3
「きゃー。鴉だわ。鴉の大群よ。きゃー!!」
前世の記憶がよみがえって来た。
鴉が押し寄せてきて、祈っただけでバタバタと死んでしまったことを。
はっとしてノエルの方を見る。
笑っている。
え?
笑っているわ。
その口角は確実に上がっていた。
周りにいた令息たちはあわてふためいていてノエルのその鬼のような表情は見ていない。
その顔はまるでエンジェルの前世に見た最後の顔みたいだった。
あなたが呼んだの?
ふと思いついて、横を見たらエンジェルはなんということはない顔をしている。
「鴉?なんでそんなに驚いているのかしら?ほうっておけばいなくなるわよ」
そのエンジェルを見て思った。
強い。
それでいいのよね。
表情ひとつ変えないエンジェルに気持ちが楽になってウォルターに視線を移した。
「鴉か。こんなときに大群で押し寄せるとは。森の中で何か起こっているのか」
「もしかしたらそうかもしれないぞ」
エリオット王太子も真顔だ。
だが、仕方ない。鴉をどこかにやらねば厄介だ。
オーロラはぐっとこぶしを握り締めた。
自分ならば鴉を一網打尽にすることができる。
だが、ここで黒魔術を使うと全員に闇魔術師だとばれてしまう。
「オーロラ。君は座ってなさい。俺がなんとかする」
「え?」
その時だ。
ウォルターがすーっと息をすうとキラキラと髪が輝き始めたのだ。
「殿下?」
何が起きているの?
周りもざわついている。
「アウラ。用意はいい?」
「いいわよ。まかせて」
そういうと同時にウォルターの髪のひとふさが金色の鳥になったのだ。
精霊だわ。
金色の精霊?
そしてその鳥が鴉の大群に向かって飛んでいくと、金色の光が空を覆った。
「これは何?」
「殿下が輝いていらっしゃるわ」
「すごい」
その金色の光がひろがると鴉たちが押し戻されていく。
「お前たちの寝床は森だ。森に帰るんだ」
その金色の光に導かれ鴉たちは森へ帰っていった。
驚いて何も言えなかった。
放心していたが、はっとしてノエルを探すと、ウォルターを凝視していた。
その瞳にはやはり愛が溢れている。
やっぱり愛していることに相違はないのだわ。
じっと見ていると目が合った。
とたんに憎しみの目になる。
これで確信した。




