オレこと夏野《なつの》空《そら》の通う高校は、県下でも有数の進学校だ。

 その上、スポーツにも力を入れているので、全国でも名の知れた学校である。


 スポーツ特待生として入学してきた『スポーツエリート生』でも、入学したからには部活の練習がきついという理由で、学業が疎《おろそ》かになることは許されない。

 もし成績が著しく下がってしまうと、クラブを辞めなければならなくなる。


 みんなその種目をしたいがために名門の我が校の門をくぐるわけだが、成績が下がったからといって退部させられたら元も子もない。

 地元の期待を背負って、全国から集まってきたのだから。


 文武両道ってやつだ。


 オレはたまたまこの姿薔薇紫《すばらし》高校が地元にあったからよかったものの、地方からやってくる生徒は、寮生活をすることになる。

 


 そんな学校に通っているから、ヘラヘラなんてしていられない。

 一生懸命勉強して、野球して……。



「おまたせ~」


「いや、オレも今来たところだから」


 つい言ってしまったけど、オレはそわそわしながら待ち合わせの30分前には、この駅前に着いていた。





 昨日、兄貴にクリスマスの予定を聞かれて、クリスマス・イヴに愛優《あゆ》ちゃんとケーキを食べる約束があると話したら、「プレゼントは何を渡すの?」って。


「え、プレゼント?」


「だって、クリスマス・イヴにわざわざ会うんだろ?」


「まあ」


「じゃあ、プレゼントは必須だぜ」


 ニヤリと笑う兄貴。


「そ、そんなことしたら告白みたいじゃないか。オレはまだそんな……」


「ははは。普段いきなりプレゼントしたら、何事かと思われるかもしれないけど、クリスマスってシチュエーションで手ぶらの方が気が利かないヤツって感じだよ」


「そ、そんなもんかなぁ」


「ま、プレゼントの内容と渡すタイミングにもよるけどな。あくまでも友達って感じで渡したいなら、楽しく喋りながらさり気なく渡せばいいんだよ。あと、愛優ちゃんが気を使わなくてすむような品物を選ぶこと」


 それはオレにはかなりの難問だ。宿題より難しいと思う。

 女子が気を使わなくてすむような品物ってなんだ?

 反対に、女子が気を使う品物ってなんだろう。


 結局オレは、兄貴に付き合ってもらって買い物に行った。

 オレは「アクセサリーとか渡すのか?」って聞いたら兄貴は、はははと笑いながら「それは付き合ってからでいいんじゃないか?」と言う。

 悩んで歩き回って、結局あるものに決めた。


 プレゼントっていうようなたいそうなものでなく、ちょっとしたものにしたんだが、愛優ちゃんは喜んでくれるだろうか。

 それを今から渡すのかと思うと、緊張して緊張して。



 母親は、出がけに「宿題やったの~?」なんて言っていたが、こんな日に宿題なんて落ち着いてできるはずもない。

「帰ってからやる」と言ってそそくさと家を出た。




「空くん、どっか行きたいとこある?」


 小首をかしげて愛優ちゃんが言う。


「いや」


 ついぶっきらぼうな返答になってしまうオレ。


「じゃあ、私行きたいところあるんだけど、そこでいい?」


 上目づかいで訊《たず》ねるキミ。


「おう」


 あまりの可愛い仕草に高鳴る鼓動。

 オレはやっぱり、愛優ちゃん! あなたをお慕い申し上げています。



お読み下さりありがとうございました。


次話「117 大事な局面(2)」もよろしくお願いします!

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