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「な、何よ。わかってるわよ」


向こうの方にいる、もう生気がなくなっている患者は血水症菌を取り除いたところで身体が衰弱しているからオーロラには治療が無理だ。だが、ノエルにならできるはず。癒しの魔力を持っているから。


「あなたにはそちらの患者たちを治せるはずよ。がんばって治療して頂戴」


「大聖女ノエル様」


患者がしぼりとるように最後の声を出す。


「お助けを」


ノエルはその患者を呆然と見ている。


ノエルの横には精霊がいた。

前世でもいた。ちょっと色が違うような気がしたが同じ精霊だろうか?


オーロラはちらっとそっちを見ながら患者をひとりずつ治療していくことに集中する。

どれだけしても終わらないほどの数の患者がいるのだから。


気づけば夕方になっていた。

ひととおり患者は片付けた。


助かる患者はという意味だ。


そういえばノエルはどうしたのだろう。テントから消えている。


先程ノエルが見ていた患者は今も虫の息だ。


「ねぇ。クティ。この人どうにかして助けられないかしら」


ここまで生きてきてとても無念だ、

こんなところで命を落とすなんて。


「うん。きっと今のオーロラになら助けられるよ」


「あら?クティ。なんかとても真っ白になってない?」


「うん。オーロラのおかげさ。僕は…僕は。今ならオーロラを助けられる。がんばってみて。その患者が助かるようにって」


「え?うん」


オーロラは患者の手を握り血水症菌を除去してから祈った。


どうか。助かって。と


するとどうだろう。黒い魔力の筋が光をおびはじめたのだ。

え?どういうこと?


「オーロラの黒魔術が覚醒したんだよ。オーロラの願いが通じた」


「覚醒?それは……」


「オーロラが殺した血水症菌の死が人間の生に成り代わったんだ」


「え?」


「それが黒魔術師の覚醒だ」


「そんなことが?」


「今までオーロラが必死で殺してきた菌やウイルスを全部生に置き換えることができる」


患者はみるみる回復していく。


「ああ。なんか楽になってきた。あなたが助けてくださったのですか?」


そう言って笑っている。今まで抜け殻みたいだった人がだ。


すごい。

オーロラは死の淵にいる人たちも次々と救っていった。


「おかげで僕も覚醒しちゃった」


ふふんと横で鼻を鳴らすクティを抱きしめた。


「すごい。白銀色クティだわ」


「あら、やるじゃん」


ウォルターの横にいたアウラがクティの毛をつんつんつつく。


「オルディアス様に表彰してもらえるわね。わたしも頑張らなきゃ」


「そう思う?」


「うん」


オルディアス?精霊王のことかしら?


「それにひきかえあの子は……」


ぼろぼろになったノエルがテントに現れて信じられないものを見るかのようにこちらを見ている。


ノエルは誰ひとり救わなかった。

いえ、たぶん救えなかった。

ノエルの力は前世とは違う。

全然力がない。


契約しているであろう精霊を見ても全然生気がない。だいたい色が黒くなってしまっている。

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