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10:『中学時代に付き合ってた彼女がいました。今も昔も嫌いです』

 なんでこいつが…生徒会室前に……

 どうも、石上直也です。


「佐渡会長、これは一体どういう事ですか?」


「なにって、下見よ下見。明日、学校で迷子になられても困るからね。前日の内に、うちの学校の構造をある程度理解してもらおうかと思ってね」


「はあ…さいですか」


 チッ、余計なことを……


「ねえ、直也くん。よかったらこの学校を案内してくんない? 私まだ分かんなくて☆」


 ☆うぜぇ…ぶりっ子うぜぇ……

 こいつは昔からそうだ…下心見え見えだし、この可愛い外見で何人もの男を虜にして利用してアクセサリーの如く扱う悪女め……

 典型的なウザい逆ハー女め……


「悪いけど、今急いでるんだ」


「えぇ〜」


「佐渡会長。傍観してないで何か言ったらどうですか?」


 こいつを視界に入れたくなかったので、暇そうにしてる佐渡会長の方を向く。


「ええと……がんばれ?」


「違いますよ」


 なんで労いの言葉、言ってるんですか……


「僕の代わりに、こいつの案内役やって下さいよ。生徒会長でしょ?」


「うーん……どうしようかぁ?」


――ニヤリ


 そんな擬音が聞こえてきた。

 まずい、このままでは僕は佐渡会長の下僕へと成り下がってしまう。

 だが、こいつと学校を徘徊するのは嫌だ。

 死んでも嫌だ。

 前回、こいつの事をどうも思ってないって言ったけど、本人を前にして前言撤回します。

 こいつ、嫌だ。


「もう、直也くん。生徒会長さんも忙しそうだし、私は直也くんでもいいよぉ? 直也くんと一緒にいると落ち着くし」


 くっ、なーにが僕と一緒にいると落ち着く、だ。

 よくそんな口が叩けるな。

 中学の頃を僕が忘れたと思ってるのか?

 あの言葉…まだ覚えてるっつーの。


「こういう案内役は、兄貴にしてもらえよ。今呼ぶから」


 時間的に、まだ校舎内にいるはず。

 携帯で呼べば――


「ううん、直樹さんじゃなくて直也くんがいい」


 はぁ?!

 お前の目当ては兄貴のはずだろ!?

 なんで僕?!

 くそっ、分からない……この女の考えてることが分からない。


「あ、もしかして直也くん。“あの時”の事を気にしてるのかな?」


「………」


「もしそうなら、ごめんね? でもね、直也くんと離れてみて気づいたの! 直也くんが私のホントの一番なんだって!!」


 調子がいいにも…程がある。

 大体、僕はこいつが言った発言に怒ってるわけじゃない。

 こいつの顔を見ると、“あの日”の事を思い出してしまうんだ。

 僕が…僕がただの脇役であったと……知った、あの日を!!


「いい加減にしてくれ。僕は…僕は!!」


「石上直也!!」


 佐渡会長の声に、僕は口を止めた。


「会長命令よ。その子の案内役をしなさい」


「やった♪」


 会長…命令……?


「なんなんだよ……僕達脇役は、主役の駒じゃないんだぞ!?」


「……なに言ってるのよ。駒よ、駒。将棋で言えば私が王、貴方は歩兵。ただし、永遠に金に成り上がれない歩だけれど」


「くっ!」


 佐渡会長は静かに歩みを進め、僕の耳元で呟く。


「N・O・K」


「っ!?」


 それは……!


