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第七十七話 ダンスパーティの夜


 いっぽう、時は少しさかのぼり――。


 エリアスに腕を引かれるままに講堂へと続く野外の回廊を通り抜けると――アキの視界いっぱいに、開け放たれた広大なホールのきらめきが広がった。


 天井を見上げれば、アーチを連ねた梁からいくつものシャンデリアが下がっていて、そこには火の魔法で灯されたらしいたくさんのランプが明々と光り輝いていた。


 その降るような光のもとで、思い思いに美しいドレスや礼装で着飾った学生たちが、お互いの手を取りあって談笑している。


(す、すごいっ……!)


 パーティの華やかさに圧倒されてしまって、扉口に立ったままぽかんと立ち尽くしてしまったアキに、傍らのエリアスがやさしくほほ笑みながら腕を引く。


「さあアキ、行こう。ほら、みんな俺たちを待っていてくれたみたいだよ」


「え?」


 エリアスに言われて呆然としていた意識を取り戻すと――姿を現したアキたちに気づいた学生たちが、待ってましたとばかりに拍手喝采をしてくれた。


「勇者様―――――!」


「アキ様―――――!」


 わあああ、っと大歓迎の様子で学生たちから歓声があがる。


 う、うわあ、すごい、すごいっ、うれしい……!


 学生たちが向けてくれる輝くような笑顔に、アキはもう胸がいっぱいになって、パーティ開始早々に口もとに両手を当てて涙ぐんでしまう。


 感極まっているアキの頭を軽くなでたエリアスが、彼女の腕を引いて、拍手の音が鳴りやまない会場の中へと足を踏み入れた。


 そうして、二人で寄り添ってひとつの丸テーブルの前まで来ると、エリアスはそこに置かれていたはちみつ酒の入ったグラスをそっと手に取り、自分たちに注目している会場の人びとをぐるりと見回して言う。


「みなさん、今日はすばらしいパーティに私たちをお招きくださり、ありがとうございます。彼女ともども、とても感謝しています」


 そこでまた拍手が起きて、それがひととおり収まったのを確認してから、エリアスがさらに口を開いた。


「それでは、私――今代勇者エリアス・リーランドが、僭越ながら乾杯のあいさつをさせていただきたいと思います。みなさん、お手にグラスをお持ちください」


 エリアスがみんなに言うと、雑談していた学生たちが静まり返り、みんな各々に手前にあった果物ジュースや、お酒が飲める歳の高学年の学生ははちみつ酒やブドウ酒を手に取った。その様子をきょろきょろとうかがっていたアキも、エリアスと同じテーブルに置いてあったはちみつ酒にそっと手を伸ばす。


 会場の皆がグラスを手に取ったことを確認したエリアスは、グラスを高々と持ち上げて、よく通る朗々とした声で高らかに言った。


「学府の創立とこれからのますますの発展を祈念して――乾杯!」


「――乾杯!」


 エリアスの声に続いて、ホールのそこかしこから若く元気な学生の声があがり、次々とグラスを打ち鳴らす涼やかな音が響く。


 それを見計らっていたかのように、入り口の桟敷席で待機していた六名ほどの楽団が、調弦を終えて美しい音楽を奏で始めた。


 海鳴りのようにみんなの談笑が始まる会場内で、アキはその様子を眺めていたエリアスにグラスを向ける。


「乾杯! エリアスってば、いつの間にか乾杯の挨拶を頼まれてたんですね!」


「うん。少し前に学長のカルヴァン先生から頼まれていてね。なんとか上手くできてよかったよ。――そういえば、レオとヨハンはまだ来ていないのかな?」


 きょろきょろと周囲を見渡すエリアスに倣って、アキも会場をぐるりと目で探してみたけれど、レオとヨハンらしき人影は見当たらない。


 二人がいれば、おそらく学生さんたちに囲まれて目立つと思うから、本当にまだ会場には来ていないのだろう。


(……二人のことだから、明日の転移魔法の準備とかしてくれてるんだろうな)


 実際レオは魔法陣の最終チェックがあると言っていたから、もしかしたらヨハンもそれに力を貸しているのかもしれない。


(そうだとしたら、頑張ってくれている二人の分も、私が勇者パーティの代表をしっかり務めなくちゃ……!)


