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第11話 5LDKの領主館、内見ツアー

 完成したラスタール領、エド村の領主の館。


 こじんまりとしているが、俺が現状発揮できる全てをつぎ込んで完成させた5LDKである。


 さあさあ~~領民たちよ、さっそく中に入ろうじゃないか!


 まず一歩足を踏み入れた瞬間に、全員の動きがピタリと止まった。


「ふはぁあああ~~~っ! ブラン様ぁあ~~床も壁も、信じられないくらい真っ白で綺麗です……汚れ一つありませんっ!」


「おい、この窓を見てみろ! これ、全部ガラスだべか!?」

「なんか床もツルツルしてて気持ちいいぞ!」


 ピカピカのフローリングと白いクロス壁。そしてリビングに設置された、大きなペアガラスの掃き出し窓。それだけで、彼らにとってはこの世界の常識を覆すほどの衝撃だったようだ。


 この反応がたまらん。


 苦労して設計したかいが、あるってもんだ。


 だが、こんなもんで驚いてもらっちゃ困るぞ。


「まずは、部屋を明るくするか。ここにあるスイッチを、ポチッとな」


 俺が壁の照明スイッチを押すと。


 パッ!


 天井に設置されたLEDシーリングライトが一斉に点灯し、リビング全体が昼間のように眩い光で満たされた。



「「「「うわぁああああーーーーっ!!!」」」」



 村人たちが一斉に頭を抱えて悲鳴を上げ、その場に平伏した。


「か、神様がご降臨されたべ!」

「ひ、光魔法だぁあ! 領主様が壁に触れただけで魔法発動させたべぇ!」


 リナに至っては「お部屋が……お部屋が太陽さんみたいですぅ!」と目をきらきらと輝かせて、照明の真下でくるくると踊り始めていた。


「ムフフ、これは電気という仕組みで魔石からエレルギーを抽出して光らせているんだ……そうだな、ランプみたいなもんだ」

「へぇ……よくわからんですが神様ではないんですかい?」


「そうだ、だからいちいち崇めなくていいぞ」


 村人たちの頭には、まだ?が飛び交っているようだな……まあ、ちょとづつ慣れていってもらおう。

 今はたっぷり驚けばいいのだ。


 続いて、廊下の奥にある「トイレ」へと一同を案内する。もちろん、小人さんたちの超技術によって、魔力を動力源とした完璧な水洗式浄化システムが床下に完備されている。


「ここが便所、トイレスペースだ」


「綺麗だべなぁ……でも領主様、この白い陶器の椅子みたいなのはなんですかい? まさかここに跨がるってわけじゃ……」


「いや、跨がるんじゃない。こうして腰を下ろして座るんだ。ほらガンチ、試しに座ってみろ」


 女性陣にはいったん退出してもらう。


「へ、へぇ……では、失礼して……。

 ―――お、おおっ!? なんだこれ、座り心地が最高に楽ですぜ! それに……あったけぇ! 椅子が、まるでお日様に温められた石みたいにぬくぬくだぁ!」


 暖房便座の温もりに、ガンチがとろけそうな表情を浮かべる。


「さらにこの横にあるボタンを押すとだな……」


 俺が「おしり」のボタンをポチッと押した。


 ピュッ~~~!


「ぶ、ぶふぉおおお~~~っっっ!?」


 便器の奥から放たれたピンポイントの水流がガンチの不浄の地を直撃し、彼は天井に届かんばかりの勢いで飛び上がった。


「お、おれの尻がぁあ! 水魔法でなんかされたぁあ~~」


「落ち着けガンチ、それは攻撃魔法じゃない。ウォッシュレットっていう、お尻を綺麗に洗浄するための文明の利器だ」


 涙目で尻を押さえるガンチだったが、他の村民たちもやってみて「びゃ~」「うぉ~~」とか叫び声をあげる。でもよくよく考えたら、俺だってはじめてウオッシュレット付きの便座を試した時は「うおっ!」ってなった気がするな。


 次に女性陣にも試してもらったが、男たちより好評だった。

 やはり清潔に保つと言う事は、心身共に喜ばしいことなのだろう。


 さて、お次は日本人にとっての最大の癒やし空間―――


「わぁあああ~ブラン様~~きてきて~お部屋の中にお風呂がありますぅうう!」


 リナのテンションがマックスに上がる。


 そう、お風呂だ。


 やっぱ湯船が最高なんよ。


「家に、風呂が……?」 

「共用の湯浴み小屋じゃなくて、個人のおうちにこんな贅沢な風呂が……!?」


 村人たちは再び口をパクパクとさせて、完全に思考を停止させていた。

 この世界でお風呂というのは貴族が贅沢品として楽しむもので、平民は冷たい水で身体を拭く程度のものでしかない。それが、いつでもボタン一つで並々と温かいお湯が湧き出るのだ。


