二十七話
そして、その日がやってきた。
その日は学校の授業は一切なく、文化祭のように人が集まる。
この学校の女子学生達は今日のために各々用意した仮装用衣装に身を通す。
「やだ!!可愛い!!」
化粧室内
きょうりんは先に着替えたコロラドのアリスに目を奪われていた。
彼女だけでなく、そこにいた全員その可愛さに目を奪われた。
「恥ずかしい。」
コロラドはもじもじとしている。
青を基調とした膝丈のドレスに、白いニーソックス。そして手にはわざとらしいうさぎのぬいぐるみと頭にうさぎのカチューシャ。
「こんなの子供が着る服よ。私が着るなんて。」
「中学生なの忘れないで。これはデートもらったわね。桃子さんも出ないし。」
きょうりんのニヤニヤは止まらない。
「きょうりんの格好も凄くセクシー。」
「ミニスカポリス。いいでしょ?」
とても中学生とは思えないきょうりんは、太ももより上の超ミニスカを履き、大好きな黒で固めた。足元は素足に赤いヒールだ。
胸の谷間もぱっくり開いて、何のポリスなのか定かではない。
頭にはリボンではなく婦警さんの帽子をちょこんとつけていた。
「きょうりんなにそれ!」
「エロすぎ!」
「もう!何の大会か分からなくなるでしょ?」
化粧室内では笑いと戸惑いの声が彼女に向けられる。
「似合うでしょ?」
と、手錠と拳銃をコロラドに向けた。
「似合うよ。こんな格好着れるのきょうりんくらいだよ。私じゃ絶対出来ない。」
コロラドはその格好に素直に感動する。
「さ、出ましょ。あの2人の格好を見に行くわよ。」
「あ。」
外に出るのを怖がっていたコロラドはミニスカポリスに手を引っ張られ2年教室に向かう。
その間も2人は特に目立つようで、道行く仮装した女の子達の注目の的だった。
「恥ずかしい…。」
コロラドはほぼ目を瞑っていた。
「お姉さま!!」
2年の教室にズカズカと入るきょうりん。
そこには席に座る仮装した2人がいた。
「きゃー!お姉さま可愛い!!イメージそのまんま!」
「でしょ?」
さきゅばすは席を立つと色気むんむんに、きょうりんにウインクした。
紫を基調に、フリルのついたドレスを着込む彼女はお茶目な小悪魔といった感じだ。
矢印型のしっぽが可愛く、悪魔のツノのカチューシャもお茶目だ。
胸が割と強調されたデザインと、網タイツが彼女の色気を最大限に引き出している。
「血を吸って。お姉さま…。」
「嫌よ。私は彼女の血を吸いたい。」
と、可愛すぎるコロラドを見た。
「そんな事したら逮捕しますわ!」
「何よその攻めすぎの格好。ただの破廉恥ポリスじゃない。」
「私の体綺麗でしょ?」
「まあまあよ。」
「ミシルちゃんも立って。」
きょうりんに促されたミシルは、お手製の星の杖を持ったまま立ち上がった。
比較的露出が制限された彼女は、白をベースにまるで控えめなウエディングドレスに羽が生えたように清楚一直線だった。
「可愛い!でも露出足りないわ。」
「あんたが何するか分からないから。可愛いでしょ?羽もついてるの。」
と、背中の小さな羽を見せた。
「やだー!撃ち落としたい!」
きょうりんは拳銃をミシルに向けた。
「この悪魔があんたの体に弾を跳ね返してやるわ。」
「ふふ。やってみなさいよ!それでも勝つのは私達!」
きょうりんは舌を出して挑発をした。
「…。」
一方、奥の席で1人でいる宮桜。
今日は桃子は来ていない。
ミシルはその悲しそうな彼女の横顔に同情した。
「ほら始まるわよ。」
ぞろぞろと移動する仮装集団。
やはり参加者は多い。
体育館に着くと、カメラを構えた人々がわらわらと押し寄せていた。警備員監視のもと真ん中には大きなダンス会場ができている。
「楽しみましょうミシルちゃん。桃子さんはいなくて残念だけど。」
「うん…。」
皆配置についてダンスが始まる。
仮装した女の子達が大きなサークルを作ると、カメラのフラッシュは眩しいほどにたかれた。
音楽が流れると、放課後たまに来て、ダンスと流れを覚えた彼女達はそれぞれ踊り始める。
民謡に合わせた可愛らしい民族衣装を着る子や、はたまた男装を楽しむ女の子。今回一番多い、いろんな制服のメイドやクマの着ぐるみを着た面白おかしな格好の人もいる。
「ミシルちゃんしってる?この学校の収入ってこういうイベントがほとんどなのよ。なんか、学校って言うよりいやらしいお店みたいよね。」
さきゅばすはそう言ってミシルの手を強く握った。
「私はこの瞬間、誰かに撮られてると思うと興奮するわ。あなたと踊ってる瞬間を知らない人に後でじっくりみられるのって…。ふふ。」
「眩しい。」
「じゃあ目を瞑って。」
「うん…。」
踊りながら、ミシルは目を瞑った。
「好きよ。ミシルちゃん。」
と、踊ってる最中にミシルの唇にキスをした。
「!」
ミシルは驚いて目を開けた。
すぐにさきゅばすは離れると、ダンスの振り付けに合わせまた顔を近づけて笑う。
「今のも誰かに撮られたのかしら。」
と、耳元にくすぐったいボリュームで囁いていたずらに笑った。
「やらしいわお姉さま。」
隣で踊っていたきょうりんはボソッと呟いた。
「あんたが言わないでよ。」
ダンスが終わると、次は衣装コンテストだ。
登録していた自信に満ち溢れた何人かが審査台前に並ぶ。
ちなみに判定するのは仮装している女の子達だ。
桃子がこの場にいたら、間違いなくぶっちぎり優勝だっただろう。
エントリーナンバー1!