 そう奮起して、次々とエリアスと自分に挨拶に来てくれる学府の偉い方や、学生の会長さんや副会長さんと談話をしていたときだった。


 その挨拶ラッシュが一区切りついて、ふと楽団の奏でていた曲が終わったのを耳に入れたエリアスが、おもむろにアキに向き直る。


「……うん、そろそろいい頃合いかもしれないね。アキ、よければなんだけれど――」


 そこまで言って、彼は自分の胸に片手を当てて、アキに向かって軽く頭を下げた。


「――俺と一曲、踊っていただけますか?」


 え、えええっ!


「わ、私ですかっ!?」


「もちろん。だって、この旅に出るときに一緒に踊ってくれるって約束したじゃないか。俺、じつはすごく楽しみにしていたんだよ。君の手をとって踊ったら、きっと楽しいだろうなと思って」


 エリアスの言葉で思いだされるのは、王国の王城を出てすぐのときにヨハンたちと話した、エリアスはご婦人の大行列ができるくらいにダンスが上手だということ、それから、機会があれば踊ってほしい、とエリアスから言ってもらえたことだった。


 あのときは、本当にエリアスと踊る機会なんてないだろうと思っていたのに――。


(……なんか、懐かしいなあ)


 当時は、エリアスたちと旅に出たばかりで、まだみんなと今ほど打ち解けていないぎこちない関係だったなと思いだす。


 それからいろいろなことがあって、お互いに絆を深めて、本当に仲間といえるような信頼関係のある間柄になって――それで、エリアスとは恋人同士になったのだ。


 それを考えると、あのときの彼との約束をここで果たすんだと思えば、恥ずかしがることなんてないのかもしれないと思えた。


 そう結論づけたアキは、恥ずかしさをぐっと飲みこんで、差しだされているエリアスの手に自分の手を預ける。


「き、緊張しますけど、私でよければ、エリアスのダンスのお相手をさせてもらえたらうれしいです! エリアスとあの日の約束を叶えられるって思うと、なんかこう、上手く言えないんですけどしみじみくるものがありますよね」


 アキがにっこりと幸せ満面の笑みを向けると、エリアスはこらえかねたようにぐいとこちらの腕を引き寄せて、一瞬だけ強く抱きしめた。


(――わっ、ちょっと、エリアス!)


 真っ赤になったアキがなにか言うよりも早く、彼はそのままこちらの手をとると、颯爽とフロアの中央に進んでいく。


 エリアスとアキが踊りの輪の中に入った途端、楽団が軽快な三拍子の曲を奏で始めた。


 自分たちの周りには、慣れたようにダンスを踊る男女の学生たちの姿がある。


(わ、私、あんなに上手に踊れないんだけど……!)


 いざ本番を前にして怖気づいてしまって、アキはおろおろと目の前のエリアスを見上げた。


「あ、あの、エリアス! 私、ダンスの練習をしたとはいえ、全然、その、慣れてなくてっ……!」


 彼の足を踏むどころか、もしかしたら足を引っかけて自分が盛大に転んでしまうかもしれない。


 青ざめた顏で言うと、エリアスはアキを支えるように肩の後ろに手を添えてから、軽くほほ笑んだ。


「心配ないよ。俺に全部任せて、君は楽しそうににこにこ笑っていてくれるだけで大丈夫だから。それに、君は魔物を相手にあんなにも機敏に戦えるじゃないか。だから、ダンスだって上手に踊れるよ」


「そ、そうかなあ……」


 そういう問題なのかなあ、と自信なげにうなだれていると、エリアスが明るい調子の曲に合わせて足を踏み出した。


 すぐに音楽にのって弾む体に、アキは目を丸くする。


(エリアス、すごい……!)


 踊り始めてすぐにわかった。エリアスが背中を支えてくれる手に身を任せているだけで、彼がごく自然にリードしてくれて、一回転、二回転と、くるくると軽やかに景色が回り始めたのだ。


 まるで体に羽根が生えたように、自然と足がステップを踏んでいく。


(うわあ、すごい、楽しい……!)