 ちなみに追い炊き機能も付けておいた。


 これでダラダラ長湯ができるぜ。


「さすがはお貴族様だべ……次元が違いすぎる……」


 驚きっぱなしのガンチたち。

 ムフフ、ここまでリアクション取りまくってくれたなら、内見ツアーをしたかいがあるってもんだ。


 そして、最後にリビングへと戻る。


「さらにこの部屋には冷蔵庫。そして、この壁についている四角い箱がエアコンだ」


 リモコンのスイッチを入れると、即座に温かい温風がリビング全体を包み込む。


「ふぁあああ……すげぇ……天国だべ、ここは天国だべ……」

「きれいだし、明るいし、風呂あるし、こんな家みたことねぇ」


 村人たちは5LDK領主館の快適さに完全に骨抜きにされ、リビングのふかふかソファに泥のように沈み込んでいた。


 さて、ここまではあくまで「領主の館」としてのデモンストレーションだ。


 ここからが本番である。


「よし、お披露目はこれくらいにして、次はみんなの家も建てにいくか」


 俺が何気なくそう告げた瞬間だった。



「「「「「え…………!!??」」」」」



 ソファに沈んでいたガンチたちや、ダイニングテーブルでくつろいでいるみんなが弾かれたように一斉に飛び起きた。その目は、獲物を見つけたブラックウルフよりも鋭くギラギラと輝いている。


「り、領主様……? 今、なんと言いました……? おれたちの家……?」


「ああ。言っただろ、領民がいつまでも教会に雑魚寝じゃ領主の名が廃る。これと同じ設備を備えた、あったかくて快適な一戸建てを村人全員の分、順番に建てていくぞ」


 一瞬の静寂。 そして―――



「うおぉおおい~~聞いたかみんな! おれたちの家も、このお貴族様ハウスになるんだとぉおお!」



「領主様万歳~~! ブラン様万歳だぁあああ!」


 魔物討伐時の勝鬨をも上回る、凄まじい大歓声がリビングを揺るがした。興奮のあまり、俺の足元にしがみついて涙を流して感謝する者まで現れる始末だ。


「お、おい……落ち着けお前たち! いくら小人さんたちが優秀でも、一日一戸ずつ建てるのが俺の魔力的にも限界だからな! 全員分が一気に完成するわけじゃないぞ」


 俺が慌てて制止の声を上げるが、一度火がついた村人たちの熱狂は止まらない。


「領主様~~頼むだ、おらの家から作ってくれぇ! うちには小さい子供がいるんだべ!」

「ズルいぞお前! うちの親父は腰が悪くて教会の床で寝るのが限界なんだ! 俺んちが最初だ!」


「いや、戦闘部隊のリーダーである俺の家からに決まってるぜぇ!」

「何言ってるんですか~~ガンチさん、こういうのはレディファーストって、ブラン様もいつも言ってますぅ! だからまずはあたしのお家……あ、あたしはブラン様と一緒にこの館に住むから関係なかったですぅ~~」


 リナが一人ノリ突っ込みをしているのを横目に、男たちは掴み合いの喧嘩でも始めそうな勢いで揉めまくり始めた。おいおい、昨日までの固い結束はどこへいったんだ。


 現代住宅の魔力、恐るべしである。


「静かにしろ、揉めるな! こうなったら……くじ引きだ! くじ引きで、厳正なる順番を決める!」


 結局、くじ引きによって建築順を決めることになった 一喜一憂し当選して飛び跳ねる者、落選して地面に崩れ落ちる者。その様子を見て俺は思わず口元を緩めた。


 まあ、これだけ生活が激変すれば、テンションが狂うのも無理はない。


「さてさて……みんな同じような家じゃつまらんからな。家族構成や本人の希望に合わせて、色々バリエーションを変えて作ってみるか」


 前世の住宅展示場のパンフレットを思い出しながら、俺の頭の中にはすでに次なる妄想(設計図)のアイデアが次々と湧き上がっていた。平屋建ての古民家風、ロフト付きのアメリカンハウス、あるい介護機能の充実したバリアフリー住宅―――。


 自分の魔法で、この寂れたド辺境の村が世界で一番快適な街へと塗り替えられていく。その圧倒的なワクワク感に胸を躍らせながら、俺は次の【設計図】の作成へと至福の気持ちで取り掛かるのだった。


【読者のみなさまへ】


第11話まで読んで頂きありがとうございます!

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※本作はカクヨムにて先行公開中です。


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