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後方腕組み師匠面(ししょうづら)しているだけの俺が、実は世界最強の剣聖だった件  作者: 街角のコータロー
第3章:南の霊樹、神至る深淵

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第14話:絆の閃光

ユグドラシルの最下層。


邪神が作り出した「黒い肉壁」が、アルドたちの行く手を完全に遮断していた。


それは世界樹の根に邪神の魔力が混ざり合い、鋼鉄以上の硬度と、触れる者の命を吸い取る呪いを帯びた絶望の障壁。


「……っ、断ち斬れない! 切ったそばから再生していく!」


 カイルが『黒曜』を叩き込むが、漆黒の壁は波打つように傷口を塞ぎ、逆にカイルの剣を飲み込もうと迫る。


「マスター、防戦一方ではジリ貧です! 何らかの突破口を……!」


 シオンが嵐のような連撃で触手を防ぐが、その額には大粒の汗が浮かんでいた。


 その時。


 迷宮の天井を突き破り、四つの輝かしい光の筋が降り注いだ。


「……え? 何、これ。すごく、あったかい光……」


 リナが目を見開く。


その光は、アルドの体を優しく包み込むと、彼の魔力をかつてない密度へと押し上げ始めた。


「……これは、ミラさんたちの……」


 アルドには分かった。


 紅く情熱的な、けれどどこか気高い光。――ミラの魔力だ。


 冷徹で精密な、青い幾何学模様の光。――ゼクスの知性だ。


 荒々しく大地を揺らす、黄金の剛光。――ゴルドの闘気だ。


 そして、甘く全てを絡め取る、紫の妖光。――ベラドンナの魔性だ。


「……みんな、地上から僕に預けてくれたんだね。……自分たちが空っぽになっても、俺を信じて」


 アルドが静かに一歩前へ出る。


 彼の背後には、実体化した四天王の幻影が、守護霊のように浮かび上がっていた。


『アルド様、ワタクシたちの力を存分にお使いなさいまし!』


『……計算完了。アルド殿、障壁の分子構造を一時的に崩壊させます。……今です!』


 ゼクスの幻影が指し示した一点。


アルドは迷うことなく、そこに『星凪』の鞘を突き立てた。


「……ありがとう。……みんなの想い、無駄にはしないよ」


 ――ドォォォォォンッ!!


 爆発的な魔力の奔流が、黒い肉壁を内側から粉砕した。


 それは力任せの破壊ではない。


ミラの「王の威光」が邪神の支配を拒絶し、ベラドンナの魔力が呪いを中和し、ゴルドの剛力が物理的な壁を穿ち、ゼクスの計算が最短の勝利を導き出した。



 そして、その中心にいるアルドの「深淵」が、全てのエネルギーを一本の鋭い針のように束ね上げていた。


「……今だ、カイル! 道は開いたよ!」


「おう! 頼むぜ、みんな!!」


 カイルが、ミラたちが作った「光の回廊」を駆け抜ける。


 その先には、世界樹の心臓――『賢者の石』を自らの核として取り込み、巨大な異形の胎児のように肥大化した邪神の本体が鎮座していた。


『……オォォ……オォォォォォッ!! 貴様らぁぁ……塵芥ちりあくた共が、我の……我の完成を邪魔するかぁぁ!!』


 邪神が狂乱の叫びを上げ、全方位に死の波動を放つ。


 だが、その波動はアルドの前に、リナが展開した「四天王の加護を帯びた聖障壁」によって、花びらが散るように防がれた。


「……掃除の時間だね。おまえ、もうそこに居場所はないぞ」


 アルドの瞳が、ふわりと黄金に燃え上がる。


 四天王の全魔力を一点に集約し、アルドはついに邪神の懐深くへと踏み込んだ。


 一方、地上――。


 全ての魔力を放出し、力なく王宮の床に座り込むミラたち。


「……ふふ。……体が、羽のように軽いですわね……。……あとは、お願いしますわよ……アルド様……」


 ミラは微かに微笑みながら、地下から伝わる勝利の予感を信じ、静かに目を閉じた。


 地下最深部。


絆という名の刃が、邪神の喉元に突きつけられる。



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