水族館から逃げ出すどん!
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それから何日が経ったでしょうか?どんどんの水槽は大盛況で、長蛇の列ができました。毎日、毎日、陸に似た子供達がやって来ます。
どんどんは子供達に話しかけました。
「陸はどこにいるどん?」
それでも、ガラスの向こうにどんどんの声が届く事はありませんでした。
すると、水面から声が聞えました。
「どんどん!昼食の時間だよ~!」
いつものように水面に上がると、おじさんにどんぶりを手渡されました。今日のお昼ご飯は牛丼でした。
「いただきますどん。」
どんどんは牛丼を一口食べると、ずっと気になっていた事をおじさんに聞いてみました。
「おいどんはいつ食べられるどん?」
おじさんは驚いて慌てて言いました。
「え?牛丼は気に入らなかったかい?」
「そうじゃないどん。牛丼は好きだどん。魚は皆、陸にあがれば食べられるのだとサメのおじさんに教わったどん。」
おじさんはまた大笑いしました。
「そうとは限らないよ。君の仕事は海の世界を見せる事だ。」
「海の世界?」
「僕達人間は海の中の世界を知らない。だから、珍しい海の生き物を見てみたいんだよ。だからみんな君を見に来るんだ。」
どんどんはスプーンを置いて考えました。ここにいれば、誰かに食べられる事はありません。お腹が空く事もありません。
でも、このままここにいていいのか?自分はここにいて幸せなのか?ここにいては演歌歌手にはなれません。
どんどんはここを出る事を決心しました。
「おいどん、やっぱり拍手が欲しいどん。」
「拍手?ショーをやりたいのかい?いいよ。考えてみるよ。」
拍手がもらえれば、人間になれるかもしれません。
それから何日かして、どんどんはアシカと一緒にショーをする事になりました。最初にどんどんは、みんなに海の歌を聞いてもらいました。
すると、誰も、何も、拍手はありませんでした。
アシカが見せる芸の方がよっぽど拍手をもらっています。
「今度は、陸の歌を歌うどん!」
どんどんは陸の家で覚えた、演歌を歌いました。
すると…………
とても沢山の拍手をもらいました。その拍手にどんどんは、どんどんどんどん嬉しくなって、どんどん歌いました。
しかし…………
いつの間にかお客さんがざわざわしてきました。
どんどんはやっと気がつきました。足が人間の足になっていて、どんどんは丸裸で立っていました。
「嘘つきー!!」
「変態!!」
「この詐欺師ー!!」
お客さんの罵声と共に、ステージには様々な物が投げられ、どんどんは走って逃げました。久しぶりの足に、なかなか上手く走れませんでしたが、精一杯走りました。
今度こそ海に帰ろう!!
水族館でショーをしたどんどんは、今度も演歌歌手にはなれませんでした。
こうして、水族館を逃げ出したどんどんは、指名手配犯になりました。




