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目の前に広がる青い城。

ソードノーズ王国の王城だ。


この青い城が前世では冷え冷えとして見えたのを覚えている。

実際中も冷え冷えとしていた。


今世に入ってからはデビュタントで一度足を踏み入れただけだ。それ以来一度も訪れていない王宮へと今から足を踏み入れる。

いい思い出など何もない、味方など誰もいない恐ろしい場所。


オーロラはぶるっと身振るいするとシーヴァのエスコートで馬車から降り立った。


城の玄関の前には十数人の使用人や侍女たちが並んで出迎えてくれている。


「さぁ、行こうか」


父のグッドフェロー公爵にエスコートされて夫人である母が、そして兄にエスコートされたオーロラが順に入城していく。


使用人たちは無言で頭を下げ続けていた。


この人たちと……これから戦わなければならない。

実際今もかなり痛い視線を感じる。

少しの粗でも探し出して蹴落としてやろうとする視線だ。


こんなものに負けるものか。

必ず、打ち勝って見せる。

回帰した時点で決めたことをここでも実行するまでだ。


病気や怪我に傷ついた人を助ける。


王太子妃になることはもう変えようのないことだ。

母を助けた時の父との約束である。それを破れば父は母を殺すだろう。

母は今でもキノックス領で元気にパン屋を営んでいるというのは聞いている。

そのままずっと元気で生きてほしい。

だから王太子妃になる。


そして病で結局死んでしまった王太子のウォルターを助ける。

今のオーロラになら病なのか何なのか判別できるだろう。

そうすればノエルと出会った時に前世よりは健康な状態で出会うことができる。

ふたりが出会った時、ウォルターが健康であればもっと愛は深まるかもしれない。

エンジェルはノエルを雇ったと言っていたけれど間違いなく彼らは愛し合っていた。

ノエルが一度オーロラに言った一言が嘘とは思えない。


『殿下をお慕いしているから頑張れるんです』


その瞳に嘘はなかった。


彼を助けることができたら、あとはノエルに引き渡してそれでオーロラの仕事は終わり。

母を迎えに行って、国を出るのだ。

国を出る準備はぬかりなく進めている。

オーロラに毎年割り当てられる公爵家の予算があるからそのお金をばれない程度に少しずつ残している。あと少ししたらルヴィエ王国に小さな土地は買える予定だ。

そこに小さな家を建てて母とふたりでパン屋を営み、クティと一緒に人々を黒魔術で救いながら余生を過ごす。

ミシェルがいたら、診療所を開けるのになと思うが、彼は今どうしているのかわからない。

ちゃんと医師の勉強はしているのかしら?


ウォルターとの子どもであるイヴァンと会えないと思うと胸が張り裂けそうになるが、イヴァンはいい子だったからもしかしたらもっと素敵な両親のもとに生まれ変わっているかもしれない。絶対そうだ。そうだと信じている。


土地が手に入ったら今度は建物の業者を探さなければ……。


そんなことを考えながら歩いていると、国王謁見の間にたどり着いた。


いけないいけない。


前を歩いていた父と義母が跪いたのを見て、オーロラもあわててシーヴァとともに跪く。


「国王陛下にご挨拶申し上げます。グッドフェロー公爵にございます。娘のオーロラを連れてまいりました。王太子殿下には初お目見えとなります」


「うむ。皆の者顔を上げよ」


「「はっ」」


「「はい」」


襲る襲る顔を上げる。

そしてそこでオーロラは気づいた。


そういえば王太子殿下。


前世では体が弱くて部屋を出れないとか死にかけたとかいろんな噂があったけれど、今世では何も噂がないわ。どういうことだろう?


目の前には前世と変わらぬ国王陛下がいる。


威厳たっぷりの中年のおじ様だ。

黒髪に碧眼。

何も変わっていない。

だが、前世では横に第二王妃殿下がいたはず。

今世は誰もいない。


何故だろう?

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