表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢保護制度下の恋  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/63

第六幕:章ラスト

森の入口は、夜をさらに濃くしていた。


学園を囲う整備された石道はそこで途切れ、

踏み慣らされていない土と根がむき出しになる。


月は雲に半ば隠れ、

木々の影が揺れる。


そのとき——


鐘が鳴った。


低く、重く、長い音。


祝祭でも時刻でもない。


異常を告げる鐘。


三人は足を止める。


間を置かず、二度目の鐘。


遠く、だがはっきりと聞こえる。


王子が目を細める。


「正式拘束令だ」


粛清派が動いた。


“予備監視”ではない。


内部承認ではない。


公的な命令。


名実ともに、リリアナは国家の拘束対象となった。


そして——


王子も、レディアナも。


もう戻れない。


王子は振り返らない。


学園も、城も、王都の灯も。


一度も。


レディアナも同じだった。


裾を握りしめ、ただ前を見る。


だが。


リリアナだけが、立ち止まる。


振り向く。


遠くに見える学園。


塔の窓に灯りが残っている。


自室の明かりかもしれない。


図書塔かもしれない。


あの教室かもしれない。


そこは彼女の居場所だった。


本を読み、

議論し、

笑い、

物語を紡いだ場所。


追放されるための舞台であったとしても、

確かに“生きていた”場所。


胸が痛む。


だが、涙は出ない。


ゆっくりと、前を向く。


もう違う。


あそこは帰る場所ではない。


選ばなかった未来が残っている場所だ。


王子が静かに言う。


「今夜から、我々は制度の外だ」


その言葉は宣言だった。


王族としてではなく。


学生としてでもなく。


ただ、選んだ者として。


森の奥から、冷たい風が吹く。


鐘はまだ鳴っている。


追跡は、すぐそこまで来るだろう。


それでも三人は、森へ踏み入れる。


枝が揺れ、闇が閉じる。


学園の灯りが、木々の隙間に小さく揺れ——


やがて見えなくなった。


章は、ここで終わる。


だが物語は、制度の外側で、初めて始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