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裏話5_隣の女の子

 とうとう私の出番が来たわね!! やっぱり私のことを話さなくっちゃあ始まらないわ。とは言ってもどこから話そうかしらね。流石に世界が始まった時の事から話してたんじゃあ時間が足りないものね。それじゃあ私がこの世界に来てからのことを話そうかしら。


 私はとある理由でこの世界に来たわ。理由は何って? そりゃあ興味と好奇心と暇つぶしよ!! ここは私の元いた世界と違って色々な生き物がいて面白いわね。獣人なんて初めて見たわ。永いこと生きているくせにこれしきの事で新鮮味を感じることが出来るなんて思わなかったわ。頭の上からピョンと出た耳なんて可愛いじゃない。今度光龍にでも真似させてみようかしら。

 私はこの世界をブラブラしてみようと思ったわ。この世界には色々な種族が繁栄しているけれど、一番面白そうなのは人間ね。他の種族と違ってあまり繁栄していないような感じもするけれど、他にはない活気があるわ。ただ平和に生きているだけの連中なんて見たってつまらないじゃない?


 そんなわけでとりあえず街に入ってみたわ。検問は面倒くさそうだから無視して進んで、焼き鳥を大量に買ったわ。お金はどうしたかって? ここから・・・そうね、向こうは西の方かしら? あっちの方に盗賊っぽい連中がたむろしていたから全員ボコボコにしてお金と、お金になりそうなものを根こそぎ拝借したわ。あいつら結構貯めこんでてこの先1000年は暮らせるんじゃあないかって位もらってきたわ。もうね、ウッハウハよウッハウハ。でも1000年も同じ通貨が使えるとは思えないから後で持ち運びやすい金銀財宝に変えとかなくっちゃね。


 街を歩いて情報収集してみると、王家が滅亡の危機にあるだのギルドのハゲがドラゴン倒したことあるだの耳に入ってくるわ。色々と情報を集めようとしている私が言うのもなんだけど、皆よくもまあ外で色んなこと喋ってるものね。喋りながらじゃないと話せないのかしら。

 まあ、そんなことはどうでもいいわね。細かい所は後で色んな所に忍び込んで調べてみるとして、私は人形劇場とか言う娯楽施設を見つけたわ。実際にあった話しとか御伽話とかを人形で演じているみたい。どうせ子供向けのチンケな見世物なんでしょうけど一度見てみるのも悪くはないかもしれないわね。


 実際の劇を見て私の意見は変わったわ。チンケなんてもんじゃないわね、これは。まるで人形が生きているみたい!! 色々な所を見ていると、たまにこういった変態的な技術を目にすることがあるから面白いわよね。

 今回の劇はジグラタルとか言うでっかい蛇が暴れまわったっている話ね・・・美味しいわねこの焼き鳥。そいつが狂って暴れまわったせいで塩加減が絶妙ね、人類が滅びかけたって言うけれどそんなのに追い詰められるようじゃあもっと沢山買ったほうがいいわね、繁栄はあまり期待できないわね。ま、私としてはこの世界の流れを変えるつもりはないわけだし、滅びるなら滅びるで何とかしようとは思うけどやっぱり放っておけるなら放っておくのが一番よね。


 さて、今度また違う劇をやるみたいだしまた見に来ましょう。そう、そして忘れちゃいけないのが焼き鳥の買い溜めよ。さっきはつい忘れてて・・・いえ、私が忘れるなんてあるわけがないわ。落ちても落ちてもなお落ち切れないほどの深い思想を持ってやらなかったけど、買い物の醍醐味と言えばやっぱり値下げ交渉よね。別にお金は沢山あるのだから値下げなんてしなくてもいいのだけれど、買い物は楽しまなくっちゃあいけないわ。というわけでそこの屋台に突撃よ!!


 「おっちゃん、塩100本買うから半額にしなさいな。」


 なんて好条件なんでしょう。お店としては沢山売れるしこっちは安く買える。正に一石二鳥というやつだわ。私としてはおっちゃんが泣いて喜ぶさまが目に浮かんだわけだけど、意外な反応が返ってきたわ。


 「はっはっはっ、冗談言っちゃあいけねえぜ、嬢ちゃん。」


 なによこのおっちゃん、考える頭が無いんじゃあないかしら? いえ、これがこのおっちゃんの戦略というやつね。おっちゃんとしては少しでも高く売りたいからこんなこと言ってるに違いないわ。ここは押し切られないように強気に行かなくっちゃね。


 「あら、私はいつでも本気よ・・・?」


 「ひいいいぃぃぃっ、なっなんて威圧感だ!?」


 少し強すぎたみたいね。だけどこれはチャンスよ。相手が引いた所で一気に攻め込むのが勝利のカギになるのよ。相手が引いてくれたんだからもうちょっと強気に言ってもいいんじゃないかしら?


