鮭なベィベー!
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どんどんがどんどん有名になると、社長のおじさんは嬉しそうでした。
「いやぁ!どんどん、デビュー曲がいい売れ行きだよ!」
どんどんには持ち歌ができました。『鮭なベィベー!』という曲です。しかし、その曲は演歌ではありませんでした。それでも、どんどんはその歌を一生懸命歌いました。
いつも沢山の拍手をもらうどんどんは、正真正銘の本物の歌手になれたのです。
すると、おじさんはどんどんに、こんな事を言いました。
「これで海に残して来た家族も、さぞ喜ぶだろうね。」
家族…………?海には家族はいません。どんどんの家族は、陸の家だけでした。すると、何だか陸やおじいさんが恋しくなりました。
「おいどん、陸に会いたいどん。」
何だかどんどんは、どんどんどんどん陸やおじいさんに会いたくなりました。
社長のおじさんは、少し考えて言いました。
「じゃあ、仕事が落ち着いたら会いに行くかい?」
「本当どん!?」
その後、どんどんは一生懸命仕事をして、どんどん拍手をもらいましたが、仕事は落ち着くどころかもっともっと忙しくなりました。
やがて、どんどんは忙しさに、心を亡くしました。
社長さんは忙しいどんどんのために、海を思い出せるように水槽のある飲食店に行きました。
すると、水槽の中から魚達のひそひそ話が聞えて来ました。
「あれが噂の人魚だよ。」
「人魚?今はもう人間でしょ?」
「魚から人間になったおかしな奴さ。」
どうやら魚の声は、どんどんにしか聞こえないようでした。
「食べられる側から食べる方になれて、さぞ気分がいいだろうね。」
「よっぽど食べられたくないんでしょうね。」
「それで本当に幸せなのかしら?」
どんどんは、水槽の魚達に、どんどんどんどん悪口を言われました。
「自分だけ生き残ればそれでいんだな。」
「共食いなんて最低~!」
「そのまま人間に成り下がれ最低野郎!」
我慢の限界になったどんどんは、大きな声で叫びました。
「うるさい!うるさい!だから海なんて嫌いなんだ!」
どんどんの様子に、社長のおじさんは驚きました。
「どうしたんだい?どんどん?」
それでも、どんどんは叫び続けました。
「お前達みたいな、ただの魚に何がわかるんだ!?」
そして、目の前に出ていた魚料理をひっくり返し、床に叩きつけました。
「お前達なんか、こうやって捨ててやる!!」
「止めるんだ、どんどん!」
「もう海になんか帰るもんか!」
こうしてどんどんは、人間になる事ができました。
しかし、人間になったどんどんは…………
どんどんではなくなりました。