 こんなにもダンスが楽しいものだなんて知らなかった。


 きっと彼の技術が上手だから、素人の自分でも楽しいと思えるほどに踊りやすいのだろう。


 最初は強張っていた自分の表情も、自然と笑顔がこぼれて、至近距離で手をとってくれているエリアスに踊りながらほほ笑みかけると、彼も翠色の瞳を細めて笑み返してくれた。


 ――なんか、すごく幸せだなあ……。


 こうして彼と笑いあえるのが奇跡のようだと思える。


 彼は、遠い世界を隔てて出会えた、自分の誰よりも大切な人なのだ。だから――。


(……守らなきゃ。エリアスが、この世界のために犠牲になることがないように)


 この先、魔王城へ行ってなにがあったとしても。


 彼を絶対に失わない――そう心に決意を固めるように、アキは、手を取り合っている彼の手に、きゅっと力を込めた。






 そうして曲が終わり、息を弾ませながら晴れやかな気持ちでエリアスとお辞儀しあったところで、自分たちの踊りを見ていてくれたらしい女子学生たちが、おずおずとこちらに歩み寄ってきた。


「あ、あのっ、勇者様、アキ様、ダンス、とても素敵でした……! それで、あの、勇者様、もしよろしければなんですが――」


 女子学生のうちのひとりが、ちらちらと、顔を赤らめながらエリアスを上目づかいに見上げる。


 ああ、これってもしかして――。


 エリアスとアキは顔を見合わせると、お互いに察したようにうなずきあって、アキは自分の場所を譲るように一歩下がった。


 はっとする女の子に、アキは、どうぞ、と言わんばかりに手で示してみせる。


(きっと彼女、エリアスと踊りたいんだよね!)


 エリアスは、みんなの憧れの勇者様で、あれだけ素敵に踊れるのだから、みんな一度は彼にダンスの手をとってほしいと思うはずだ。


 エリアス自身も女の子の気持ちを察しているようで、自分の胸に片手を当てると、そっと反対の手を彼女に差しだしておだやかにほほ笑んだ。


「もしよろしければ、俺と踊っていただけますか、お嬢さま」


 彼がそう言った途端、きゃあああ、と女の子たちの声をひそませた悲鳴があがって、それと同時に、エリアスに手を差し出された女の子はみるみるうちに頬を赤く染めあげた。


(ゆ、勇者様、やっぱり絶大な人気だなあ……!)


 女の子は感動のあまり瞳を涙ぐませて、エリアスをまっすぐに見つめながら満面の笑みを浮かべる。


「は、はいっ! 勇者様、ぜひよろしくお願いします……!」


 エリアスは女の子の手をとって、二人は並んでフロアの中央に進んでいく。


「……勇者様って本当に素敵な方ね!」


「本当! 女神様に愛されたあのような方が、きっと勇者様に選ばれるのね」


 その背中を見送っていた他の女子学生たちが、うっとりしながらうなずき合っている。


(……エリアスは、誰からも慕われている、みんなの大切な勇者様なんだよね)


 みんなにとってかけがえのない存在だからこそ、絶対に彼をこの世界から失ってはいけないのだと思う。


 そして、そんな彼を一番近くで守れるのが、勇者パーティの仲間である自分たちなのだ。


(だから私たちは、エリアスを守れるくらい、誰よりも強くならなければいけないんだ)


 みんなの大切な英雄が、いつまでも、ああやって笑っていられるように。


 女子学生と踊りながら楽しげに笑っているエリアスを、決意を新たにする思いで見守っていると、ホールの入り口のほうから今度は男子学生たちの歓声が響いた。


「ああ、レオ様だ!」


「レオ様、お仕事お疲れさまです!」


「ヨハン様もご一緒されていたのですか?」


 わっと集まった男の子たちの中心で、礼装を着たすらりと背の高いレオと、その隣に会場のあかりを受けてきらきらと光を放っている銀髪のヨハンの姿が見える。


(よかった、二人とも間にあったみたい……!)