 「さあ、どうするの? 塩100本にタレ100本、献上する気になったかしら?」


 「なんかひどくなってるし!?」


 あらバレた。流石に強く出過ぎたかしらね。だけど私に引く気は毛頭ないわ。これは戦いなのよ。バレたからといって尻込みしていちゃあ相手につけ入る隙を与えるだけだわ。・・・これは長期戦になりそうね。いいわおっちゃん、どこまでも粘ってやろうじゃないの。


 「どうした、なにがあった!?」


 チッ、衛兵にバレたか。流石にただならぬ雰囲気を感じたようね。私達の戦いを見てなんにも感じないようなら衛兵なんかやめて道端で転がって腐っていればいいんだわ。


 「あぁっ、衛兵さん! 実はカクカクシカジカでして・・・」


 おっちゃんが説明を始めると衛兵達が私の事を怪訝な顔で見始めたわ。失礼しちゃうわね、こんな美少女に対して。


 「なにっ、怪しい奴だ。ちょっと詰所まで来てもらおう!」


 さんざん説明聞いておいてから「なにっ」って何なのよ。随分と個性的な衛兵さんだけど私は付いて行くつもりなんてないんだからね。私のモットーとして衛兵からは逃げると決めているのよ。なぜかって? 追いかけてくる衛兵をからかうのが楽しいからに決まっているじゃない。


 「ふっ、アンタたちなんかに捕まるこの私じゃあないわ。」


 私は逃げ出したわ。本気で逃げると直ぐに振り切っちゃうからあんな連中でもついて来れるようなスピードで逃げるのがコツよ。


 「あっ、待てっ!」


 衛兵達が私を追いかけてくるわ。おっさんどもがこの美少女を追いかける図は、傍から見れば変態が暴走したように見えるでしょうね。だけど安心しなさい、私は捕まらないわ。だってこいつら遅すぎるんだもの。鬼ごっこをしている間せいぜい私を楽しませなさいな。


 「あははははっ、捕まえてごらんなさい!!」


 さあ、どこまで追いかけてこられるかしらね。過去の最高記録は1時間ほど本気で走っただけでバテたヘタレだったわ。あなた達が一体どこまで追いかけてこられるのか楽しみね。

 私は衛兵達に石や土を投げて、必死に追いかけてくる表情を楽しみつつその場を後にしたわ。


 ・・・結局10分も持たなかったわね。衛兵のくせに普段一体どれだけ怠けてるのかしら。あれじゃあいざという時に何も対処できないわよ。例えば大量の羽虫が街を覆った時にどうするつもりなのかしら?

 まあそんなことどうでもいいわね。羽虫なんて放っておいても死にやしないわ。とりあえず私は当初の予定通りこの世界のことを調べているわ。別に調べなくても構わないんだけど、こっちも暇なのよね。


 この世界には世界のあちこちで反映している存在、人間とか獣人とか龍族とかの他に力を持った存在が結構いるらしいわね。世界を滅ぼせるような力を持った奴らが沢山いるけれど、未だ世界が健全なのは魔王が管理しているからみたいね。この魔王って調べて見る限りじゃああれね、あれ。・・・呼び方考えてなかったわ。あら、もうすぐ人形劇の時間ね。今日はどんな内容なのかしら?


 私は焼き鳥を食べつつ人形劇を鑑賞しているわ。今回はでっかい蜘蛛が出てきたわ。そいつが人間の国を襲ってその国の騎士が戦いを挑むと言う内容なの。騎士は弱いけれど、皆の力を分けてくれ、みたいな感じで強くなって蜘蛛に挑むのよ。ま、結局歯が立たなかったみたいだけどね。この蜘蛛は蟲老って言って12柱の内の1角らしいわ。あんなでっかい蜘蛛ここらへんじゃあ見かけなかったけど、今度探しに行ってみようかしら? やっぱり変わったものを見るのって面白いじゃない。そういえばでかい蛇もいるって話ね。


 私が蜘蛛を見るか蛇を見るか悩んでいると、隣から淀んだ空気が流れ込んできたわ。見ると何やら女の子がマイナス思考に取り憑かれているみたいね。やだわまったく、そんな湿気た顔していたら焼き鳥がまずくなっちゃうじゃない。

 でも私は何となくこの女の子が不幸な目にあってきたのを察したわ。私ってば敏感だからそういうことわかっちゃうのよね。だから私は女の子の口に焼き鳥を突っ込んだわ。長寿の祝福がかけてある特別製よ。別に長く生きていればそのうちいいことがある何て陳腐なセリフを言うつもりはないけれど、やっぱり生きていなくちゃ何にも始まらないじゃない。

 私ってばいいことをしたわね。私の正体を気にした連れの男を適当にごまかして、マントを翻してかっこ良く立ち去り


 ポテッ


 コケたわ。

 ・・・な、何が起こったのかしら? この私が転ぶなんて一体どういった超常現象が働けばこんな結果になるのかしら? 恥ずかしいわ!! かっこ良く立ち去ろうとしただけに恥ずかしいわ!!

