二話
「退屈だなぁ。そう思わない?」
さきゅばすちゃんはクラスでできているハーレムにため息をついた。
相変わらず桃子さんの周りにはハーレムが出来ている。
みんな彼女とあわよくばを狙っている。
女の嫉妬とは恐ろしい。
この間、違う女の子を取り合った違う学年の女の子達が殺し合って、片方死んだ。
不死身が死ぬなんて悪意に満ちた攻撃をされない限りあり得ない。
「私もパートナー欲しいけど、一人に絞るのは嫌なのよね。だってたくさんの血を味わいたいし。すぐ飽きちゃうし。というか馬鹿みたいじゃない?なんで他の子に手を出しちゃ駄目なの?昔の人類みたいに子供産めないのに。」
さきゅばすはミシルの席の隣でぶつぶつ文句を言っていた。
「…。」
ミシルは胸に手を当ててみる。
隣のさきゅばすちゃんとなんの遜色もない手や身体。
そして、桃子さんに対する思い。
「でも私の好きなタイプって、ミシルちゃんあなたよ。顔がすごく好き。あーあ、ミシルちゃんの身体に桃子さんの血を流せたらなぁ。ミシルちゃんも私のこと好きでしょ?」
「うん。いいお友達。」
「友達だなんて!そんなお堅いこと言わなくていいよ!私はもうパートナーだと思ってる。その話、嘘だと思う?私は結構本気にしてるのよ。」
と、ミシルのお腹に抱きついて彼女の頰にまた何回もキスをした。
「ロボットは歩くだけの数合わせじゃないわ。不死身が一生輸血タンクになれば、あなたはずーーーっと不死身として生きていける。どう?」
「私が不死身に?」
ミシルの目は輝いた。
頭のプログラムでは、不死身に手を出さない事と、彼ら彼女らを尊敬する事。
その二つが重点的に埋め込まれているデータだ。
だがミシルだけでなく、ほとんどのロボットも同じ気持ちかもしれない。
不死身と見た目の変わらないあの可愛いあのロボットの子も、実はパートナーが欲しいのかも。
でもわからない。
今の私の頭の中がショートしているのかもしれない。
「おはよう桃子。」
すると、桃子を囲うハーレムの教室に一人の三つ編みのセンター分けの女の子がやってきた。
桃子はそれを見ると、他の不死身の女の子達とは違う表情を見せた。
「おはよう。宮桜。」
「おはよう。」
宮桜と呼ばれたその三つ編みのセンター分けの女の子が来るとハーレムは静かになり、散った。
「相変わらず人気者ね。浮気しちゃダメよ。」
「あはは。浮気はしないよ。」
見せつけて来る二人に地団駄を踏みたそうなハーレム軍団。
さきゅばすはそれを見てまた退屈そうな顔をした。
「嫌ねえ。あの女。わざとやってる。」
「…。」
何故かロボットなのにその光景に胸がキュッとなる。
何故なんだろう。
「ねえねえミシルちゃん。ムカつくでしょ?一度も触ったこともない桃子さんに触りたいでしょ?お話ししたいでしょ?」
悪い顔をしたさきゅばすは彼女の耳にそう囁いた。
「私はロボットだから…。」
「いいえ、恥ずかしいことじゃないの。だって今の人口もうすぐ不死身の数とロボットの数が逆転する。この意味わかる?そのうち世界はロボットのものになると思うの。」
「そうかな。」
「そう。ロボットに恋をするなんてダッチワイフに恋をするのと同じなんて言う奴を殺してやりたい。自分らだって生殖機能も無いのに。」
「でも、いいのかな。」
「うふふ。夢を見せてあげるわミシルちゃん。大丈夫。法には触れないようにするから。」
と、さきゅばすはまた悪い微笑みを浮かべた。