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ジル?!
そしてその後ろに儚げな美女が立っていることにももちろん気づいた。
奥様?!
「オーロラ嬢。我が息子じゃ」
「オーロラ嬢。『ウォルター・ラファエル・ソードノーズ』だ。初めまして」
じっとオーロラを見ているその碧い瞳はまさにジルのものだ。
部屋の中にいてもキラキラ太陽の光を反射しているみたいなその金色の髪も。
端正な顔立ちも。
あまりのことに言葉を発することができずにいるのを緊張のせいと思ったのか兄のジーヴァが横からオーロラの腕をつついた。
いけない。挨拶しなくちゃ。
「オーロラ・ジェニファー・グッドフェローにございます。お初にお目にかかります」
するとつかつかとジル、いやウォルターがオーロラの方にやって来て手を差し出してくる。
そんなことをされたら手を取るしかない。
オーロラは立ち上がるとその手を取った。
「よかった。手を取ってくれたね。ふたりでお茶をしないか?王太子宮の中庭に用意させているんだ」
オーロラはぼーっとウォルターを見ていた。
背が高い。足は長くてスラリとしている。
それに体は細いのに胸板が厚くて何というか……カッコいい。
「オーロラ嬢?」
いけない。
「オーロラ!返事をするんだ」
ジーヴァの小さな嗜める声がする。
「え?あ、はい。喜んで」
オーロラの返事にウォルターはにっこり笑う。その笑顔が何というか、胸の奥にズドンと突き刺さる。
「陛下。失礼致します」
「あ、ああ。婚約者との交流を深めるのはよいことじゃ。行くがよい」
「はい。公爵」
「はっ!」
「オーロラ嬢は後ほどわたしが送り届ける」
「かしこまりました」
いまだにぼーっとしているオーロラは気付けば謁見の間を出ていた。
隣でエスコートしているのがジルだとは信じられない。
まさかあのジルが王太子殿下だったなんて……。
ということは前世のあの体の弱い王太子殿下もジルだったということ?同一人物だというの?信じられない。
「オーロラ。俺のことわかるよね?」
あー、でもこの声は前世のウォルター殿下の声と同じだわ。
ウォルターの言葉にコクコクと頷きながら考える。
「けれど俺たちは初対面だということにしておいてほしい。知っているのは母と俺、そしてオーロラだけ。いいね」
歩きながら小さな声で話す。バレたら困るのだろうか?
そこであることに思い当たった。
オーロラに平民の血が流れているということはあまり知られていない。
グッドフェロー公爵はその辺りはうまく誤魔化していたようだ。
だけどウォルターはそれを知っている。
そうか……。
自分の妃が平民出身だというのが恥ずかしいのかも知れない。
そう考えて納得がいった。
自分は前世でもウォルターには愛されていなかった。今世でもそれは同じはずなのだから。
「はい。承知しました」
返事しながら胸の奥にズキンと重みを感じた。何だろう。この重みは……。
ショックを受けているの?わたし。
王太子宮に辿り着くと庭のテーブルに菓子とお茶を用意されており、エスコートされるままにオーロラはテーブルの前に座った。