 でもせっかくだからこのままで行きましょう。

 この時私は四足歩行になったわ。肘と膝を地面につけながら、お腹はギリギリつけないように去っていくその姿ははまさしく孤高の狼。最早私を止められる者はいないわ!! ま、こんなことしなくっても誰も止められないでしょうけどね。


 私は街に出たわ。うふふふふ、見てる見てる、皆が私の事を見ているわ。いくら私が美少女だからって皆見過ぎじゃないかしら?


 「むむっ、そこにいるのは先日の少女!!」


 「何て面妖なことをしておるのだ、待ち給え!!」


 あら、焼き鳥屋で絡んできた衛兵だわ。性懲りもなく私を追いかけようというのね。ふっ、望むところよ。さあ今度は何分持つかしら?

 私は再び衛兵達と鬼ごっこを始めたわ。もちろん足で土をかけるのも忘れてないわ。あはははは、さあ捕まえてごらんなさい!!


 それから10日程経った頃かしらね。女の子が死んだのを感じたのは。


 別に死なんて普段から感じてることだからいつもなら気にしない所だけど、やっぱり多少なりとも私が世話をした子のことだしね、ちょっと気になったわけよ。それにあまり真剣にかけていなかったとはいえ私の祝福を超えて死んでしまうだなんて一体何が起こったのかしら? ちょっと調べてみましょうか。


 私は女の子が死んだ場所に来たわ。人形劇場で一緒にいた連中がいるけれど、とりあえず放っときましょう。ここで何が起こったのか調べるために土地の記憶を読み取ったわ。起こったばかりの出来事ならば案外はっきり読み取れるものなのよ。

 ここでは女の子が化け物に変わって暴れまくったらしいわね。化け物の変わる前に何かおかしな力が入ってきているのがわかるわ。その力自体はむしろ善意からくるものらしいけど、女の子がその力に触れた途端、力が変質しているわね。化け物になった原因はそれっぽいわ。

 そしてその後連れの男に斬られて死んだ、か。処置としてはやむなしと言った所だけど、連れを斬り殺すっていうのも辛いものがあるわよね。もっと詳しく調べてみたいけど魂は持ち去られてしまったようね。ちょっと追いかけてみましょうか。


 魂を追いかけていたらさっきとは違う空間に出たわ。そこには1人の女の子がいて、その横には何だかわからない物体があったわ。あれ一応、生きているみたいね。そしてその物体のすぐ側に、女の子の魂があったわ。さすが私、捜し物も難なく見つけるわね!! でもあれ、呪いがかかってるわね。


 「・・・さて、この魂どうしようかな?」


 変な物体があの魂の処遇を考えているようね。


 「とりあえず転生させなきゃどうにもならないじゃない。」


 女の子が提案したわ。あの子たちに特に悪気があるわけではないみたいだけど、あの魂をそのまま転生させるわけにはいかないわね。だから私は声を掛けたわ。


 「おやめなさいな。そんなことしたってその子がまた不幸になるだけよ。」


 「!! 誰!? この空間に出入りできる様な存在は限られてるけど、あなたのような存在は知らないわ!! それに私達に気づかれずに近づくなんて・・・あなた一体何者なの!?」


 「あらあら、何を言っているのかしらこの子は。・・・そう、普段から色んなことを妄想しすぎてちょっと調子に乗っちゃってるみたいね。これは矯正してあげないといけないわ。」


 私は女の子の頭を掴んでシャッフルしてやったわ。これで多少はマシになるでしょう。

 さてと、うつ伏せになって反省しているこの子はさて置いて、私は変な物体から魂を拝借したわ。


 「ああっ、ちょっと何するんですか!!」


 変な物体から話しかけられたけど一体どこから話しているのかしらね。まあいいわ、私はそんなこと気にするほど心が狭くないのよ。


 「あんたらこの子を転生させるみたいだけど、この子に呪いがかかっているのに気づいているのかしら?」


 「え、呪い!?」


 「やっぱり気づいてなかったみたいね。魂を扱えるくせにそんなことにも気づかないなんて未熟ね。」


 「ああう・・・その・・・僕達、魂には基本的に不干渉を貫いているもので・・・。」


 なるほどね、それも賢い選択かもしれないわ。それにしてもこの姿でこの口調って気色悪いったらないわ。


 「まあいいわ、教えてあげる。この魂にかかっている呪いは誰かがかけた、なんてものじゃあないわね。だってこの呪いからは敵意も悪意も、ましてや善意すら感じられない。人が魔法をかけるときにくっついてくる感情の欠片が一切入っていないのよ。これは自然発生した魔法によって呪われているのね。」