「あれを、貴方も見たんでしょ?」


「会長…も?」


「詳しい話は、明日してあげる。でも、今は彼女の案内役をしなさい」


「分かり…ました」


 会長もあれを見たのか……

 一体、どんな思いであれを見たのか、何を感じたのか

 優越感か同情か……まあ、どっちにしろ大差ない。




「るんるんるる〜ん♪」


 僕の気も知らないで呑気に鼻歌を歌っている女、名前は『神崎 絢香』。

 中学時代の僕の元カノ。

 僕の人生の汚点だ。


「ほら、ここが二年の教室」


「わぁ、ここで直也くんは勉強してるんだね。一緒のクラスになるといいね!」


 そんなのごめん被る。

 願い下げだ。


「次、行くぞ」


「うん♪」


 ♪マークもうぜぇ………


「おやおやぁ? 直也、発見!」


 ……めんどうなのに、見つかった…。

 新聞部部長の水原さんだ……。


「なんでいるんだよ…」


「ネタを探しに。 そしたら案の定、ネタが転がってたものでね。で、その子誰?」


「明日転入してくる転校生。僕、ただの案内役」


 僕の背中から絢香がにょきっと顔を出した。


「……誰?」


 ん? なんかやけに声低いな。

 ちょっと空気も重たいし。


「私? 私は新聞部部長の水原結衣。よろしく転校生さん」


 相変わらずマイペースな人だな、水原さん。


「ふーん……直也くんと随分親しいみたいだけど…」


「おっ、ヤキモチかい? 直也、お前も隅に置けないねぇ。転校生に名前呼びしてもらうなんて」


「私、直也くんの元カノですから!」


「ははあ、な〜る。すっかり元鞘に収まったっこと?」


「断じて違う!!」


 僕は二人の間に入り、強く否定した。

 ぷくぅ、と頬を膨らます絢香。

 こっち見んな。


「違うの?」


「違う」


「案内役を買って出たんじゃないのか?」


「押し付けられたんだ」


「誰に?」


「生徒会長に」


「なるほどぉ……メモメモ」


「なにメモってやがる!」


「秘密だよ、秘密! じゃあ、そろそろお邪魔虫は退散するとしますか」


 水原さんはそう言うと、「お幸せに〜」と言いながら僕達の前から去った。

 災難だった。


「……次、行こうか」


「……うん…」


 水原さんと遭遇して疲れたのだろう、僕は絢香の表情が暗くなってることに気づくだけの余裕もなかった。




「ここは図書室」


「わあ、本がいっぱい!」


 絢香は目を輝かせながら、図書室を見渡す。

 受付カウンターに鳴海さんの姿が無いのを見ると、少し違和感を覚えてしまう。

 放課後の図書室というのも、ある意味で新鮮だ。

 ……こいつがいなければ、尚のこと。


――グシャッ


 ん? 本が地面に落ちた音が聞こえた。

 音の方を見てみれば、瑛さんが驚愕の表情で立っていた。

 ああそうか、瑛さんは絢香を知ってるんだよな。


「なんで、神崎さんが……」


「瑛さん」


 僕は瑛さんに近づき、事情を話す。


「絢香の奴、明日ここに転入してくるみたいなんだ」


「転入? 彼女が、ここに?」


「うん」


 瑛さんは知ってるんだろう、絢香の本質を。

 そして勘違いしているのかもしれない、僕が変わったのは、僕が絢香と関わりを持ってしまったからだ、と。

 絢香のせいで変わったのではない……が、きっかけではある。


「あれぇ? もしかして瑛ちゃん?」


 絢香は瑛さんの姿を認識すると、瑛さんに抱きついた。


「わぁ、瑛ちゃん久しぶり! 中学校以来だね!」


「なんで…ここに……?」


「お父さんの仕事の都合〜」


「そう…なの」


「あ、そういえば!」


「?」


「瑛ちゃんは直也くんと同じクラスなの?」


「え、えぇ……」


「……じゃあ、色々と教えてもらおうかな……私の知らない、直也くんのことを」


「ひっ?!」


 僕は絢香の背中しか見えない、だから彼女がどんな表情を見せたのか僕には分からない。

 ただ、瑛さんの表情から察するに普通ではないのだろう。


「絢香、いい加減瑛さんから離れろ」


「えぇ〜、親友との再会なんだからもうちょっと感傷に浸らせてよ〜」


 なーにが、親友だ。

 中学時代、散々瑛さんのことを利用したくせに。


「瑛さん、大丈夫?」


「う、うん……」


「今日はもう帰った方がいい。よかったら送ろうか?」


「でも……」


 瑛さんはチラッと絢香の方を見る。

 正直、僕自身も限界なんだ。


「絢香、悪いけど案内はこれで終了だ。学校の施設は大体巡ったし」


「えぇ〜、まだ直也くんと一緒に居たいぃ」


「瑛さんは具合が悪いみたいだから送らなきゃいけない。“親友”なら、分かるだろ?」


「………うん」


 以前、瑛さんのプロフィールで彼女のことを天敵と言ったが、本当の天敵は絢香だ。

 それを、再認識した。


「じゃあな、絢香。……瑛さん、行こう」


「う、うん……」


 僕は瑛さんの手を握り、彼女が落とした本を広い、絢香に背を向けて図書室を後にした。



「直也くん……モテモテだね。…私が、元カノなのに………」




◇◇◇◇◇



「ホントに大丈夫、瑛さん?」


「うん。ありがとう、直也」


「どういたしまして」


「なんか…少しだけ、昔の直也みたいだった。喋り方といい、行動といい」


「ああ、絢香と一緒だったからかな」


 読者の皆さん、すみません。

 僕、そんなに喋り方変わってました?

 あ、でも今は元通りですよ。

 いつもの石上直也です、はい。


 そうこうしてる内に、瑛さんの家に着いた。


「ありがとう、直也」


「うん。じゃあまた明日」


「待って!」


 瑛さんに呼び止められて、僕は振り向きました。

 どうしたんだろ?


「神崎さんに、気を付けて」


「どうして?」


「彼女は…普通じゃない」


「………うん、知ってる」


 絢香が普通じゃないのは、中学の頃から……知ってる。

 僕はそのまま瑛さんと別れ、家に帰った。


 明日、学校休もうかな………




 あ、この日の後日談としては妹小説が友里に見つかってしまい、フルボッコにされました。

 効くわぁ。

【神崎 絢香】

性別 :女

誕生日:??月??日

趣味 :???

【備考】

 僕の中学時代の元カノ。

 それ以下でもそれ以上でもないが、できれば一生関わりたくない逆ハー女。

 あいつの情報なんて知りたくもない。

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