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「オーロラ。俺はこっちの方がいいと思うぞ」


「そうかしら?シーヴァお兄様、アメジストのほうがよくはないですか?」


「サファイアがいいに決まっている。ほら見ろ」


今日は王太子との初お目見えの日だ。

王都に来てすでに十年が経過していた。

王都にやってくるとすぐにグッドフェロー公爵は王家と話をして王太子とオーロラの婚約を取り付けた。

十七歳になった今ようやく十年越しの婚約者との初対面だ。


目の前でオーロラの淡い水色とパープルの中間色のようなドレスにどっちの宝石が合うかで兄のシーヴァが眉をしかめている。


「よし。サファイアで決まりだな」


「お兄様が言うなら。そうですね」


にっこりとオーロラが笑った。


「俺の自慢の妹だからな」


兄は嬉しそうににんまり笑っている。

前世ではジーヴァとの交流はまったくうまく行かなかった。

ジーヴァは父の正妻の息子でオーロラの三歳年上、現在二十歳である。

ジーヴァはグッドフェロー公爵家の象徴である赤髪とゴールドの瞳を一切受け継がず、母親と同じ茶髪にアメジストの瞳をしている。

それもあって父との折り合いが悪く、そこに出来のいい平民の娘である妹がやって来たものだから正妻の母親と共にオーロラを目の敵にしていたのだ。


前世では目の敵にされたままこの日を迎えたので、オーロラは父の後ろについて孤独に王太子に会いに行った。

だが……。


「オーロラ。まぁ、綺麗じゃない」


現れたのは父の正妻である義母エミリアだ。シーヴァとよく似た顔だちをしている。


「お兄様が選んでくださったんです。このサファイアがいいって」


「まぁそうね。そちらの方が凛としていて今日にはふさわしいわ。わたくしもそちらがいいと思うわ。ねえ、あなた」


「ああ。そうだな」


適当に返事をしているのは父だ。

相変わらずこの父だけは利益第一主義なので、娘がどうであろうと、王太子妃になってくれればいいらしい。


だが、そんな中こんなにも前世と扱いが違うのは、義母を死の淵から救ったからだ。

こちらにやって来た頃はふたりともオーロラを目の敵にしていたが、あるとき義母が野犬に噛まれ、足に大きな傷を負った。

前世ではそのせいで義母の足は壊死寸前までいってほとんど動かなくなりほぼ車いすの生活をしていた。

身体も病気がちになり引きこもり生活をしていたためより一層性格が歪んでいた。

だが、今世ではオーロラの出番である。


黒魔術とばれるわけにはいかないので、毎日義母を看病すると言って義母の部屋に籠った。

そしてそこで足の傷についた様々な菌を殺していった。

義母は高熱でうなっていたから黒い魔術の光は見ていない。

どちらにしても義母には魔力がなかったから同じではある。

何せ野犬は恐ろしい数の菌を保菌しており、義母の身体中に恐ろしい数の菌が入り込んでいた。

一日で殺せるものではなかったので、ちょうどよかった。


一週間たったころ、ようやくすべての菌を除菌でき、義母はようやく目を覚ました。


『母上。よかった。オーロラが毎日看病してくれたんだ』


『え?わたくし生きているの?』


『そうだよ』


こうして義母の足には傷は残ったものの、完治し、今は元気に毎日暮らしている。


それからだ。

義母とシーヴァの態度が変わったのは。


シーヴァはよき兄となり、義母はかわいがってくれるようになった。


「サファイアに決まったのなら行くぞ。シーヴァがエスコートせよ」


「はい。父上」

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