 「自然発生って、そんなことあるんですか?」


 「あるわよ。アンタは見たことないかもしれないけどね。魔力が風によって運ばれたり地形によって歪められたりして偶然魔法陣を形成することがあるのよ。規模のちっちゃいものならちょっと火が出たり風が強くなったりして大した影響はないんだけど、ひどい時には星が爆発したりすることもあるわ。」


 「うへぇ~、そんなことが・・・。」


 「この呪いは厄介よ。魂に強力に結びついているわ。魂の状態では何とも無いけれど、生を受けた後ある日突然効果を発揮するみたいね。この子が幸せになったり、幸せを掴もうとするとそれを打ち消すような不幸を呼び寄せる呪い。しかも一旦発動するとどんどん強くなっていくみたいね。」


 私はこの魂の記憶を読み込んだわ。魂には今まで生きてきた時の記憶が残っているものなのよ。

 この子が呪いを受けたのは大体3000年程前かしら。それから何度も何度も生を受けてきたけれど、どれ1つとしてろくな死に方してないわね。

 今回の生では・・・この子は獣人の作る村に暮らしていたみたいね。そこがある日奴隷商に見つかって、村人全員殺されるか捕えられるかした。この頃が呪いの発動時期かしらね。 捕えられた先ではひどい目に会ったみたいね。こいつら、まだ生きていたら殺しとこうかしら。

 ある日突然革命が起こって助かって、両親とも再会できた。そして国の支援を受けて食堂を始めたみたいね。良い国じゃない。食堂の経営も軌道に乗り始めて、憧れの人と知り合いになれて、これから幸せになろうという時に、両親が殺された。自分もどうなるかわからなかったけど、その時は助けられたみたいね。

 そこから憧れの人の力になりたいという想いが強くなって神官になって何か出来る事を探したいと思ったけど、教会の連中がまたひどい奴らだった。こいつらはとりあえず根こそぎね。

 そしてこの子が死んだ街に来たのは、旅行のためね。本人としては今までの人生を振り返って気力を取り戻したいなんて考えていたみたいだけど、やっぱりこの街に来るのは楽しみでもあったみたい。

 この街は・・・そう、楽しかったみたいね。憧れの女の人と大好きな人男の人と一緒に来れて、とても楽しかったみたい。でも楽しかった分、呪いが発動してから時間が経っていた分、莫大な不幸を呼び寄せてしまった。

 この子は夢の中で戦って皆を守っていたつもりだったみたいだけど、目が覚めたら自分は斬られていてもうすぐ死にそうになっていた。周りの状況を見て、自分の体を見て、そして自分が何をやってきたのかを自覚した時、絶望した。自分がやっていたと思っていたことと実際にやっていたことの差を自覚して、自分自身を嫌悪してしまった。謝罪の言葉を何とか伝えたかったけど、ろくな声が出ない。そんなどうしようもない状況で、とうとう泣いてしまったのね。泣くことは出来たから、ごめんなさいという想いを乗せて、泣き続けたのね。

 ・・・あなたに優しくしてくれた人達は、確かに運命を変えるような力があったみたいだけど、強くなり続ける呪いに抗うことは出来なかったみたい。

 どんなに幸せを掴んでも、掴もうと努力しても必ず不幸になってしまうなんて、可哀想な子。ただそれでも幸せを掴もうとすることをやめなかった。呪いのことは本能的に自覚していた節もあるのに、偉い子ね。もし私が会った時に気づいてあげられればこの子を助けられたのに・・・歯がゆいわね。


 「・・・あ、あの~。」


 足元に散らばっていたゲロみたいな物体が話しかけてきたわ。


 「なんだか酷いこと思われてるような気もしますがそれはさておいて、その魂を一体どうするつもりなんですか?」


 「何言ってんのよ、幸せにしてあげるに決まっているじゃない。」


 「・・・え?」


 「私はね、ハッピーエンドが好きなのよ。そりゃあ全ての生き物が幸せになるように、なんて阿呆なことを言うつもりはないわ。けどね、少なからずとも私が世話をしてあげたこの子くらい幸せにしてあげたいじゃない。それに普通の魂なら、ある生では不幸になっても、次の生では幸せになれる可能性はあるのよ。でもこの子にはそれが無いの。そんな魂を放っとくなんて、この私が許さないわ。だからね、この子の事は私に任せなさいな。悪いようにはしないわよ。」


これにて完結しました。

今まで見てくださった方々、ありがとうございます。

とりあえず書きたいことは書けたので満足しました。

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