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堕ちた聖女の聖遺物

────わたくしはただ、愛されたかった。


聖女として崇められたかったわけでも、不思議な力で人を救いたかったわけでもない。

一人の女として、人間として、娘として、愛され愛したかった…………けれど、わたくしは愛しかたを、愛されかたを知らなかったわ。

いままでなかったもの。

それがてに入る地位にいるのに、それはなぜか手が届かない。


「オールドローズ、僕の薔薇姫、ローズ!」


そう言ってわたくしに微笑みかけてくれた…………はじめて好意を抱いたあなたに、爪をたてることしかできないまま!

わたくしはどうすればいいの?

愛しかたなんて、知らない。

愛されるなんて、知らない。


「大丈夫、ローズはローズのままが一番だよ。知ってる?薔薇はね、綺麗だからこそ棘があるんだよ。自分を守るために。ローズは、今のままで…………棘まで含めてローズだよ。愛しかたがわからないことなんて、ないし愛されてないなんて嘘だよ。だって、僕はローズを愛してるから。力なんてなくても、ローズはローズ。僕の薔薇姫だよ」


あなたは、そう言ってわたくしを抱き締めてくれたわ。

愛されるって、愛すって、知ったの。わたくしにとってあなたは光だったわ。

けど………………………


「イオフェイル!わたくしのイオ!!」


教会はわたくしの力が失われる……つまり、イオフェイルとわたくしが結ばれることを恐れ、わたくしが清らかなる乙女でなくなることを恐れ、わたくしからイオフェイルを奪ったの。

わたくしから、唯一の光を!!

わたくしのせいで…………わたくしのせいでイオフェイルは帰らぬ人となった。

わたくしと、強欲なる教会の連中のせいで。


「堕ちましょう、あなたとどこまでも。わたくしはね、骸まであなたに寄り添うわ。聖人として残るわたくしの聖遺物は、あなたを産んでくれたあなたの一族…………ブルーシャトー家の、あなたの妹の家系にしかわたらないよう、呪いをかけるの。聖遺物は、時を越えてふさわしい姿にきっとなる。それがわたくしの教会への復讐。力のある聖遺物なんて残してあげない。代わりにね、滅びをあげる。短命の呪いと、ゆるやかな滅びの呪いを」


わたくしは、あなたとしかいない。

わたくしには、あなただけなの。






──────一夜の間に教会を恐怖のどん底に陥れ、償いの業火で組織を根本から潰した聖女・オールドローズ。

闇に堕ちた聖女は、教会を滅ぼした。

そして……………最強と呼ばれた彼女の、強い力を秘めるであろう聖遺物は、いまだに見つかっていない。

一つの仮説としては、想い人であったイオフェイルという名の青年の一族が管理を任され、所有しているとのこともあるが、定かではない。




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