第11話 父は娘の部屋に入るときは、許可を受けようと決意した。実父の改心
※残酷な描写があります。
「旦那様、手紙が戻ってきました」
「またか・・」
いったいどうなっているのだ!後ろ盾を頼む手紙が、封を切らずに返って来た。これで三通目だ。シャーロットを老貴族に売って、結納金をもらおう。
「シャーロットの嫁入り先は?」
「それが・・難航しています」
まあ、良い。修道院という手段もある。
汚れた血スペンサー家の歴史をワシの代から、真っ当な貴族にする。
子爵家の五男、この儂が婿に選ばれたのは、魔力はあるが、魔法は使えないCだからだ。
魔法使える者と結婚すれば、その家、特有の魔法を使える子が生まれる確率が高くなるからだと。
こんな卑しい魔法を使える家門などど、しかし、貴族でいられる。それに、あいつは体が弱かった。だから我慢して媚びを売ったのだ。
その我慢の対価がやってくる。
あの国王の紹介状を持って来たミヤさえ気を付ければ大丈夫だ・・・
「だ、旦那様、メロディ様のご様子がおかしいのですが・・」
「何?いますぐ、メロディの部屋にいくぞ!」
・・・・
「何。メロディが部屋に籠もって、ブルブル震えてる。マナー本を読んでいるぞ。何が起きた!」
「メロディ、何が起きた。また、シャーロットにイジメられたのか?」
「マナー、マナー、マナー、マナー、私は居候、寄生虫じゃない。マナー勉強!パパ、マナー講師を呼んでよ!」
「どうした。前は3日でクビにしたではないか?メロディの可愛さはマナーの型にはまらないところにある。ニコライ君なら、それで大丈夫だ。それとも、もっと、好きな高位の爵位の貴公子が出来たかな?」
「イヤーーーーメロディは居候なの。シャーロット様に迷惑を掛けちゃいけないのーー」
何が起きた。あの可愛らしいメロディが、こんなにブルブル震えて、
シャーロットか。あいつが、イジメたのだな!
許せん!今日は、あいつの顔も殴ろう!商品価値が落ちてもいい。ワシの本気を思い知らせてやる!
・・
「何だ、久しぶりに来てみれば、離れの、ドアが鉄製になっている。それに、何だ。魔道具がはり付けておるわ」
ドアには透明な水が入った容器に、赤い綱のようなものがグルグル巻きにされており。ドアノブに細い線がつながっている。
※ペットボトル爆弾
ドアに注意書きが張ってある。
「何?入るさいは、ノックをして、許可を受けてからはいること?」
生意気な。当主は私だぞ!
どうせ、この魔道具モドキもワシを驚かせるためのものに違いない!誰が許可を受けるものか?
「シャーロットいるんだろう!メロディに何をした!躾をしてやる・・」
父がドアノブに手を掛けた時、ドカーンと音とともに閃光が走った。
爆裂魔法が炸裂し、ペットボトルの中の水が父に向かって、ナイフのように炸裂した。
「グフ!!」
離れの角から、一人のメイドが現れた。
ホウキを持っている。
「旦那様は、文字を読めないのですか?あら、内臓をお見せになって・・・そんな趣味があるなんて、目のやり場に困ります。私も女性ですわ」
「グフ、ヒーヒー(何を言っている!助けろ!)」
「あら、あら、伯爵代行様・・・便宜上、旦那様とお呼びしますが、その内臓を見せる趣味は・・・その手のお店でやって下さい。今の時間、シャーロット様は帳簿を付けておられますわ。そんなこともご存じないのですか?」
「ヒィ、グヘ、ヒィ、グヘ(ワケのわからないこと言ってないで助けろ!)」
「ところで、伯爵家の総領娘は、シャーロット様で、お間違いないですよね」
「グヘ、ヒーヒーヒーヒー(それどころじゃない。助けて、助けて)」
「ヒーヒーじゃわかりませんわ」
「まあ、一応、実父だからこれくらいで助けてあげましょう」
「ヒーヒー(早く助けろ!)」
(これで許すワケないじゃない?)
「あら、ポーションと間違えて、塩水を掛けてしまいわしたわ」
「ヒーヒーヒー(誰か助けて!)」
「腎臓でしたっけ?一つなくても大丈夫な臓器は・・」
「ヒヒー、ヒーヒー(やめてー何でもするから)」
「あら、カラスがやって来たわ。ジッと旦那様を見てますわね」
「ヒーヒー」
10分後
「グガーーーーヒーヒー(総領娘はシャーロットだ。だから助けて!)」
「まあ、良いでしょう。この復元力もあるポーションをかけて差し上げますわ。一応実父ですから・・ヤマダ、こいつを運んで、シャーロット様の目の触れないところまでね」
「はい、1の姫様」
・・・・・
シャーロットとアンが帰って来た。
「あれ、ミヤ、ここ何か獣臭くない?それに・・ドアにススがついているわ」
「卑しい野獣が襲ってきたのですわ。危ないから、新しい離れを建てましょう」
「ええ、そんな予算は・・・」
「大丈夫でございます。予算はございます」
「えっ」
「イセ国、シャーロット様緊急予算の使い道は、このミヤに任されています」
「・・・何それ」
「はい、全てシャーロットお嬢様のために使われる予算です。この国の国家予算と同じくらいでしょうか?」
「・・・ねえ。詳しく話して」
「はい、おいおいと・・」
「ダメ、今!」
・・お母様が言っていた加護に関係あるのかな。頼りすぎてはいけないと言っていた!
ミヤは一瞬、シャーロットの迫力に押された。
「今際の際で、お母様が言ってたけど、貴方たちイセ国がスペンサー家に加護を与えているの?何故?理由がわからないと、頼ることは出来ない・・」
(ああ、やっぱり、我が主人に相応しい。これなら、話しても大丈夫ね)
ミヤは語り出した。
「・・いえ、逆です。貴方方、スペンサー家の直系の方々が、私たち、イセの民に加護を与えているのです。それはシャーロット様も備わっている能力でございます」
「えっ」
「お嬢様、私は離れの掃除をします」
アンが場の空気を察し、立ち去ろうとしたが、
「アンも一緒よ!」
「センパイも是非聞いて欲しいですわ」
二人に止められた。アンはもう、シャーロットの家族の位置づけ。
「・・・グスン、お嬢様」
ミヤはセンパイが落ち着いてから、語り出した。
最後までお読み頂き有難うございました。