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悪役令嬢保護制度下の恋  作者: 南蛇井


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【第三場面】公開叱責

楽団の指揮棒が止まる。


余韻が空気に溶け、やがて完全な静寂が落ちた。


大広間の中央。


王子とリリアナ。


二人を中心に、観客は自然と半円を描く。


距離は保たれている。


だが、視線は鋭く集束していた。


 


王子は一歩前へ出る。


背筋は伸び、白銀の礼装が燭光を反射する。


声は低く、よく通る。


 


「近頃の一部言動、看過できない。」


 


ざわめきが、ぴたりと止む。


 


「学園の品位を保つため、慎みを求める。」


 


名は呼ばれない。


だが、誰もが理解する。


視線が一斉に、ひとりへ向く。


 


レディアナ。


 


深紅のドレス。


指先まで完璧に整えられた姿勢。


微笑は崩れない。


まばたきすら優雅。


 


その表情に、動揺はない。


否定も、弁明も、抗議もない。


ただ——


揺るがぬ微笑。


 


場が凍る。


 


空気が重くなる。


観客の胸に、説明不能の圧迫が生まれる。


 


(名指しではない)


(だが明確だ)


 


王子は続けない。


それ以上の言葉は不要だと判断している。


秩序は示された。


牽制は成立した。


 


彼は静かに身体を反転させる。


リリアナへ向き直る。


 


彼女は小さく息を飲んでいた。


手はわずかに震えている。


視線は戸惑いと不安に揺れている。


 


王子の声音が柔らぐ。


 


「不安を与えたこと、遺憾に思う。」


 


それは謝罪であり、宣言でもある。


守るという意思表示。


 


観客の視線が二人に集まる。


王子とヒロイン。


中央に並ぶ構図。


 


——守る側と、守られる側。


 


その対比は明確だった。


 


上階バルコニー。


評価官セヴランは静かに目を細める。


秩序は保たれた。


形式上は。


 


だが。


 


中央から少し離れた位置。


レディアナは微笑のまま、ゆっくりと扇を閉じる。


音はほとんど聞こえない。


 


ぱちり。


 


小さな動作。


だが、なぜかその瞬間。


空気の質が変わったように感じられた。


 


誰も何も言わない。


 


凍ったままの舞踏会。


 


王子は、自らが描いた構図を疑わない。


公平。


正当。


王族の責務。


 


だがその均衡は——


音もなく、別の形へと傾き始めていた。

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