105.本部へ(十)
「だから、こうして言葉を交わさずともあなたとお話が出来るのよ!」
理恵の顔が瞳いっぱいに広がったが、彼女はロボットそのものだった。それに無表情だし。
「つまりは・・・僕も理恵も電脳化されたというわけか?」
すると理恵は手を持ち上げて胸に当てさせた。彼女の膨らんだ胸は表面は弾力があったが、すぐ下は硬質なものに覆われているのが分かった。
「電脳化? いやだねそれ! なんかのSFアニメの設定じゃないのよ! それって違うわよ! あたいも翔太も脳ミソはね人間のままなのよ! それに、この胸の外骨格の下はね、理恵の生身が入っているのよ!」
その言葉になんだか悲しみの抑揚が入っているように感じた。
「ごめんよ理恵、悪かったよ。ところで基本的な事を聞いていいか? その外骨格とやらって、やっぱり機ぐるみなのか?」
それを聞くと今度は少し離れて全身が見えるようにポーズをとった。
「そうよ! あたいはねロボットを着込んでいるような状態なのよ! ほら介護用にマッスルアシストスーツってあるじゃない」
「確かほら、力仕事をするための補助スーツだろ」
「そんなスーツを完全に融合するような形で着ているのよ、あたいわね!」
それがパワードスーツのような機ぐるみという意味のようだった。
「じゃあ、その機ぐるみってどんなものか教えてくれよ!」
恵理に尋ねたが、メアリーの声が割り込んできた。まあそっちの方が詳しそうであるが。
「鈴木翔太君、いろいろ聞きたいのはわかるわよ。でも全て言っていたら時間が無くなるわ。取りあえず、あなたのインターフェイスは機能しているのが確認できたから、今日のところは帰ってちょうだい!」
そういわれ、恵理の手を借りて措置台を降りた。すると頭の中に綾先生の声が聞こえてきた。綾先生もインターフェイスによるネットワークに接続されていたのだ。
「お疲れさん、鈴木君。明日からはあなたは一緒に金城さんと行動するのよ! このラボに入るには毎日指定される場所に行けばいいのよ。そうすればインターフェイスがアクセスして入れるわ」
どうやらインターフェイスというのはラボに入るETCシステムみたいなもののようだ。僕は外見は鈴木翔太のままで組織の構成員にされたというようだ。
「先生、万が一拒否したらどうなります?」
軽い気持ちで聞いてみた、すると・・・
「それは出来ないわよ! インターフェイスに信号を送ってあなたの行動を操作するのは容易いからね。だから悪い子にならないでね」
本当にインターフェイスというのは恐ろしいもののようだ。意識を監視するだけでなく操る事もできるようだ。




