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第10話 叱られたニコライと命拾いした悪徳貴族

「バカモノ!ニコライ!婚約者とのお茶会をすっぽかすとは何事だ!」


執務室で、伯爵の怒号が響く。

両隣には、妻と、貴族学園卒業間近で、領主教育を受けているニコライの兄とその婚約者がいた。


「僕は、スペンサー家に入るために、使用人たちと交流してました」


「・・たわけ。従者から、義妹の部屋に入ったきりと聞いたぞ。一体、何をしていた」


ニコライは、如何にシャーロットが嫌われていて、僕という者がありながら、高位貴族とこれ見よがしにチヤホヤされているのを見せつけられていると説明したが。


「ニコライ、それはだな。シャーロット嬢は、元々、人気だったのだ。お前が、義妹とべったりなのを見て、チャンスと思って近づいている貴公子がいるだけの話だ。シャーロット嬢はお前に遠慮して、誘いを断っているよ・・」


兄は呆れながら、父にも説明するように、ニコライを諭す。


「しかし、シャーロットは、肝心な婚約者の義務を果たしていません。メロディが代わりに婚約者の義務を果たしているだけです。やましいことはありません」


「まあ、ニコライ殿、婚約者の義務とは?」

兄の婚約者は、戸惑いながらも尋ねるが・・


「はい、メロディから、貞操を失わずに、欲望を処理し合う術を教わりました。シャーロットは拒否しました。義姉上も、兄上とされてますよね?」


「ヒィ、気持ち悪い-」

婚約者は兄の腕にしがみついた。

「シャーロット様が拒否するのは当たり前ですわ!普通の婚約者は・・・その手をつないだり。キス・・軽くキスまでですわ!」


「「「・・・・・」」」

・・・教育を失敗した・・ニコライは純粋だ。シャーロット嬢と幼いころは相性が良く。いつも、シャーロット嬢は、ニコライの後ろをついて回っていたが、大きくなったら、純粋が馬鹿と裏目に出たか。

しかし、幼い頃の記憶は大きい。まだ、シャーロット嬢は、ニコライに遠慮して殿下の誘いすら断っていると聞いた。

なら、


「ニコライ、次のシャーロット嬢のお茶会まで、屋敷を出るな。早急に倫理と性教育をしてくれる教師を手配する。それと他の学科の勉強もしろ」


「そんなー」


「お前はシャーロット嬢と仲違いをしてから、成績が落ちている。全てEではないか」


父上は何もわかっていない。父上に知られないように、手紙で友人たちと連絡を取って断罪をしてやる。

この外出禁止令が、情報遮断になり、不幸な結果になる。ニコライにとっての不幸な結果だ。




☆☆☆とある侯爵家執務室


「旦那様、当家の分家筋の令嬢が12名、同じ日に病死と発表されました。直前に参加したお茶会を主催した家門は・・」


「捨て置け」


侯爵は、書類から目も離さずに、執事の報告を聞いた。

分家筋と言っても、従兄弟の妻の兄弟の家とか、勝手に、儂の家門を名乗ってすり寄って来て困っておるわ。儂が認めた分家筋以外は、どうでも良い。しかし、数は力だ。一応・・・


侯爵が、考え直す前に執事が意見具申をする。


「調査だけは・・された方が宜しいかと」

「そうだな。お前の言う通りだ。手配しろ」

「はい」


この男は悪徳貴族と名高いが、部下の意見を聞くだけの器は持っている。

「どうせ、乱痴気バーティーで事故にあったのだろう」

「旦那様、もう一つ、案件がございます。相談が寄せられています。伯爵家の乗っ取りです。全面的な後ろ盾が欲しいと、手紙が来ております」


「久々だな。めぼしい利権があれば半分寄越してもらう。それが条件だ。一体、誰だ」


「旦那様の遠縁に当たるパーマス子爵家の五男、モーゼンと言う男です。入婿で入った家の跡取りを愛人の子に代えたいとのこと」


「その男、全く知らんぞ。でも、良い。して、乗っ取る伯爵家の家門は?うっとうしい寄親がいたら面倒だ」


「はい、スペンサー家です。独立した家門でございます」


「・・・・」

侯爵は、黙ってしまった。


「令嬢たち12名が病死した直前に参加したパーティはスペンサー家だろう?」


「はい、その通りでございます。旦那様・・」


「そのモーゼンとやらの手紙、封を切らずに送り返せ!お前も付いてこい。息子も連れて来い!」


「は、はい」


侯爵は屋敷の裏手にある。小さな森の中に、息子と執事を連れてやって来た。

森の奥まで来ると、大声で叫ぶ。


「精霊殿、当家は、スペンサー家、乗っ取りに関与しません。断りました!当家門は大きすぎて、勝手に儂の後ろ盾があると吹聴する輩が多くて困っています。モーゼンと当方、一切関係ございません!・・」


