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あまりに使えないんで守護霊をチェンジしてもらっていいですか。  作者: 鳩野高嗣
第五章 元守護霊×守護霊の決闘
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元守護霊×守護霊の決闘【Cパート】

飯綱(いづな)さん、電話連絡がつかないから。」


 瑞希(みずき)は伝書鳩を抱きかかえながら理由を述べた。


「すみません、スマホを新調するお金がないもので‥‥。

 ――それで、今日は俺たちに何のご用なんでしょうか?」


 健悟(けんご)は人差指で頬をポリポリと掻きながら神療内科へ招かれた理由を()いた。


「実は、ある人の(えにし)を断ち切ってほしいのです。」


(えにし)を切るなんて、そいつの守護霊の仕事じゃねぇか。

 そもそも他人の(えにし)なんか切れねぇっつーの。」


 真雨(まさめ)が正論をぶつけた。珍しく。


至極(しごく)真っ当な意見ですね。

 実は、その縁を結んだのがその人の守護霊なので、どうしても嫌だとごねられているのです。

 そこで、あなたに白羽の矢を立てたのです。

 『()』守護霊のあなたなら他人の縁も切る事が出来るのではないか、と思いましてね。」


「元をそんなに強調する事はねぇだろが。

 そもそも、アタシを元にしたのはテメェじゃねぇか。」


 ブーたれる真雨。


「一つだけお()きしてもいいですか?

 その依頼人はどなたなのでしょう?」


「‥‥それは私です。」


 診察室の奥から出てきたのは香代(かよ)だった。


神井(かむい)さん!?」


「‥‥飯綱くん、見て。」


 そう言うと、香代は長袖のブラウスを脱いだ。


「!?」


 健悟は絶句した。

 そこには無数の青あざがあった。中には根性焼きのような痕さえも。


「誰が‥‥誰がこんな事を!?」


 怒りを(あらわ)にした健悟と真雨がユニゾンした。


「うちの‥‥主人です。」


 そこまで言われれば何を断ち切ればいいのか見当がつかない程、健悟も真雨も鈍くはなかった。


「警察は民事不介入なので、この手の問題を厳重注意するのが限界なのです。

 (えにし)さえ切れれば離婚届にサインをさせるのも容易(たやす)いはず。

 ――どう? 受けて頂けるかしら?

 成功したら新しいスマホ代くらいの報酬は出しますよ。」


 瑞希の出した提示に首を何度も素早く縦に振る二人。


「んじゃ、ちょっくら仕事してきてやっかぁ。」


 真雨はそう言うと、香代の体内に入り込んでいった。


「ったく、あのトンパチ! 少しは作戦くらい練ってから行けっての。」


 健悟は無策で飛び込んだ真雨を心配しつつ、文句を()れた。



 縁の糸が並ぶ守護霊の仕事部屋。

 そこにどっかと座る香代の守護霊、蹴速(けはや)がいた。


「あんたが職務怠慢の香代の守護霊さんかい?」


 真雨が問い掛けると蹴速はおもむろに立ち上がった。

 身の丈、百九十センチオーバーの立派な体躯(たいく)が真雨を見下ろす。

 埴輪(はにわ)のような感じの衣服から察して、かなりのベテラン守護霊なのだろう。


「わ~れは、田尻香代を守~護する者ぉ、荒波乃(あらなみの)蹴速(けはや)

 我がテリトリーに侵入してく~るとは不届き(もっ)て千ば~ん。

 名とレベルを名乗りや~がれってんだ、コンチキショウ。」


 蹴速は若本(わかもと)規夫(のりお)口調で命じた。


「アタシは今際乃(いまわの)真雨(まさめ)

 介助職員初任者研修生にしてレベル1!

 あんたの代わりに悪縁を断ち切りに来たっ!」


 鼻毛切り(ばさみ)を身構える真雨。


「ほほう、そのレ~ベルで、乗り込~んでくるとは愚か! 愚か! 愚か!

 超大事な事なので三回言いましたとさ。」


「どうしても切らせねぇ気か?」


「当たり気~車力(しゃりき)のぉ~コンコンチキィ~。

 あれを切りたくば、わ~れを倒して~ミロのヴィーナス。」


「そうかい、そうかい。

 ――なら、こっちから行くよっ!」


 真雨は蹴速に向かって頭から突っ込んで()った。

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若本規夫さん口調は反則でしょう、大爆笑しました。
[良い点] ~ミロのヴィーナスに大爆笑しました。
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