最終話
「えー?私達操られてたんだ。知らなかった。」
きょうりんは病院を後にした後、コロラドと談笑していた。
「そうだね。まさかあの橙さんが学校自体乗っ取っていたなんて。いつの間にか首の後ろに変なものつけられてるとは。」
「びっくりよねー。そう言う記憶も全部カットされてたんだもん。でもなーんも変わらなかったけど。」
「学校の再開が一週間後なんだよね。稼げないのは痛いけど。ねえどっか旅行行こうよ!」
「いいの?さきゅばすさんにお見舞いしなくて。」
「さっき会ったからいいよ!動いてるし。すぐ退院できるみたいだし。ねえ行こうよ!」
「うん。」
2人は手を繋いで、相変わらず幸せそうにお互い見つめ会って笑っていた。
「すごく騒がしかったね。」
桃子は、さきゅばすの病院にいて、ベッドにいる彼女に話しかけた。
「そうね。相変わらず。」
「…少し髪切った?」
「目が覚めたら髪の先がチリチリしてたの。みっともないでしょ。」
髪を結んでないさきゅばすの髪は少し短くなっていた。
「…。」
「また目が腫れてるわ。桃子さんって泣き虫ね。」
「さきゅばすさんがクールなだけだよ。悲しくないの?」
「悲しいわ。とても。最愛のロボットがいなくなっちゃったんだもの。」
「火事の中、さきゅばすさんに覆いかぶさって…。」
「また泣くの?イケメンクールキャラはなんだったのよ。」
「最期のミシルちゃんの想い考えたら…バッテリーは完全に切れてたのに、それでもずっと耐えていたんだって聞いたらね。それほどさきゅばすさんを守りたかったんだと思うと…。」
「…。」
「聞いてない?」
「え?」
ボロボロに泣き出す彼女は、さきゅばすの言葉に頭を上げた。
「ミシルちゃんのデータのチップが見つかったの。」
「そうなの!?」
「ええ。一部分なら、復活できるわ。彼女の潰れた頭の中の小さなデータが生きてたの。」
「じゃあ、ミシルちゃんをまた再生できるって事?」
「ええ。できると思うわ。彼女の記憶だと、私がミシルちゃんと会った頃くらい。けど、ミシルちゃんを作ったらまた私達争うんじゃない?」
「そうだね。でもそれも日常だから。」
「日常ね…。」
「私とさきゅばすさん、好みが似るね。」
「天使と悪魔みたいに違うのにね。」
「ううん。さきゅばすさんは優しいよ。私達を逃がしてくれたり、宮桜の為に泣いてくれたり…。」
「…。」
「私も本当に大好きだったんだ。彼女の事。さきゅばすさんもそれくらい好きだったんでしょ?」
「…昔は、大好きだったわ。確かに、すべての目的は彼女への当てつけよ。桃子さんの血をいただこうって思ったのも、私が変わりたかったからなのかも。」
「昔の元の自分に?」
「そう。でも、私が桃子さんみたいになったら今までの罪の重さに耐えられなくなる。私がいくらあいつの血で汚されても、私が自分の意思で行動したことには変わりないんだから。」
「戻りたいと今は思わないの?」
「わからない。決心がつかない。」
「そっか。」
「私、ミシルちゃんを復活させたらどうなるのかしら。」
「どうなるって?」
「ううん。なんでもないわ。桃子さんが望むならミシルちゃんを復活させてあげるわ。」
「本当?嬉しい。」
「鼻血塗れで頑張ってくれたからね。」
「恥ずかしいな…。」
桃子は照れ笑いをした。
「…。」
そのまた1ヶ月後…
「…よし。」
さきゅばすは完璧に治した自宅で、ミシルを完全に再現させた。
そして、ミシルの唇にキスをしようと顔を近づけた。
「…。」
しかし、唇を寸止めして、まじまじとミシルの顔を見つめた。
「ごめんねミシルちゃん。私がもし悪いことをしたらあなたが止めてくれる。あなたが、私を浄化してくれるはずよ。」
さきゅばすは自身の二の腕をキュッと握った後、ミシルの新しい柔らかい顔を優しく撫でた。
「私は臆病者よ。元に戻ったら、ミシルちゃんのことも好きじゃなくなるかもしれない。あなたを手に入れられるなら、悪魔の羽が生えたって構わないわ。私を自然に選んでみて。ミシルちゃん。」
そう言うと、さきゅばすは、ミシルの唇に優しくキスをした。
「…ここは?」
ミシルは目を覚まし、目の前のさきゅばすを見た。
「おはようミシルちゃん。学校へ行きましょう。遅刻するわよ。」
さきゅばすはいつものようにミシルの手を引っ張った。
おわり




