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魔王は音楽をする
俺は本を読んでいる。
クラルテとプロミネはもう寝ている。
プロミネは睡眠が必要な魔王らしい。
俺は独り、静かな空間で本を読む。
夜は深く、外の喧騒が嘘のように静かだ。
たまに、酔っ払いが歌う音痴な歌や魔物の遠吠えなどが聞こえる。
それ以外は本当に静かで、目を閉じれば自分だけしかこの世にいないんじゃないかと、錯覚しそうになる。
俺はそんな想像から、意識を本に戻す。
すると音が聞こえてきた。
すー
この寝息はクラルテのものだろう。俺が本を読んでいる時によく聞く。
ぐがー
これは残りの一人、プロミネだ。
とても豪快な寝息というよりいびきといった感じがする。
ぱち
これは俺の合いの手だ。最近本で、音楽は魂に響くと書いてあった。
俺は合いの手を続ける。
すーぐがぱち
すーぐがすーぱち
すーすぐぐがーぱち
ふむ。
結構いい気がする。
俺は二人が起きる前に合いの手をやめる。
俺はまた本に目を落とした。




