7. アルダールの門
アルフレッドとセリーヌが小さな町を出てから三日後。
北へ向かう街道は次第に整備され、旅人や商人の姿も増えていった。
「人が多くなってきたな。もうすぐなんだろうな、アルダール」
アルフレッドが呟くと、隣を歩くセリーヌが嬉しそうに頷いた。
「ええ。大陸最大の都市よ。魔導学院、王立図書館、魔法工房……全部が集まってるの。あなたの力についても、きっと何か分かるはず」
「そうだといいけどな」
アルフレッドは胸の奥に小さな期待と不安を抱えながら、遠くの地平線を見つめた。
そして――
丘を越えた瞬間、二人の視界に巨大な都市が姿を現した。
「……これが、アルダール」
思わず息を呑む。
城壁は白銀に輝き、空には魔導士たちが乗る飛行艇が行き交っている。
城壁の向こうには高くそびえる塔がいくつも立ち並び、その中心には、まるで空を貫くような巨大な塔――“中央魔導塔”がそびえ立っていた。
「すごい……」
アルフレッドが呟くと、セリーヌは得意げに胸を張った。
「ふふん、驚くのはまだ早いわよ。アルダールは“魔法文明の中心”なんだから」
二人は街へ向かって歩き出した。
アルダールの門前
都市の巨大な門の前には、長い列ができていた。
旅人、商人、冒険者……さまざまな人々が検問を受けている。
「入るだけでこんなに並ぶのか……」
「当然よ。ここは大陸中の魔力が集まる場所。危険な魔法使いが紛れ込まないように、厳しい審査があるの」
セリーヌが説明していると、突然――
「そこの二人、ちょっといいか?」
門番の兵士が二人に近づいてきた。
鋭い視線がアルフレッドの腰の炎紋に向けられる。
「その紋章……魔力の暴走者に見られる兆候だ。念のため、魔力検査を受けてもらう」
「暴走者……?」
アルフレッドは眉をひそめた。
セリーヌが一歩前に出る。
「ちょっと待って。彼は暴走者なんかじゃないわ。私が保証する」
「保証? 君は……」
兵士がセリーヌの杖を見た瞬間、目を見開いた。
「その杖……“星晶杖”!? まさか、君は――」
セリーヌは軽く髪をかき上げ、さらりと言った。
「天才魔導士セリーヌよ。文句ある?」
兵士は慌てて姿勢を正した。
「し、失礼しました! セリーヌ様の同行者なら問題ありません! どうぞお通りください!」
アルフレッドはぽかんと口を開けた。
「お前……本当に有名人だったのか」
「当たり前でしょ。言ったじゃない、天才魔導士だって」
セリーヌは少し照れたように笑い、アルフレッドの腕を軽く引いた。
「さ、行きましょ。あなたの力の手がかり、きっと見つかるわ」
アルフレッドはその手の温もりを感じながら、巨大な門をくぐった。
門を抜けた瞬間、アルフレッドは圧倒された。
街の中心には魔力で動く乗り物が走り、空中には魔法で浮かぶ看板が輝いている。
露店では魔法薬や魔導具が並び、通りを歩く人々の多くが魔力を帯びていた。
「すげぇ……これが、魔法の都市……」
「でしょ? ここなら、あなたの“焔の継承者”としての力も研究されてるはずよ」
セリーヌは街の奥を指差した。
「まずは王立図書館へ行きましょう。焔の継承者に関する記録が残ってるはず」
アルフレッドは頷き、二人は街の中心へ向かって歩き出した。
だが――
その背後で、黒いローブの人物が静かに二人を見つめていた。
「……焔の継承者、ついに現れたか」
その声は低く、冷たかった。




