十七話
残り4日。
ミシルは深いため息をついた。
まだあのチケットはきょうりんの手の内にある。
このまま正直にさきゅばすに言おうか迷っていた。
「ねえミシルちゃん。明日お休みだから一緒に水着買いに行こう。」
さきゅばすは放課後、ミシルの手を取って嬉しそうに笑っていた。
こんな彼女の顔を見ていると後に引けなくなる。
「う、うん…。」
「明日お昼に集合ね。」
残り3日
「お待たせ!」
お昼時、学校近くのショッピングモールの前で待っていると、さきゅばすがやって来た。
短い丈の白いワンピースに、黒い短いブーツ。
そして、首元に悪魔のしっぽのマークがついたチョーカー。
さきゅばすらしい格好だ。
「どう?可愛いでしょ。」
「派手だね。」
「今日は抑えめ。ミシルちゃんもその格好可愛いじゃない。地味だけど。」
ミシルの服装は対照的に、肌の露出を極限まで抑えた格好だ。
白いブラウスに、私立のお嬢様が履くような、紺の膝丈のスカート。
足元は白い靴下に白のスニーカーだ。
対照的な二人が腕を組んで中へ入っていく。
「こっちよ。」
さきゅばすに腕を引っ張られ、ショッピングモールの中を歩く。
今日は祝日。人が多い。
さきゅばすの目指す方向には派手目の店舗が多い。
ミシルはそれに目移りしていると、とある店の前で足を止めた。
「ここ!」
そこは水着専門店だった。
なにやら派手なものが多い。
「ねえねえ見てみて。」
さきゅばすがミシルの体に当てた水着は、ピンクのドットが派手な水着だった。
「これ、おしり見えちゃうよ。」
「ねえこれ見て可愛い!」
さきゅばすはまた違うものを選ぶ。
「大事なところ見えちゃうよ。」
「本当ね。こんなもの着せちゃったらミシルちゃんが襲われちゃう。」
「…。」
「ここら辺が上等ね。」
と、白のシンプルな水着をミシルに当てた。
「どう?」
「…さきゅばすちゃん。あのね…。」
「これでいいわね!じゃあ私も買おう!!」
「…。」
今まだ渡せてないと言ったら、とんでもないことになりそうだ。
「ねえねえ見てみてこれ。」
相変わらず派手な水着を物色している。
さきゅばすの方が長くかかり、試着も含めて一時間かかった。
「はいこれ。」
「ありがとう…。」
さきゅばすが彼女の手に袋を渡した。
「…。」
「アクセサリー買おうかな。リボン新しいのが欲しいのよね。」
「さきゅばすちゃん。今なら間に合うかな。」
「何?」
ミシルが突然ショッピングモールのど真ん中で立ち止まった。
「ん?」
「ごめんね。さきゅばすちゃん…本当は、本当はチケット渡せてないの。」
「んん?」
「桃子さんに渡そうとしてたんだけど、その、一枚無くしちゃって…。」
「大丈夫よ。」
「え?」
「チケットの事は大丈夫。桃子さんに先に言っておいて。一緒に行こうって。」
「でも…。」
「任せなさい。」
「…うん。」
ミシルは訳も分からず頷いた。
「アクセサリー買うから付き合って。」
さきゅばすは得に気にせず、そのまま楽しい買い物が続いた。
残り2日
「ふんふん~。」
その日の朝
きょうりんは上機嫌で廊下を歩いていた。
「きょうりん!!」
すると、彼女の目の前にあの親衛隊メンバーが現れた。
彼女の周りを囲むと、いきなり7人がきょうりんに襲い掛かった。
「きゃ!!なにするのよ!!エッチ!!」
「チケット渡しなさい!!」
きょうりんは両手を壁に押さえつけられ、ポケットにあったチケットを強引に取られた。
「もらい!!私のよ離しなさい!!」
「これ行きたい!!」
「私が行くのよ!!」
「明日じゃない!水着買って来よう!!」
親衛隊達はそれを取り合っている。
「ちょっと!!それ私の!!!」
と、きょうりんが手を伸ばした時だった。
「あ。」
彼女の足元から何かが通った。
見ると、ラッキーベアがその親衛隊の集団に飛び込んでいく。
それに気づいたきょうりんはそこから離れることにした。
「やばい。お姉さまに殺されちゃう。」
と、その時だった。
「きゃああ!!?」
その集団から悲鳴が聞こえた。
見ると、チケットを持っていた一人の女子の片方の腕が無くなっていた。
大量に血を流し、崩れるメンバーの中の彼女。
きょうりんはそれではなく、その腕を咥えて逃げていくクマを遠目から見ていた。
「すごい性能ね。お姉さま…。」
きょうりんは生唾を飲み込んだ。
「ふふご苦労様。」
‐目的完了。‐
クマはそう言うと、さきゅばすの足元でお座りをした。
彼女はその腕を掴み、まだ中から出ている血を飲む。
「うーん。美味しくないわ。」
と、適当に体育館の裏から柵の外へ投げた。
「あの、桃子さん。この間の話の続き聞いてもらってもいいですか?」
その騒ぎの約五分前、ミシルは意を決して桃子にアタックしていた。
「ん?どうしたの?」
「私と明日、プールに行ってくれませんか?」
「明日?ずいぶん急だね。」
「本当はあの時言いたかったんですけど…。」
「二人でって事?」
「はい。チケット二枚なんです。ぜひ桃子さんと一緒に行きたくて…。」
「桃子。」
「!」
すると、廊下で話していた二人のもとに宮桜がやってきた。