そらい、ブルジョワペア
テーマはメイドと執事!
ペアになった2人が体育館の表彰台のような所に立つ。
彼女らが可愛いポーズをとると、カメラのフラッシュは一層眩しく光る。
そして、衣装コンテストに参加しない女子中学生達は紙に一人一人10点満点の中で点数をつけていく。
「ナンバー4!きょうりん、コロラドペア!セクシーミニスカポリスとふわふわアリス!」
きょうりんとコロラドは台座に乗り、ポーズを決めた。
「みんな私をみてー!」
きょうりんはカメラの音がするたび慣れたようにポーズを決めた。
「まったく、あの子は。」
さきゅばすは呆れていた
「いよいよ私たちね。」
「うん。」
ミシルは緊張気味に台へ向かう。
「エントリーナンバー10番!さきゅばすとミシル!悪魔と天使!」
2人は名前を呼ばれた瞬間台に乗った。
すると、大きなフラッシュがたかれた。
「ミシルちゃん。可愛いポーズをするのよ。」
「可愛いポーズ?」
ミシルはぎこちなくポーズを決めた。その多い光の点滅に惑わされる。
と、その時
「きゃ!」
バタン!
ミシルは台から足を滑らせた。
そしてみっともなくそのまま1メートル50センチ下へ落ちた。
「ミシルちゃん!!」
さきゅばすが近づこうとしたその時、
「大丈夫かい?」
「え?」
誰かが彼女に近づいた。
ミシルが顔を上げるとそこには仮面とマントを付けた誰かがこちらを優しく見下ろしていた。
そしてその人が誰だかすぐにわかった。
「桃」
「内緒。」
あの時のように唇にまた人差し指が当てられる。
「可愛い天使だね。ミシルちゃん。」
「…。」
ミシルはその仮面の向こうの優しい瞳に目を奪われた。
そして、騎士の格好をしてマントと仮面を付けたその人は、とある場所へと向かう。
大体その人が誰なのか、もしかしてと気付いた周りは連鎖に黄色い歓声をあげる。
「あれ、桃子さん?」
「嘘?不審者じゃなくて?」
「でも誰も止めないわ。」
「桃子さんよ絶対!!」
過去にそのような事件があったが、今は強化された警備の中では誰も動かない。
その状況に安心したのか、彼女達は御構い無しにはしゃぎ始める。
そして、その騎士は女子中学生の人混みの中からとある1人の元へ向かった。
「お姫様。私と踊っていただけませんか。」
と、おとなしく座っていた宮桜の前に立った。
照明も予定調和だ。
宮桜はシンプルに白のドレスを着込み、その差し出された手を握った。
ちなみに桃子目的だった親衛隊と他の過激派は来ていない。
「喜んで。」
すると、体育館に優雅な音楽が流れた。
2人は手を繋いで、まるで中世のヨーロッパのようなゆったりとしたダンスを踊り始めた。
「なによ…これが最後の演目?」
きょうりんは頬を膨らませた。
完全に持っていかれたのだ。
2人は手を繋いで踊り始めた。
それに息を吹き返したようにカメラ小僧達はシャッターを切り始める。この日一番のシャッターの量と光が目をくらませる。
その2人の優雅さと仮面をしていながら隠せない輝きに皆心を奪われていた。
「やるわね。桃子さん。」
「…。」
さきゅばすの隣にいるミシルもその踊りをうっとりしながらみていた。




