裏話4_ジグラタル
そろそろ起きようかな・・・やっぱやめた。
特に何もすることが無い時は寝てるに限るね・・・って言ってももう何百年寝てるんだろう? ここも最初はただの盆地だったのに今じゃあすっかり森になってる。僕の目の上をいく程じゃあないけど、結構でっかい木も生えてるね。僕が動いたらこいつら沢山折れちゃうから動くに動けない。・・・いや、単に動きたくないだけなんだけど。
本当はこんな所じゃなくて、山に掘った穴に住んでいたんだけど、ある日人間が持ってきたお供え物を食べたら急に意識が吹っ飛んで、気がついたら暴れていたんだよね。僕を操って力を得よう、なんて考えていたみたいだけど失敗したみたいだね。
暴れている時は意識があったけど、なんだか色々とどうでも良くなるくらい興奮してて人間を見境無く殺してた。皆も止めてくれればいいのに、人間に罰を与えるためだとか何とか言ってちっとも止めようとしなかったみたい。実際暴れてたのは僕なのになぁ、勘弁して欲しいよ。
魔王さんは早いうちから結界の魔法を人間の街に隠してたらしいけど、隠れすぎてて人間が滅ぶ寸前でようやく見つかったらしい。魔王さんって凄いけど、どこか抜けてるところあるよね。
今僕と森を覆っているのが魔王さんが人間に与えた結界。いくら魔王さん直伝とはいえ人間が張ったものだから、暴走していた時はともかく力づくで抜けだそうと思えば出来る。結界を解くのはもっと簡単だし、第一地中にまで張られていないんだから地中に潜れば何の障害にもならないわけだ。
そんなこととはつゆ知らず、今日も沢山の人間が僕が暴れやしないかと見張っている。本当にご苦労さまです。
ああ、今日も穏やかな日だ。何だか少し風が強くなってきたような気がするけど、まあ気にするようなものでもないな。
まだまだお腹も空いてないし動く必要もない。こういう時腹持ちがいいって便利だね。蟲老さん程じゃあないけれど。
ピクッ
何かに体が反応した。なんだろうな、僕の鱗を傷付けられるような刺激が近づいてきた感じだ。特に危機感が生まれなかったから大したことじゃあないだろうけど、ひょっとしたら誰か来たのかな?
僕は頭をそっと持ち上げる。反応のあった方を見ると、まるで直線をなぞったように木が倒れていた。・・・ひょっとして何か吹っ飛ばした?
倒れている木の先を見てみると、やっぱり誰かが倒れてた。しかも血まみれで。
や、やっちゃったぁ~~~!!!
誰かが来るなんて思ってなかったから全く警戒してなかったよ。しかもあれ、龍の精霊じゃあない? やばい・・・やばい、怒られる!! 絶対誰かしら来る!! ど、どうしよう・・・。
僕は更に頭を上げて様子を見る。周りの人間が騒ぎ出したけど、とりあえず無視しとこう。精霊さんはひどい怪我だ。ああ、なんで僕の近くに寄ったかなぁ。ぶつかったら大怪我するってわかりきってるのに・・・あ、目を覚ました。良かった、まだ生きていたんだね。
(だ、大丈夫ですかー?)
・・・言葉が通じないんだよね。向こうの言っていることはわかるけど、僕は声帯が未熟だからろくな音を出せない。僕の言ってることをわかるのって限られてるんだよね。
精霊さんが立ち上がった。何だかすごい剣幕で僕を見ている。
(ご、ごごごごめなさい。悪気はなかったんです。そ、それよりも無理しちゃ駄目ですよー。)
僕は顔を近づけて様子を伺う。するとまた龍の精霊さんが現れた。見覚えのある顔だ。
(あ、久しぶり。いつ以来だろうねってこっちの言葉はわからないんだよね。不便だよねー。)
現れた精霊さん・・・メリシアさんって言ったけ? はもう片方の精霊さんに薬を飲ませる。突っ込んだって言った方が正しいかもしれない。すると薬を飲んだ精霊さんの怪我がたちまち治っていく。
(すごいねーそれ。いつの間にそんなもの作れるようになったの? 僕の寝ている間に色々と変わったことがあったみたいだね。僕もそろそろここを動こうかな?)
メリシアさんは気を失ったもう片方の精霊さんを抱えながら僕に向き直る。
「う、ううう鱗を渡しなさい。・・・そうすれば、、、、今回の件は、み、見逃して、あげても、よよ、よろしくって、よ。」
(マジですか!? それくらいで良ければいくらでもどうぞどうぞ。別に見返りがなくてもこれくらい渡すけど、これで少しは安心出来るのかな?)
僕が鱗を渡すとメリシアさんともう片方の精霊さんは何処かへ行ってしまった。ああいう力の弱い存在にとっては、僕は見ただけで恐怖を与える存在らしいね。別にこっちに害意がないとわかっていても威圧感がものすごいんだとか。
さて、これからどうしようかな? 世界がどう変わったのか見物してみるのもいいかもしれないし・・・
ゾクッ!!
ものすごい怒気を感じた。恐る恐るそっちの方を見てみると・・・カオスドラゴンさんがいた。
(か、かかかかカオスドラゴンさん、ひょっとしなくても怒ってます? ええ、ええわかります。あの子はおたくの所の精霊ですもんね。で、でもこっちには悪気があったわけではないですし、メリシアさんも見逃してくれるって言ってましたし、え、えと、ちょっと近付かないで、恐いから、ちょっ、ギャアアアアアアアァァァァァァァァァァァッス!!!)
ううう、ひどい目に会った。でもこの程度で許してくれたってことはメリシアさんの言葉を考慮してくれたのかな?
ああ、全身が痛い。周りの人間は怒気にあてられて気絶してるけど、まぁ気にしないでおこう。
・・・寝よ。寝てればそのうち体も回復するし。
評価ありがとうございます。
この話は次で完結します。