「父上、何をして・・」

「旦那様・・・」


二人は戸惑うのも無理はない。精霊は、こんな人の手が入った雑木林にはいない。原生林にいるとされている。イセ国の民が精霊の末裔と言われているが・・同じ人ではないのか・・・


ガサガサ、と草むらから、数十人の人々が出てきた。


頭は鉄兜をかぶり、目には、ドワーフが、鍛冶をする時に付ける保護具用の眼鏡。

手には奇妙な魔法杖を全員持っている。中には大筒を携行している者もいる。全身は黒っぽい騎士の野戦服のようなものとしかこの国の人には見えない。

イセ国の完全武装の小銃2個班である。


「フフ~ン、お前が、侯爵なの?姉上に確認するまで、この場で待て、ポケットに手を入れたり、怪しい行動をしたら、殺すよ」


(ゲ、イセ国の外道姫アキが、儂の屋敷の裏手にやっぱりいた・・)

侯爵は間一髪で助かったと安堵したが・・・目の前の脅威に釘付けである。

対応を間違うと即死もあり得る。


(甲、甲、乙、・・・侯爵が来ました・・・・・・・)

しばらく、アキが通信機でやり取りすると、


アキは残念そうに皆に命令する。

「皆、撤収だよ。へリに連絡を、帰るまでが作戦だよ!」

「「「了解!」」」


「「「!!!」」」

侯爵家の3人は唖然と、立っているだけしか出来ない。


上空から、空飛ぶ魔道機械が、3台ほどやって来て、彼らの上空に留まっている。

乗り物から、縄ハシゴが降り。精霊たちは登っていく。


アキは、最後に乗るつもりだ。銃を3人に構えたまま警戒している。


「そうか~いつも林とかから、攻撃していたから、わかっちゃったか。作戦の見直しが必要だね。貴方は手強いね」


アキは縄ハシゴに手を掛け。銃を3人に向けて構えたまま。空に消えて行った。


「父上、これは一体」


「お前たち、危なかった。彼らがスペンサー家の直系を守護する精霊たちだ。精霊界からやって来た精霊の末裔と言う者がいるが、貴族社会を生き残るにはあれらを知っておいた方がいい・・・奴らがいるから、帝国はこの国を狙わない。強力な武力を持っている」


「はい・・父上、あの機械を見ただけでわかります」



数時間後


「旦那様――」

「お父様――」


侯爵の妻と娘が帰ってきた。彼女らは今年入学する貴族学園に必要なものを揃えるため街まで、お出かけしていた。


怪しい者たちが、馬車の周りをウロウロしていたが、途端にいなくなった。

その時刻は、侯爵がアキたちと接触した時間と同じ・・・


「旦那様、護衛を増やして下さいませ。周りを囲まれて、怖かったですわ」


「大丈夫だ。もう、大丈夫だ。泣くでない。全て、終わった」


「クリスチーネ。学園に入学したら、スペンサー家の平民ではない方の令嬢、シャーロット様に、必ず挨拶に行くのだよ」


「お父様、有力な家門ですの?」


「ああ、国王陛下と並ぶ重要人物だ。いいね。ドレスを買ってあげよう」

「はい。父上、それに合うネックレスも・・お願い」

「うむ。良いだろう」


「そうだ。お前もドレスを買いなさい。今日の恐怖を忘れるのだ・・すまなかった」

「旦那様・・・貴族ですもの・・わかっておりますわ。ドレスよりも、オペラに一緒に行きたいですわ。しばらく、一緒にお出かけをしておりません」

「ああ、わかったとも、明日行こう!」


悪徳貴族と名高い侯爵であるが、家族や身内には優しかった。

シャーロットの父、モーゼンとは真逆な存在だ。









最後までお読み頂き有難うございます。

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