海鮮丼
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陸の家に入ると、陸の家族が待っていました。ちょうどお昼ご飯の支度が終わった所でした。
「今日はどんどんの好きな海鮮丼にしたよ。」
テーブルには、海の幸で彩られた美味しそうな海鮮丼がありました。しかし、どんどんは言いました。
「魚は嫌いになった。」
どんどんがそう言うと、みんなは黙ってしまいました。そんな沈黙をやぶったのはお父さんでした。
「そうか、じゃあ別のお昼にしようか。いやぁ、どんどん、もうすっかり有名人だね。」
陸のお父さんが明るく言いました。
「何だか別の人みたいね。見違えたわ。」
陸のお母さんも明るく言いました。
「どんどん、握手して。」
陸のお姉さんが手を差し出して言いました。
どんどんがお姉さんと握手していると、ずっと黙っていた陸が力いっぱい叫びました。
「こんなの、どんどんじゃない!!」
「陸!」
お母さんが呼び止めるのも聞かず、陸は外へ出て行ってしまいました。
残されたどんどんに、お父さんは話始めました。
「どんどんは魚が嫌いになったんだね。それは残念だ。実は、海鮮丼はね、じっちゃんがどんどんに食べさせたいって言っていたんだ。」
「おじいさんは?」
そういえば、おじいさんの姿が見当たりません。おじいさんはどこでしょう?
お父さんは首を横に振って言いました。
「おじいさんは1ヶ月前に亡くなったんだよ。」
「なくなった?いなくなった?」
「亡くなった。は、死んだって事だよ。」
なんと、おじいさんはもうこの世にはいませんでした。どんどんはガッカリで、寂しくて、何だか重い気持ちになりました。
すると、お姉さんが言いました。
「じっちゃん、どんどんが有名になって、喜んでたよ。」
「ありがとう。ありがとう、どんどん。」
お母さんはエプロンの裾で目頭を抑えながら、どんどんにお礼を言いました。
『ありがとう。』
そう言われたどんどんは、嬉しくなりました。不思議でした。どんなに沢山の拍手よりも、その言葉が嬉しくてたまりせんでした。
「でも、どんどんは、どんどん言ってる方がどんどんらしいよ。」
「どんどん?どんどん言ってたどん?」
どんどんがそう言うと、みんなは少し笑いました。不思議でした。どんなに贅沢なご飯よりも、その笑顔が嬉しくてたまりませんでした。
こうしてどんどんは、少し、元のどんどんに戻りました。