 明日使う転移魔法陣は、きっと確認が一筋縄ではいかないような複雑なものだろうから、もしかしたらパーティの時間内に戻ってこられないのではないかと思ったのだ。


 けれど、優秀な二人は、きっと他の人が見たらびっくりするような早さで確認を終わらせたのだろう。


 アキは、わくわくと胸が高鳴るままにレオとヨハンに向かって大きく手を振る。


「レオ! ヨハ―――――ンっ!」


 大声を出したアキに気づくなり、レオは「おー、アキ!」と言いながら気さくに笑って手を振り返してくれて、ヨハンは「大声を出さないでほしいんですが」とでも言いたげに頭を抱えている。


 アキはドレスの端を持ち上げると、慣れないヒールの高い靴でうっかり転んでしまわないように気をつけながら、小走りで二人のもとに駆け寄った。


「二人とも、間にあってよかった! ええと、私なんかが聞くのもおこがましいんですけど、明日の転移魔法、上手くいきそうですか?」


 聞くと、レオとヨハンはお互いの顔を見合わせて、レオが軽くうなずいた。


「――まあ、大丈夫……だろうな。このままなにもなければ」


「どういうこと?」


 首をかしげると、ヨハンが代わりに答える。


「なにか予期しない出来事が起きなければ、大丈夫ということです。まあ、貴方は余計なことは考えずに、転移魔法の範囲からはみ出さないようにおとなしくしていていただければ問題ないです」


 はみ出すとひとりだけとんでもない座標に飛ばされますからね、とヨハンが冗談めかして笑う。


 アキは、もう、と少し頬を膨らませてみながらも、内心では、自分がその『予期しない出来事』を怖がらないように冗談でごまかしてくれたことはわかっていた。


(……やっぱり明日は、そう簡単に上手くいかないかもしれないんだ……)


 そうだとしたら、自分もただぼんやりしてレオの転移魔法に身を任せるだけじゃなくて、そのなにか予期しない事態が起きたときに、きっちり戦えるように気を引き締めて臨まなければならないのかもしれない。


 がんばらなきゃ、とひっそりと気合いを入れていると、礼装の襟元を整えながらヨハンがこちらに視線を向けた。


「それでは、僕は『神殿』からのゲストという扱いなので、これから有力者にあいさつ回りに行ってきます。……これも仕事のうちですから、仕方ないですね」


 肩をすくめてみせるヨハンに、アキは笑顔で手を振る。


「いってらっしゃい、ヨハン!」


 それに応えてヨハンはふっと口角を持ち上げると、さっそうと踵を返して、人びとが集まっている雑踏へと足を向けていった。


「ヨハン、お勤め大変ですね」


 その場に残されたアキが、同じように隣でヨハンを見送っているレオを何気なく見上げると、いつの間にかこちらを見ていたらしい彼と思わず目が合ってしまった。


 アキが首をかしげると、彼はどこか気恥ずかしそうに慌てて視線をそらしつつ、後ろ頭をかきながらぼそぼそと言う。


「……お、おまえさ、その格好――」


 あ……。


 あらためて自分の格好を見下ろして、自分には豪華すぎるドレスを着ていたことを思いだしたアキは、苦笑いで顔の前で手を振った。


「あ、ご、ごめんね……! 似合わないよね、私に、こんな素敵なドレス……」


「――いや」


 レオはアキの言葉をさえぎるように言うと、相変わらず視線はそらしたまま、やや照れた様子で小さくつぶやいた。


「……似合ってる。……おまえがそんなに綺麗だと、惚れ直しちまうじゃねぇか」


 へ……?


 アキは、最初自分がなにを言われたのか呑みこめなくて目をまたたいたあと、急激に顔が熱くなってきて慌てて顔を伏せる。


 どきどきとうるさいほどに胸が高鳴ってしまって、目の前にいるレオの顔をまともに見られない。


(お、お世辞だと、わかっているとはいえ……)


 さすがに不意打ちで言われると、照れてしまうというか……。


 そのまま、なんとなく二人でお互いにかける言葉もなく無言になっていると、おもむろにアキの視界にレオの片手が差しだされた。


「――はい」


「へ?」


 きょとんとしてレオの手と彼の顔を交互に見やると、彼は普段あまり見せることのない緊張した面持ちで、切れ長の紫の目をまっすぐにこちらに向ける。


「お、俺と一曲、踊っていただけますか?」


 え、えええっ!?


