1.異世界召喚
《███年前・エルフ領の森》
「はぁ、はぁ………」
森の中を走り、逃げる私を魔族...魔王が生み出した者達が追う。里は焼かれ、住民は私以外、皆殺しにされた。
「どこまで逃げる、我らの鍵となるエルフの娘よ。
大人しく我々にその身を捧げれば良かろう?至高たる我らが王、魔王様の礎となれることは、栄誉であろう」
「里の皆を……皆殺しにした貴方達に、私の力は……力だけは利用させない!」
「………やむを得ん、やれ」
「っ!!」
右足のふくらはぎに、痛みが走る。恐る恐る見ると、1本の矢が刺さっていた。
「その白銀の髪、星を閉じ込めたような青い瞳を持つエルフ族。貴様の辿る運命は既に決められている」
「運命?魔族が勝手に定めた運命になんて、従ってあげる訳がないじゃない」
「絶対に逃がさぬ。捕縛の雷鎚」
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁ!!」
足元に魔法陣が幾何学模様を描きながら展開され、不可視の鎖が足に絡み付き、動きを封じられる。
追いついた魔族の手が伸ばされ、恐怖に支配された私の額に触れる。
「やめて!触らないで!!」
「さて、機が熟すまで少し眠っていてもらおうか」
「何を……言っ、て……」
抗い難い眠気に襲われ、私はそのまま意識を手放した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
《現在・地球》
何とでもない学生生活。そんな昼下がりに僕、阿部翔衣は一人で机に座り外を眺めるいつも通りの日課を過ごす。
共に過ごす友が居ない訳ではない。そう、絶対にそうだ。
「やぁ、翔衣。一人で過ごすとは可哀想ではないか」
「別に。一人で静かに過ごしたいんだ」
クラスで一番の人気者、石河光が絡んでくる。彼は僕らの通う高校を首席で入学した誰もが憧れるエリートな優等生。余程暇なのか、やたらと僕に絡んでくる。絡まれる度に僕が『目立つじゃないかぁぁぁ!!』と内心叫んでいるとは知らずに。
その時、教室の床全面に巨大な魔法陣が現れ、一気にクラス中に混乱やパニックが起こる。
「皆!早く外へ出るんだ!!」
光が大きな声で叫び、皆が一目散に、そして我先にと扉の方へ駆け出し、群がる。
「おい、お前退けよ!」
「何が起こっているのよぉ……」
「誰だよ、扉が開かないように外から押さえているのは!!」
あーあ、更にパニックが起きているな……。ま、僕には関係ないし。
周囲がパニックになっている最中、僕はこの現象を分析していた。そう、これは『異世界召喚』の類では無いか、と。
突如、魔法陣がカッと光り、視界が白塗りになっていく。
まさか、あんな事になるとは考えていなかった僕は、『もしも異世界召喚なら、どう過ごそうか』なんて、呑気に考えていた。
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