121.鈴木機械工業
翔太の両親が経営している鈴木機械工業は辺鄙な地方都市にある町工場であった。元々は農機具修理といった周辺地域の農家などを顧客にしていた会社であったが、ほとんど仕事が無くなり従業員は老人ばかりであった。
だが現在は、人類と機械を最終的に融合させるスーツの開発に加担していた。そのため、翔太が知らないうちに工場が拡張されていた。これは競合各社ならびに周辺諸国の諜報機関に察知されないための措置で、翔太でさえ家が改造されているとは分からなかった。
鈴木家の古びた工場は、昭和時代に作られてから半世紀が経過し、令和時代になった今も時が止まったかのようであった。使わなくなったコンピュータの類が入っていない故障したままの製造機械、デットストックと化した厚い埃が被った在庫、そしてただ広いだけの空間に存在するそれらすべてがあった。
その一角にエレベータが設置されていた。これが地下空間に向かうもので、翔太もいつ作られたのか気が付かないものであった。そのエレベータから秘密研究所に行く事が出来た。実は、表向き秘密研究所の住所はここになっていて、運送業者に研究所の所在を知らせないために、一般の宅配や郵便物はここに送付されていた。
その日も郵便配達人がやってきた。工場はまともに稼働していないのに、ここ半年ほどは世界各地から様々な荷物が送られてくるのが不審であった。郵便会社もそのことは把握していたが、上層部から問題ないと通知されていた。
「ごめん下さい、郵便です。今日も沢山荷物をお持ちしました」
この地区を担当している藤井欣人は郵便車から荷物を降ろし始めた。ここには世界各国から様々な郵便小包が来ていた。その伝票を一枚ずつ確認していた。
「いつもご苦労様です、そこに並べてくださいね」
そうやって奥から出てきたのは白いロボットだった。そのロボットは夏の事務服を着ているが、メタリックなボディが露出している手足からも分かった。欣人はギョッ! とした。なんでロボットがいるんだと!
「すいません、失礼ですがあなたはここの事務員さんですよね?」
昨日、配達しに来た時は鈴木機械工業の四十代の奥さんが対応してくれたというのに、なぜロボットがいるのだろうか不思議であった。
「そうですよ! 今日からここを担当する次世代AI搭載ガイノイドのサユリといいます。鈴木は今日は出張しておりますので、対応しております」
その時欣人は思った。このままロボットに荷物を渡しても大丈夫かと。すると郵便車に置いていた携帯電話が鳴り始めた。




