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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
100/148

100 リハーサル

今話で100話になりました。

『みんながんばろうぜ!』コンサート当日。

 オレはなんだかいつもより早く目が覚めた。ベッドの上で天井を見つめて、今日の日の始まりを迎える。

 いつもなら朝目覚めるとすぐに起きて身支度を整えストレッチをしたりするのだが、今日はまず深呼吸をしてゆっくりと起き上がる。

 こころなしか、そわそわしている。


 午前中はいつものようにリビングで家族とともに過ごし、お昼前に兄貴と家を出た。

 会場までの道程みちのり、ハードケースに入れたギターを持つ手にも力が入る。

 やっぱ緊張してるんだな。


 今日のコンサートの話で盛り上がりながら、会場に着くまでの時間はとても楽しいものだった。

 兄貴はオレが緊張しているのを察して、いつものように冗談を言って笑わせたりしてくれる。


 そう、兄貴はオレの大舞台――つまり大事な試合の前なんかは決まってリラックスできるように気を使ってくれる。オレは兄の優しさを感じながら、いつか兄貴に困ったことが起きることがあるならば、そんな日がくるのは嫌だけど、もしもそんな日がきたとしたら、オレは全力で兄の味方になり、力になりたい。


 兄貴をオレの持てる全ての力で支えたいと思う。





 昼過ぎ、会場に到着した。

 他のメンバーも順に会場内の控え室にやって来て、少し水分を補給しながらこれから始まるリハーサルの打ち合わせをする。


 愛優ちゃんと優希さんも時間より少し早めに到着し、オレ達を見つけて手を振りながら近づいてきた。


「早かったのね」


 優希さんにそう声をかけられて、兄貴がニヤニヤしながらオレを指さして言う。


「空が緊張しててさ。早めに家を出たんだ」


 なにをー。

 これも兄貴がみんなの緊張をほぐすためのジョークなんだと解っていても、そんなこと言われると恥ずかしいじゃないか。


「兄貴こそ優希さんに会えると思って、そわそわしてたんじゃないの?」


 ふふん。どうだ。

 とオレは言い返した。


「ぐっ、バレたか……」


 兄貴のいたずらっ子のような表情に、みんなの頬が緩む。

 緊張の前の和んだひととき。


 まもなくステージにてリハーサルとの連絡が入った。


 オレ達はギターのチューニングをする。

 家を出る前にもチューニングはしていたが、いくらハードケースに入れているとはいえ、持ち運ぶことにより多少の狂いが発生する。


 ピアノの“ラ”の音と5弦の開放弦の音を合わせる。

 そうすることによって、ピアノと音を合わせて演奏することができるからだ。

 6弦全てのチューニングを終え、C、G、Am……と弾いてみる。


 よし。これでチューニングはバッチリだ。


 他のメンバーもそれぞれに、楽器や機材の最終チェックをしている。

 リハーサルの主な目的は、出演者のためではなく、スタッフのためと言っても過言ではない。

 本番通りにはじめて、スピーカーから流れる音量の調節をミキサーでして、大体の位置を把握しておくのも大切なことだ。

 曲調や楽器ごとに微妙に調節される“音”を、頭にいれておくために。


 また、照明も音楽によって変えたり、スポットライトの位置を調節したり、マイクの位置や楽器等の機材の位置決めをしたり……とやることは盛りだくさん。


 オレ達出演者は、要所要所を演奏し歌う。

 その時に、自分たちでも聞こえ方を把握して、盛り上げる場所などの最終確認をする。

 そしてもしも時間があまれば、ちょっと軽く歌って喉をならしたり。



 一通りのリハーサルが終わり、開場1時間前になった。

 少し休憩がてら、軽くサンドイッチなどをつまむ。

 雑談を交えながら、やはり本番に向けての最終チェックをする。


 開場時間になり、お客さんが次々と入場する姿をステージの袖から見て、人の多さに兄たちのバンドの人気ぶりを再確認した。

 気を引き締めなければ。


 本番の時間が近づいてきた。

 この時間が一番緊張する。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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