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「さあ。オーロラ嬢召し上がれ。何が好きなのか分からなかったから甘いものを用意させたけどよかった?」
「はい。甘いものは好きですわ」
「そうなんだね。これから君のこと、いろいろ知っていかなくちゃね」
「え、えーと……」
目の前に座ったウォルターは行儀悪くもテーブルの上に肘をつき、オーロラの方へ身を乗り出してくる。
近い……。
端正な顔立ちがこんな目の前にあると……。
「ひとつ目、覚えたよ。オーロラは甘いものが好きだってね」
「そ、そうですか……」
その顔は到底直視できずオーロラはうつむいて答えた。
「ほら食べよう。わたしはこれにしよう。オーロラはどれ?イチゴがいいかな?」
「は、はい」
侍女に命じ、ウォルターはチーズケーキを選び、そしてオーロラにはイチゴたっぷりの生クリームのケーキを選んだ。そのケーキを乗せた皿が目の前に置かれる。
とてもおいしそうではある。
ウォルターは目の前に置かれたお皿からチーズケーキをフォークですいっとすくい口に運んでいる。
その所作が美しすぎて思わずじっと見てしまった。
長い指をしなやかに動かし口元へと運ぶ。
口元から長く高い鼻梁をとおって綺麗なアーモンド形の目まで視線をたどり、さらにはその碧い瞳にたどり着くとばっちりと目があった。
碧い瞳は子どものころと同じ。
「オーロラ嬢?どうしたの?」
「え?」
いけない。
じっと見つめてしまった。
「いえ、いただきます。イチゴは大好きなんです」
「それはよかった」
オーロラは半ば無理やりのようにイチゴケーキを口に運んだ。
おいしい!
やはり自分は甘いものが好きだ。
母がつくるパンやケーキを食べて育ったからなのかもしれないが、このケーキは母が作るものに似ている。
「昔、大好きなパン屋さんがあってね」
「え?」
「その味に近くなるように料理長に頼んで作らせてる」
「昔……ですか?」
それって『ベラのパン屋』じゃないの。
「ああ。そのパン屋さんにわたしは救われたんだ。だからとても思い入れがあってね」
なんてこと。母が聞いたら喜ぶだろう。
「とても、おいしいですわ」
「そう。よかったよ」
そう言ってチーズケーキを口に運ぶウォルターをまたじっと見てしまっている。
「そんなにこっちも食べたいならあげるよ」
え?
ウォルターがすくっていたフォークをオーロラの口にひょいっと運んできた。
目の前に差し出されたフォークに思わずオーロラは口を開き、ぱくっと食べてしまった。




