102 『みんながんばろうぜ!』コンサート(2)
兄貴たちのバンドのコンサートが始まり、順調に進んでいき、会場は熱気で溢れている。
雰囲気の良い感じの流れに、オレと愛優ちゃんは舞台袖でコンサートに見入っていた。
そして遂にオレ達の大切な曲、あの曲の時間だ。
ステージ上の兄貴に紹介され、オレは愛優ちゃんとうなずき合い、ステージへと一歩を踏み出した。
ライトが降りそそぐ中、オレと愛優ちゃんはステージ中央まで進み、兄貴に紹介される。
オレは兄貴――つまり『夏野 海』の弟で、『夏野 空』と、愛優ちゃんはピアノの『涼風優希』の妹で『涼風愛優』だと、兄貴の口から告げられると、会場内は歓声とともに大きな拍手に包まれた。
緊張が走る。
オレ達はひと言ふた言挨拶をし、自分の持ち場にそれぞれついた。
兄貴が次の曲の説明をしている。
大切な曲だと。オレのために作ってくれた……って、それって今言うのか!?
会場のみんなに聞かれるより、愛優ちゃんに聞かれることがなにより恥ずかしい。
てか、そんなこと言うなんて聞いてないぞ!
なんか、よけいに緊張してきたじゃないか。
そんな紹介をされて、どんな顔して歌えばいいんだよ。ったく。
オレはそれとなく愛優ちゃんの方を見たが、優希さんとなにやら小声で打ち合わせをしている様子。
ってことは、今の話は聞いてない?
というか、聞こえてなさそうだな。
オレはほっと胸をなで下ろした。
「それでは聞いて下さい。『不変的感覚(キミを想う気持ち)』」
その曲名が兄貴の口から静かに告げられると、オレの鼓動がひとつ大きく響き、そしてだんだんと速度を速めていった。
さあ、いよいよ始まる。
オレ達の歌が。
兄が爪弾くアルペジオ。オレは途中から少しくずした旋律をギターで奏でる。
♪ キミが好きなのは
ボクの中では
変えようのない事実で
変わりようのないこと
キミがボクの中で
大きな存在に
なっていることにもう
気づいてしまったから
ほんの小さなきっかけで
キミと出逢うことになって
毎日の色が変わっていった
鮮やかな彩になった
モノトーンの出来事さえ
原色に変えてしまうほどで
色あせた現実さえ
パステルカラーになる
キミが好きなのは
ボクの中では
変えようのない事実で
変わりようのないこと
ボクの中心に
キミがいるのは
変えようのない事実で
変わりようのないことだから ♪
兄のソロで始まったギターに途中からオレのリードギターが、そして歌が始まると優希さんのピアノが入り、それだけの伴奏で静かに語りかけるように始まる歌。
サビの部分ではオレのハモりも入り、愛優ちゃんのピアノも優希さんとの連弾というカタチで入る。
兄貴とオレは情熱的に想いを込めて歌う。
オレと兄貴は最後のストロークを弾き終わり、余韻とともに顔を見合わせ、タイミングを合わせてゆっくりと右手のひらで弦を押さえ消音した。
しばらく静寂に包まれていた会場からは、歓声とともに大きな拍手が沸き起こる。
全身の毛が逆立つのを憶えた。
この感動は言葉では言い表せない。
野球場でのそれとはまた趣を異にしていて、初めての感覚だ。
兄貴が音楽をやる理由が少し解った気がした。
この4人でのステージはまたあるかもしれない。
だけど、もうないかもしれない。
この感覚を忘れまい。
この感動を決して忘れはしない。
この胸にいつまでも刻んでおきたいと思った。
お読み下さりありがとうございました。
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