十四話
「あれ?おかしいな。」
桃子は戻ってくると、すぐにバックの異変に気付いた。
「何?」
どこかに行っていた宮桜もその桃子の異変に気付く。
「ここについていたラッキーベアがいない。」
「ほんとね。朝にはいたのに。誰かに盗られたんじゃない?」
「…。」
桃子は残念そうな顔をして着席する。
鞄の取っ手の隙間にキーホルダーの鎖が引っかかっていた。
「…。」
いつの間にか戻っていたミシルに声を掛けたかったが、宮桜がいる手前それはできなかった。
すると、昼の休憩が終わるチャイムが鳴る。
一時間の授業がまた始まっても、さきゅばすとアネルは何故か戻ってこなかった。
「ミシルちゃん!!!」
「!」
放課後、さきゅばすは教室に戻ってきた。
その手にはクマのぬいぐるみがあった。
「これは…?」
「ふふ。私が取った最初のクマのぬいぐるみよ。」
と、完璧に治ったクマのぬいぐるみを彼女に渡した。
「壊されちゃったんでしょ。話伝いに聞いたわ。」
「…。」
「どうしたの?」
「私が持っていると、この子はまた壊されちゃう。」
「大丈夫よ。その点はね。」
と、さきゅばすはラッキーベアをミシルの手元に置いた。
「え?」
その瞬間、ラッキーベアは動いた。
机をその柔らかい足で歩き始めた。
「これ、どうしたの?」
「うふふ。ミシルちゃんのために私、さっきまでラッキーベアに細工しておいたの。それに、壊されることもないの。」
「どういう事?」
「もし壊そうとするとね、この子がそれを自ら拒否するの。」
「そうなんだ…。」
「それにね。おーい。ももちゃん。」
さきゅばすが声を掛ける。
‐ご機嫌用。さきゅばすさん。‐
そのクマが機械音で話し出した。
「え?凄い。」
「でしょ?ミシルちゃんのためにしてあげたの。ミシルちゃんのデータも入れておいたから。声かけてみて。」
「ももちゃん。」
ミシルがそう声を掛けると、ももちゃんは二足を回転させてミシルに向いた。
‐ご機嫌用。ミシル。‐
「か、可愛い…。」
ミシルの顔がふやけた。
「でしょ。これでもう壊されないから安心して。それに登録した人物の元に自動で帰ってくるの。一人でお散歩もしたりするの。」
「可愛い。ありがとう。さきゅばすちゃん。」
「私はミシルちゃんのその顔が見たくてやってるだけだから。喜んでもらえてよかった。」
「うん。大事にする…。」
ミシルの悲しそうな顔がようやく笑った。
「残念なお知らせなんだけどね…。」
さきゅばすは急に顔を暗くさせて思い詰めていた。
「なに?」
「アネルちゃん壊れちゃったの。」
「アネルが?どうして?」
「前々から異常をきたしてたんだけど。ついに壊れちゃって。ごめんね。私の力でも直せなかったの。」
「そっか…。」
「このクマにアネルちゃんの一部を入れたの。だから大事にしてね。」
「うん…。」
ミシルはそのクマに頬ずりをした。
‐ミシル、大好き。‐
「アネルちゃん…。私も大好き。」
「肩に乗せておけばいいわ。」
さきゅばすはそう言って笑った。
「桃子さん。」
「あ、君。」
宮桜と別れた帰り道、またきょうりんが彼女の前に現れた。
「きょうりんって呼んでください。」
「きょうりんごめん。ミシルちゃんの事ほったらかしで。」
「いいんです。私もあっちにいると思ったんですけど。」
「すれ違いだったみたいだね。」
「残念です。桃子さん、あの後ミシルさんを連れて来てもらえると思ったのに。」
「ちょっと今それが出来なくて。」
「宮桜さんですか?」
「…うん。」
「大変ですねえ。束縛の強い子で。私なら耐えられないです。」
「いや、私が自覚が足らないだけだと思う。彼女は悪くない。」
「どうして彼女と付き合っているんですか?」
「彼女、付き合う前から泣いてたんだよ。あれでも前よりは笑うようになったんだ。」
「へえ。そんな子が好きなんですか?」
「気になるっていうか、ほっとけなかった。声を掛けたもの私からなんだよ。」
「以外。ずっと彼女からだと。」
「私には笑ってくれるんだ。それがうれしくて。」
「ふーん…。」
「きょうりんは好きな子いる?」
「桃子さん…て、言いたいところなんですけど。最近もう一人気になる子が出来たです。」
「誰?」
「…桃子さんはロボットと不死身の間に境界線作ってます?好きになれます?」
「恋愛対象として?」
「はい。私は無いと思ってます。それに大好きなお姉さまを嫉妬させたい。」
「お姉さん?境界線かあ。考えたことなかったかも。」
「じゃあないんですね。恋愛感情とかそういうの。」
「うん。今の所はね。」
「じゃあ、ミシルちゃんをとってもなんとも思いませんか?」
「ミシルちゃん?」
「はい。」
きょうりんは桃子に顔を近づけてニタリと笑った。