 低くかしこまった口調で言われて、アキは思わずどきりと心臓が飛び跳ねた。


「え、と、レオ、私と……? 本当に?」


 びっくりしてしまって、アキは自分を指差したまま彼の顔を見返す。


 だって、レオはエリアスに負けず劣らず背が高くて、美男子で、学府の学生たちの誰もが憧れるような素晴らしい魔法使いで――。


 それこそ、彼と踊りたい女子学生が山のようにいるはずだ。


 おろおろして言葉に詰まっていると、レオは少し拗ねたようにそっぽを向く。


「なんだよ。俺だって、ステップくらいなら知ってるんだぜ。エリアスみたいに上手くは踊れねぇだろうけどな。それで俺とは踊れねぇって言われたら、どうしようもねぇけど」


「そ、そんなわけない……! た、ただ、ほら、レオってかっこいい、から、どきどきしちゃうな、というかっ……!」


 ああああ、自分、なに言ってるんだろう……!


 なかば混乱していると、それを聞いたレオが耳もとを赤くする。


「は、はあ!? なに言ってんだよ! だったらおまえだって可愛いだろうが!」


「わ、わ――――、いきなりなに言ってるんですか!」


 恥ずかしいっ、と両手で顔を覆って、アキは床に身をかがめる。


 どうしよう……、とその場にうずくまったまま動けないでいると、しびれを切らしたらしいレオが、アキの手をつかんでそっと引っ張りあげた。


「……まあ、恥ずかしいけどさ、こういう機会でもねぇとおまえと踊ることなんてねぇだろ。だから、おまえに片想いの俺に免じて、一曲だけ踊ってくれよ」


 片想い……。


 その言葉に、なにも返事ができなくてうつむくアキに、レオは、に、といたずら気に笑いかけると、アキの手をとってホールの中央へと進み出た。


 そうして、少し緊張した顔つきでアキの背中に手を添えると、陽気で軽快な音楽に乗って驚くほど上手に踊りだす。


(わ、レオ、ダンス上手い……!)


 ステップくらいなら知っている、と言っていた彼だけれど、持ち前の運動神経のよさと器用さからか、男性らしい力強さと軽やかさでアキの体をくるくると回していく。


 舞曲に乗って踊るのが楽しくて、自然とレオと笑顔を向け合っていると、踊りの途中で彼がふと表情をあらためた。


「――アキ、俺、明日頑張るから」


「え?」


 上手く聞きとれなくて訊き返せば、レオが真剣な眼差しを向ける。


「俺、明日、絶対にみんなを魔王城まで送り届けてみせるからさ。だから――」


 そこまで言って、レオはアキの手をつかむ手に、そっと力を込めた。


「だから、上手くいったら、よくやったなって褒めてくれよ。おまえが褒めてくれるだけで、俺、なんつーか、すげぇ嬉しいからさ」


 へへ、と、レオがかわいらしく照れ笑いをする。


 う、うわあ、レオ、かわいい……!


 それを見た自分は、なんだかじんとするほど胸がいっぱいになってしまって、目をうるませながら勢いのままに彼に抱きついた。


「うん! 明日頑張ろうね、レオ!」


「――うおあっ、こんなところで飛びついてくんな! っつーか足踏んでんじゃねぇか、アキ!」


 痛ぇよ、と照れ隠しか早口で怒鳴りながらも、しっかりとこちらを受け止めてくれるレオに、アキは声をあげて笑いながら笑顔を向ける。


 ――明日、頑張ろう、みんなで。


 たとえ予期しない出来事が起きることがあったとしても、みんなで力を合わせれば、きっと乗り越えられるはずだから。


 私たちの旅の大きな第一歩を踏み出せるように――アキは、そう祈りながら、ダンスパーティのつかの間の時間を思いっきり楽しむのだった。


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