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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第3章:南の霊樹、神至る深淵

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第16話:黄金の雨

黄金の光が、地下迷宮のすべてを飲み込んだ。


 邪神の心臓――黒く汚染された『賢者の石』に、アルドの白銀の刃が触れた瞬間、世界から音が消えた。



 それは爆発ではなかった。


 アルドから溢れ出した膨大な「龍の因子」が、邪神という存在そのものを「因果の彼方」へと押し流していく、静かなる崩壊だった。


『……ギ……ガ、ア……アァァ……。我ハ、神……新シキ……世界ノ……』


 邪神が最期に紡ごうとした言葉は、アルドの冷徹な一言によって断ち切られた。


「……おまえは、神様じゃないよ。ただの、欲張りすぎた『ゴミ』だ」


 ――パリン。


 何かが割れるような清廉な音と共に、巨神の肉体は光の粒子となって霧散した。


 直後、最深部から噴き上がったのは、黄金の魔力を孕んだ温かな「雨」だった。


 世界樹の枝葉を伝い、地上へ、そして南の大陸全土へと降り注ぐその雨は、枯れかけていた大地を潤し、人々の病を癒し、荒れ果てた森を瞬く間に再生させていく。


「……終わったんだね、お兄さん」


 リナが黄金の雨に打たれながら、救われた大地を感じて呟く。


 その隣で、カイルとシオンは、いまだに震えが止まらない自分たちの手を見つめていた。


「……なぁ、シオン先生。……今の、見たか?」


 カイルの声が上擦っている。それは恐怖を通り越し、人智を超えた存在を間近で見た者だけの戦慄だった。


「……ええ。それがし、一生忘れることはないでしょう。……師匠が、あの瞬間……龍そのものになっていた姿を」


 二人の脳裏に焼き付いているのは、邪神を両断した時のアルドの姿だ。


 背中から生えた、空間を圧するほどの巨大な黄金の翼。


 縦に裂け、神の如き冷徹さを湛えた黄金の瞳。


 剣士として極みに至らんとするシオンにとって、それは「憧憬」という言葉すら生温い、絶対的な到達点だった。


(……あれこそが、某の目指すべき『剣』の極致。………ただ、あの高みに少しでも近づきたい。……師匠、貴方は一体どこまで……)


 シオンは己の未熟さを痛感すると同時に、師匠と仰ぐアルドへの敬意が、限界を突破して銀河の彼方まで突き抜けていた。


「……お兄さん、本当は……俺たちの知ってる『普通の人』じゃないんだよな」


 カイルが呟くと、アルドがゆっくりと振り返った。


 黄金の瞳は既に元の穏やかな茶色に戻り、翼も消えている。


いつもの、薪割りが得意で、家族想いの、少し暢気な「お兄さん」の顔だ。


「ん? 何か言った、カイル? ……あ、ちょっと服がボロボロになっちゃったね。これ、ミラさんから借りた……じゃなくて、貰った大切なお洋服なのに」


 アルドのその「あまりにいつも通りな言葉」に、カイルは思わず噴き出した。


「あはは! 全然反省してねえ! ……でも、そうだな。やっぱり、お兄さんはお兄さんだ。……たとえ龍神様だったとしても、俺の最高のアニキだ!」


「左様。姿が変わろうとも、アルド殿は某の唯一無二の師匠。……さあ、我らが主君(ミラ様)がお待ちだ。地上へ帰りましょう」


一方、地上――。


 黄金の雨が降り注ぐ王宮の広場で、魔力を使い果たしたミラたちは、空を見上げていた。


「……見なさい、ゼクス、ゴルド、ベラドンナ。……あの雨を。アルド様が、やり遂げてくださいましたわ」


 ミラの頬を、黄金の雫が伝う。


 彼女には分かっていた。地下でアルドが解き放った力が、どれほど絶大なものであったか。


「……計算不能な奇跡です。……いや、奇跡などという言葉では足りない。……アルド殿は、この星の脈動そのものを御された」


 ゼクスが眼鏡を外し、涙を拭う。


「ガハハ! 俺様の言った通りだろ? あの人は、俺たちの想像なんて軽く超えていっちまうんだよ!」


 ゴルドが地面を叩いて笑う。


「ミラ様、あちらを! ……アルド殿たちが、戻ってこられました!」


 ベラドンナが指差す先。


地下への入り口から、ボロボロになりながらも笑顔のアルドたちが現れる。


南の大陸を襲った未曾有の危機は、一人の「村人」の活躍によって、最高の結果で幕を閉じた。

 

 しかし、地上へ戻る一行を待ち受けていたのは、王太子や民衆からの熱狂的な歓迎――だけではなかった。


「アルド様!! 無事で良かったですわ…… あっ服が……すごく、セクシーですわ……(モゴモゴ)」


 戦いが終わり、平和な日常へと戻るための「最後のお掃除」――つまり、恥ずかしがり屋な二人の恋模様が、ここから再燃しようとしていた。



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