第12話 イセ国
☆約150年前、魔族領、魔物盆地 県庁大規模広域災害対策室
『県知事閣下、もう石油の備蓄がデッドラインです。彼の地の者はこちらの交渉に乗りません。防衛出動、いや、はっきり言いましょう。侵略戦争を起こします』
『連隊長たち、そうか、地獄の始まりだ。かの地を奪えば、しばらくは文明を維持できよう。しかし、この異世界転移という大規模広域災害で、人口は30万人を切った。現地人との本格的な戦争が始まれば、人口の海であっという間に飲み込まれ、我等は滅亡するだろう』
ミヤの先祖は異世界から突如この地に現れた。魔物溢れる盆地、先祖は、襲ってくる魔族や魔物、獣人や、略奪民族と戦い。身を守り。空飛ぶ機械で、帝国や王国に潜入。現地語をAIで学ばせ。不十分ながら翻訳機械も作れた。
異世界転移で多くのものを失ったが、幸いなことに、工場に、マスター機械が残っており。エンジンなどの精密機械が作れる。
各拠点に大型発電機を配れば、電気のある生活も復活できる見通しもある。
現地人と交渉し、粗銅を買い。金を抽出し、資金を蓄え。硝石が埋蔵する土地を買うことに成功したが、肝心な石油は、この世界では中々見つからない。
やっと石油を販売していると朗報があったが、販売元は冒険者ギルド、[魔物を焼く水]として少数取引されていた。
産地は王国スペンサー村。
『いくら精霊様でも、オラ達はここを離れねえ!こんな土地でもオラ達は他に住む場所はねえだ。殺すなら殺せ!』
村長、サークは叫ぶ。
『戦闘団長・・最後の交渉を・・させて下さい』
若い士官が、決死の使者として、志願した。これが悲劇を回避した。
『私たち・・欲しい。燃える水・・出る・・土地欲しいだけ』
『なんだべ?黒い水が欲しいだか?そんなものいくらでもあるだ。オラが探してやっから、ここ狙うのやめてくんろ』
『な、なんだと!!』
・・・三日後
『こ、こんな近くにあったとは、我等の生活圏の中ではないか?しかし、大規模なボーリング調査をしなくても探すことが出来るとは、異世界の魔法は恐ろしい』
『へへへ、これでええだか?オラも空飛ぶ魔道具に乗れて嬉しかっただ』
サークは探知魔法を使える。石油限定の、この世界では全く評価されないもの。しかし、ミヤの先祖は違う。最重要資源
ミヤの先祖は、必死にサークを招聘、大量の金貨を贈ろうとしたが・・・
『何、言ってんだか?オラはあの村の村長だ。ゴブリン焼き水の土地を探す相場は、こんなもんだべ』
サークは中金貨、数枚(数十万円)を受け取るだけだった。
あんなワケのわからない精霊たちから、ワケのわからない理由で大金を受け取ったら、絶対に精霊の奴隷になってしまうだ。
問題を先送りにするべ。
更に、必死にミヤの先祖はすがりつくが
『どうしても、もっと御礼をしたいというなら、オラの子孫が困ったとき、助けてくんろ。オラも、相場で仕事を受けるだ。子供たちにも伝えておくだ。それでええだか?』
『必ず。私たちは約束を実行します』
一年前
「10代目サーク殿のご子孫、シャーロット様、廃嫡の動きがあると、現地人からの通報がありました。元スペンサー家の使用人からだから確かだと」
「何?ぶっ殺じゃ」
「しかし、これは法案にありません・・間接侵略を肯定する法案とシャーロット様をお救いする予算の、議会に承認と、王国への調整が必要です!」
「議会を黙らせたいのう・・早急にやれ」
「アキ、お前は王国の学園に侵入しろ、ミヤはスペンサー家だ」
「はい、お父様」
「はーい、戦闘訓練頑張るぞ!」
____________________
ミヤは淡々と語った。シャーロットは信じられないと言うよりも理解出来ない。
いくら頭が良くても、電気のない時代の者が、家電製品がどうやって動くか理解できないのに等しい。しかし、シャーロットは、そこは魔法、魔石で置き換え。理解出来ないところは「そうなのだ」とした。
「わかったわ。私の探知魔法は、貴女方の文明にとって重要な[せきゆ]というものを探し当てることができるのね。ご先祖様が、精霊界から、この世界にやって来た貴女の祖先に教えたから恩を感じている・・」
「恩もございますが・・正直に言うと我々にとって必要な能力でございます。血脈を絶やしたくはありません」
「貴女方のこの世界での目的は?」
「元いた世界、精霊界と同じようにこの地上に、王道楽土を建設することです」
ミヤはこの世界を王道楽土にすると宣言する。各家庭にまで、水が行き渡り、簡単に火が付く竈、スイッチを押すだけで洗濯も出来る魔道具。1日8時間労働、24時間営業している食料品を売っている商店、貧民にまで、1日三食のような夢の精霊の世界、[ニホン]という夢の世界を語る。
イセ国は、元は[ニホン]の一地域、異世界転移の大災害から、やっと人口100万人を越えるようになった。そろそろ、本格的に母国の生活水準の状態に戻そうと動き出している。
シャーロット様にイセ国に来て頂きたいとの声が大きいと国の内情も明かす。
「・・私に帽子の飾りになれっていうの?」
「飾りではございません。お言葉と儀礼で、イセ国を導いて頂きます。イセ国とこの世界の民との融和の象徴でございます。イセ国のミカドになって頂きたいと我が愚父が申しておりますが・・それはシャーロット様のお心次第でございます」
魔物盆地と言われた地に転移させられたニホン人は、当初、羊のように穏やかであったが、外敵から、武力で身を守っていくうちに、凶暴な祖先の血が蘇って来た。
蛮族の血が蘇った。
室町時代の日本人は、立小便で刃傷沙汰。ソコツ者と笑われたからと田舎者が多数上京して市街戦が起きようとした事例、落ち武者狩りは勿論のこと、都市部でも、没落した家があれば翌日には民衆が狩りに来る。
そういった時代に近い精神状態になっていた。
しかし、何故か、ミカドに対しては、敬意をしめす。ミカドの皇居はロクな警備もなかったが、誰も襲わなかったと伝えられる。
「わかった。でも今は、この状況を何とかしなければならないわ。それに貴女方のことを知らなすぎる。貴女方のことを学びたい」
「ええ、勿論です。これから建てる別館でアーカイブを使えるように手配いたします」
「ミヤさん」
センパイが、ミヤの名を呼ぶ。
「私は、もっと、シャーロット様のお役に立ちたい。おそばにいたい・・・今の話全然わからなかった。もっと、メイドの修行をしたい・・何をすればいいのかわからないのです」
「フフフフ、さすが、センパイです。では、シャーロット様と一緒に学びましょう」
スペンサー家に最新映像設備が備わっている別館が建てられることになった。
最後までお読み頂き有難うございました。
ここに出てくる日本人観は、「喧嘩両成敗の誕生」講談社刊を参考にさせて頂きました。




