三十四話
ミシルは休み時間、一人廊下を歩いていた。
手には一枚の手紙が。
差出人不明の手紙は屋上へ来いと言う内容の手紙だった。
「…。」
ミシルはさきゅばすに何も言わずに屋上までの階段を上る。
手紙にもそう書いてあったからだ。
ガチャ
今日も晴天。
風がスカートをふわっと少しめくると、その柵の前に一人の少女がいた。
「宮桜さん…。」
ミシルは驚いた。
まさかあのロボット嫌いな彼女が呼び出すなんて。
「…。」
ミシルは一気に緊張した。
言われることがあるならば、桃子さんに対してだろう。
「あ、ミシルさん。よく来てくれたわ。」
「なにか、用ですか?」
「…。」
宮桜は思い詰めた顔で顔をふせた。
てっきり怒りの剣幕も覚悟していたので、拍子抜けだ。
「桃子の事、傷つけないで。それから桃子の事、よろしくね。」
「え?」
「桃子、あなたの事が好きみたいだから。」
「どうしたんですか?何か思い詰めてませんか?」
「私のせいなの。あの人がここに来たの。」
「…橙さんですか?」
「そう。私がさきゅばすやあなたが悪い事企んでると思って、彼女を呼んだの。でも、彼女はそんな実行をするよりも、この学校を研究施設の拠点にするつもりなのよ。きっと今学校に通ってる子達もきっと彼女の実験に使われるわ。」
「そんな話が?今すぐにさきゅばすちゃんにも伝えないと。」
「分かっていると思うわ。私がいけないの。橙がこの学校を乗っ取る目的もさきゅばすがここにいたからだと思うの。さきゅばすは、立派な研究員だったから。」
「研究員?」
「私が彼女にさきゅばすの居場所を教えたのもいけなかった…。」
宮桜は目を押さえ目に涙を流した。
「どうにかできないんですか?」
「私には力がない。分かっていることは、彼女に消されることよ。」
「消される…?」
「だからお願い。ロボットの心優しいあなたなら桃子を守っていけると思うの。彼女は全然関係ないわ。こんな前の職場のいざこざに巻き込むことになるなんて…。」
「…。」
「私、昔さきゅばすの恋人だったの。」
「え?」
「橙の血を輸血する前のさきゅばす。ほんとに優しい彼女だった…。」
「今でもさきゅばすちゃんは飲みたがってる。桃子さんの血…。」
「本当?ならそうかもしれない。彼女、戻りたいんじゃないかって…。」
「戻りたい?」
「桃子の血を沢山飲んだら、元の優しい性格に戻るかもしれないって。」
「さきゅばすちゃんは。あんな風じゃなかったんですね。」
「そうよ。きっと、あなたを遣って桃子に近づくのも魂胆があるに決まってる。もし彼女が本気になれば、桃子の血なんかすぐ飲めるのに。」
「…。」
「よろしくね。ミシルさん。」
宮桜はミシルの手を強く握った。
「ロボットは嫌いじゃないんですか?」
「嫌いよ。何もかも滅茶苦茶にしたから。でも、ミシルさんは好き。」
今まで見たことのないような可愛らしい笑顔でほほ笑んだ。
「じゃあね。このことは内緒よ。」
「何でも言ってください。私協力します!」
「いいの。消えるとか言ってごめんね。本当はそんな事ないから。」
「本当?」
「うん。じゃあね。話聞いてくれてありがとう。」
彼女はそう言うと、その場から立ち去った。
「…。」
ミシルは胸に大きな不安を抱いた。
彼女があんな事言いうなんて、相当な事があるんだろう。
ミシルが戻る頃には、授業はとっくに終わっていた。
席に戻ると、さきゅばすが不思議そうな顔してこちらを覗いていた。
「何してたの?授業をサボるなんて珍しいわね。」
「うん…あの、さきゅばすちゃん。」
「何?」
ミシルは何か言いかけたが、宮桜の約束を思い出してに口を紡いだ。
「何よ?」
「ううん。」
「何よ言いなさいよ。ほら。」
さきゅばすの顔が思いっきり近づく。
「私は桃子さんを守りたい。」
「急にどうしたの?」
「約束したの。さっき。桃子さんを守るって。」
「そう。それは大層な約束ね。」
「桃子さんも、宮桜さんも守ってあげたい。」
ミシルはそうさきゅばすに強く言い放った。




